知能の発達とは?ピアジェ理論を読み直す
はじめに
心理学や教育に興味がある人だったら誰もが耳にしたことがある方の名前、そうピアジェ。
しかし、Wikiやネットで調べて出てくる程度の情報を軽く読み流してレポートに使っただけで、ピアジェどのようなことを考えていたのか(実は)知らないでスルーしていたりしませんか。
というのも、そのはず。おそらく最もよく知られている著書、『知能の誕生』は530ページ近くあり(爆)、手にする初学者をその重さ・分厚さで圧倒します。
この記事では3分で読み切り、なおかつ、ピアジェの本をちゃんと読んだ感を出すような内容にしております。
そもそもピアジェは何をしたのか?
恐る恐る本を読み進めると、いきなり難しい説明が・・・。これだけでは、意味がわからないですよね。けれども、ここにピアジェ理論の(ほぼ)全てが濃縮されております。
例えば、赤ちゃんの成長ってすごいと思いませんか?
最初は何もできなかった赤ちゃんが、日々目覚ましい速さで新しいことを学んでいきます。これって、一体どういうプロセスで起こっているのでしょうか?
実は、この謎、「人はどのように知識を獲得していくのか」を解明しようとしたのが、ピアジェなんです。
ピアジェが登場する前は?
ピアジェは、知能の発達を生物学的な視点とも関連づけながら、独特の理論を展開しました。
簡単にピアジェ前後の「知識についての考え方」を表にすると
つまりピアジェは、それまで知識は「生まれ持ったもの」とか「神様から与えられたもの」と考えられていたことに、ノンと言って、「能動的に獲得していくもの」だと言ったんですね。それを難しい言葉、だけども超重要なのは
子ども自身が環境との相互作用を通じて能動的に構成する
そう、構成する、これがポイントです。
1 ピアジェ重要用語: 意識化
ピアジェが「知性の発達とは、生そのものに内在する体制化活動の意識化が深まっていくこと」と言ったとき、一体どういう意味だったのでしょうか?
実は、私たち人間は生まれたときから無意識のうちに行動していますよね。例えば赤ちゃんが泣いたり、手を伸ばしたり・・・
でも、赤ちゃんは自分がそんなことをしているなんて全然意識していないと思うんですよ(たぶん)。ただ無意識に、体が反応しているだけなんです。
ところが、成長するにつれて少しずつ変化が起こります。自分がどんなことをしているのか、どんなふうに考えているのかが、だんだんとわかるようになってくるんです。
つまり、知能の発達というのは、無意識的な行動から意識的な行動へと移行していく過程なんです。
最初は何も気づかなかった赤ちゃんが、いつの間にか自分で考えて行動できるようになる。これが、ピアジェの言う「意識化」なんです。
2 ピアジェ重要用語: スキーマ (本文ではシェマ)
さて、知能の発達を支えている重要な要素に、「スキーマ」と「体制化」というものがあります。ちょっと聞き慣れない言葉かもしれませんが、これがピアジェ理論のキモなんです。
最初の序文からシェマが連発され、297ページ、つまり本の半分で言及されていますwwww。
ところが、スキーマって一体なんぞやってことにちゃんと答えていないんですよね・・・7ページに「スキーマ(シェマ)」登場してあとは注って・・・
まず、スキーマってなんでしょう?簡単に言うと、私たちが世界を理解するためのいれもの、「型」みたいなものです。赤ちゃんが「こういうものは握れる」「こういうものは吸える」といった感覚を入れる、つまり身につけていくのも、スキーマが発達しているからなんです。
ちなみに彼によると、この順でスキーマは精緻化していくそう。(今では年齢で区切るなって批判されますけど・・・)
感覚運動期(0~2歳):主に物理的な行為に関するスキーマが形成される。
前操作期(2~7歳):シンボルや言語を用いたスキーマが出現するが、まだ論理的な操作はできない。
具体的操作期(7~11歳):具体的な事物に関する論理的操作のスキーマが形成される。
形式的操作期(11歳~):抽象的で仮説演繹的な思考のスキーマが可能になる。
3 ピアジェ重要用語: 同化、調整、体制化
そして、ここにピアジェの独自性が発揮。
スキーマは固定されたものじゃないんです。新しい情報に出会うたびに、既存のスキーマを変化させたり、新しいスキーマを作ったりしているんです。これを「同化」と「調節」と呼びます。
