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エンジニアリングとデザインから生まれた 新しい動きとかたちの体験|「nomena まだ意味のない機械 ― phenomenal #03」展(nomena gallery Asakusa)

アメンボのように水面を泳ぐ時計の文字盤に、ひとりでゆっくりと転がる直方体、ディスプレイの中のアニメーションのように滑らかに動き回る図形…

目の前で動いているのが不思議に思えるような、現実感のない不思議な動きや形を目の前で体験する展覧会でした。

「nomena まだ意味のない機械 ― phenomenal #03」展 展示風景

▍nomenaとは

nomenaはエンジニアリングを主軸としたものづくりのチーム。機械工学、ソフトウェア、建築、デザインといった複数のバックグラウンドを持ったメンバーで構成されているそうです。

東京2020オリンピック・パラリンピック聖火台の機構設計や、2022年の東京ミッドタウンのクリスマスツリーの演出制御なども手掛けてきました。

今回の展覧会は、nomena初となる単独での展覧会です。

▍すべての作品が “動いて” いる展覧会

会場は、浅草駅から徒歩10分ほどの場所にある「nomena gallery Asakusa」。nomenaのスタジオ・オフィスの入る建物の2Fにあります。

nomena gallery Asakusa エントランス

本展の展示作品数は13点。これらの作品、すべて動いているんです!

例えば《空と色》は、そこにない図形が認知される錯視のような現象を使った作品。カッティングシートのようなものが机に貼り付けられているのかと思ったら… なんと、平面の図形が動き始めました。

デジタルの映像で見ても面白い動きですが、目の前で「モノ」が動くのには、特別な驚きと面白さがあります。

《おいしいかたち》では、モノが割れたときの破片のような、複雑な多面体が机上に。紙でつくられたその立体の形が面白くて見ていると、それらはゆっくりと中央に集まり、最後にはひとつの直方体に。

多様なかたちのパッケージの提案として制作された作品だそうですが、複雑な立体がぴったりとひとつのモノになる、形も動きも面白い作品でした。

▍機構が見える面白さ・見えない面白さ

この展示で印象的に感じた点のひとつが、機構が「見える」ことと「見えない」こと、両方に面白さがあるということでした。

「見えない」作品では、例えば、21_21 DESIGN SIGHTの「ルール?」展や、東京都現代美術館の「シナジー、創造と生成のあいだ」展でも展示されていた《四角が行く》

ベルトコンベアーの上を、3つの異なる形の直方体が進んでいき、さまざまな形のゲートが出てくるたび、パタンパタンと姿勢を変え、ピタリとゲートの形に合った体勢で通り抜けていきます。

ただの箱に見える直方体が独立して地面を擦って向きを変えたり、パタンと角度を変えたりするのは、まるで意思を持って動いているよう。

同様に、ひとつの直方体が音も立てず、ゆっくりと転がり続けている《Strolling》という作品も。仕組みが見えず、モノが自ら動いているような様子に、不思議な面白さが感じられます。

一方、機構が「見える」作品では、時計メーカーの「セイコー」の展示で発表された《連鎖するリズムのコラージュ》。電気を使わない「機械式時計」のさまざまな機構に着目し、”ピタゴラ装置”のように動きが伝播していきます。ハンドアウトには、それぞれの機構についての説明も。

歴史ある「機械式時計」が、これほど細かいパーツと精密な機構で成り立っていることと、それぞれの動きのインパクト。機構が見えるからこその面白さも体感できました。

▍多様なバックグラウンドのチームから生まれる作品

今回の展覧会のハンドアウトには、各作品の制作者、そして制作協力者の名前もクレジットされており、各作品の解説とともに、制作者や、作品が生まれるまでの過程も紹介されていました。

展覧会ハンドアウト

美術館などで作品を観るときには、アーティストやデザイナーひとりの名前だけが書かれている場合も多いですが、ひとつの作品も、多くのメンバーによって制作されているんですね。

例えば《時計の捨象 #01》では、2本の時計の針が独立して動く「メトロノームウォッチ」という時計の機構を活かし、時計の文字盤がアメンボのように水面を進んでいきます。

この作品についての解説では、この水たまりの造形を制作した、当時、東京藝術大学の学生の方の試行錯誤の様子にも触れられていました。つい、主役の部分だけに目が行ってしまいますが、異なるバックグラウンドの方々がチームとなって制作をすることで、美しく、印象に残る作品が作りあげられているんですね。

▍「まだ意味のない機械」とは?

展覧会タイトルの「まだ意味のない機械 」について、挨拶文には以下のような言葉が書かれていました。

工学をバックグラウンドに持つメンバーの多くは、研究や論文で常に社会的、学問的な「意味」を求められてきました。
しかし自然界には本来、最初から意味を持って生まれたものはありません。
それに気づいたとき、人間社会においても既成の役割や理由から解放された新しいものづくり、組織作りが可能なのではないかと考えるようになりました。

nomena まだ意味のない機械 ― phenomenal #03 挨拶文より

今すぐに役に立つものはないけれど、”まだ”意味のない新しいものを想像して、つくること。そうしたところから、新たなものづくりがうまれて行くのかもしれません。

「nomena まだ意味のない機械 ― phenomenal #03」展は、2024年5月26日(日)まで。予約制で開催されています。

【展覧会概要】 nomena まだ意味のない機械 ― phenomenal #03

会場:nomena gallery Asakusa
(〒111-0032 東京都台東区浅草7-4-21 上菊ビル2F)
会期:2024年4月26日(金) – 5月26日(日)
休館日:火曜日、水曜日、木曜日
時間:11:00-20:00
料金:無料
展覧会URL:https://gallery.nomena.co.jp/exhibitions/phenomenal-03
備考:事前予約制(▶予約サイト

【展覧会訪問前に気になるアレコレまとめ】

撮影可否:基本的に静止画・動画ともに可能(一部作品NG)
入館予約:必要  ▶予約サイト
会期中展示替え:なし
音声ガイド:なし
図録:制作中

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