「同化」というのは、新しい情報を既存のスキーマに取り込むことを指します。例えば、赤ちゃんが初めてボールを見たとき、「これは握れるものだ」と既存の「握るスキーマ」に当てはめて理解しようとするのが同化です。まぁ、簡単にいうと、ドラゴンボールのセルのやっていることですね。(RIP鳥山先生)
一方、「調節」は、既存のスキーマでは上手く対応できない新しい経験に出会ったとき、スキーマそのものを変化させることを指します。例えば、ボールを握ろうとしても、それが柔らかくて潰れてしまったとき、赤ちゃんは「握るスキーマ」を修正して、「ボールは潰れるものだ」という新しい理解を作り出します。
さらに「ボールを握れる」とか「ボールは潰れるかも」という個々のスキーマがくっ付いて大きな構造となっていきます。これを体制化といいます。バラバラだったスキーマが、体制化によってつながり、より複雑で洗練された思考ができるようになるんです。
面白いのは、スキーマの発達と体制化が、お互いに影響し合っているところろ。スキーマが発達すれば、より高度な体制化が可能になるし、逆に、体制化が進めば、スキーマの発達の方向性が決まってきます。まるで、歯車がかみ合うように、この二つのプロセスが連動しているんですね。
ピアジェは、知能の発達の秘密は、このスキーマの発達と体制化の絶え間ない相互作用にあると考えました。
4 ピアジェ重要用語: 平衡化(equilibration)
ではでは、スキーマが発達・体制化を繰り返し、結局どうなるんだってことなんですが、ピアジェは、「知能の発達の目的は、私たちをより適応的な存在にする」と考えました。
私たちは日々、新しい経験や情報に出会っています。でも、それらを無秩序に受け入れていたら、きっとオーバーフローしてテンパってしまうでしょう。だから、私たちの脳は、できるだけ整合性のある、矛盾のない理解を作ろうとするというのです。これを、ピアジェは「平衡化(equilibration)」と呼びました。
平衡化っていうのは、簡単に言ってしまうと、「認知のバランスを取る」ことです。新しい経験と、既存の理解の間にズレがあると、私たちはなんとなく違和感を覚えますよね。そんなとき、脳は一生懸命そのズレを解消しようと働くんです。スキーマを修正したり、新しい関係性を見出したりしながら、少しずつ認知構造を再構築していくんですね。
まとめると、ピアジェは、知能の発達とは、
1 行動を意識化し
2 情報をスキーマに同化したり調整してとりこみ
3 より大きなスキーマに体制化しつつ
4 平衡化より適応的で整合的な認知構造を形成していく
過程だと考えたんですね。
しかも、行きつ戻りつ、試行錯誤しながら少しずつ賢くなっていくというのです。
ピアジェ理論は、それまで<与えられる>考えていた知識観に、いやいやわてらは生物なんで成長しながら<知識を獲得>していきますぜ、と動的な視点を与えたんです。
ピアジェから学べること
さて、ここまでピアジェの知能発達理論を見てきましたが、いかがでしたか?
これから登場するヴィゴツキーらの理論によって、ピアジェの考えはかなーり批判されましたが、それでも学校教育の在り方について、大切なヒントが得られると思うんですよね。
ピアジェが教えてくれたのは、子どもの知能は、受け身に知識を詰め込むことで育つのではなく、子ども自身が環境と関わり、試行錯誤しながら能動的に構成していくものだということ。
試行錯誤しながら能動的に構成、いいですね。
だとすれば、もしかしたら学校教育の役割は、子どもたちにただ知識を与えることではなく、子どもたち自身が探求し、発見できる環境を用意することにあるのかもしれません。
もちろん、詰め込み教育がダメって言っているわけではありません。
読み書きや計算などの基礎的なスキルを教えることは大切です。しかし、それ以上に重要なのは、子どもたちの好奇心を刺激し、自ら学ぼうとする意欲を引き出すこと。そのためには、教師が一方的に教えるのではなく、子どもたちと一緒に考え、対話し、ともに成長することが必要なのかもしれませんね。
ピアジェの理論は、一見難しそうに聞こえますが、私たちに知能の発達の本質を教えてくれているような気がするんですよね。
これからの学校教育に求められるのは、子どもたちの可能性を信じ、その成長を支える柔軟性なのかもしれません。ピアジェ理論から学ぶべきことは、まだまだたくさんありそうですね。
よいGWを〜。
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