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韓国映画『声もなく』はとても好きなタイプの作品だった。 2022年1月24日(月)

シネマート心斎橋に行ったのはすごく久しぶりで、調べてみると去年の6月に『クローブヒッチキラー』以来。
ずいぶん訪れていなかった。
シネマート心斎橋は落ち着くし、映画に対しての愛着をすごく感じるので、今年はもっと通いたいと思う。

今日は仕事が早く終わったので、事前情報がほぼないままタイミングが合うからという理由だけで韓国映画『声もなく』を観ることにした。

闇の仕事を請け負う口のきけない青年と、両親に身代金を払ってもらえない孤独な少女の交流を描いた韓国発のサスペンスドラマ。「バーニング 劇場版」のユ・アインが新人監督ホン・ウィジョンとタッグを組み、2021年・第41回青龍賞で主演男優賞と新人監督賞を受賞した。口のきけない青年テインと片足を引きずる相棒チャンボクは、普段は鶏卵販売をしながら、犯罪組織から死体処理などを請け負って生計を立てていた。ある日、テインたちは犯罪組織のヨンソクに命じられ、身代金目的で誘拐された11歳の少女チョヒを1日だけ預かることに。しかしヨンソクが組織に始末されてしまったことから、テインとチョヒの疑似家族のような奇妙な生活が始まる。

観ている途中、心の中でなんどもこの映画は自分の好きな映画だ!と叫んだほど、好みの映画だった。
たまたまだったけど、劇場で観ることが出来てほんとうに良かった。

基本的に犯罪ドラマであり、ストーリーがどこに行くのかわからないままぐいぐいと進んでいくのは、『ファーゴ』みたいで、オフビート感のあるユーモアも好感が持てた。

途中から『万引き家族』の様相を呈してきて、草原の中にポツンとあるボロ家でポラロイドカメラで撮影するシーンは非常に刹那的でひと夏の一瞬を切り取った幸福感とその先に描かれるであろう不幸な別れを想起させた。

下手にやっちゃうとお涙頂戴になるようなところもこの映画はうまく回避して、我々に大きな余韻を与えるラストをみせる。

主人公テイン演じるユ・アインは言葉を発することなく、表情や身体、動作で繊細で機微な感情を表現。さすがである。
また、チョヒ役の子役も素晴らしく、この複雑な演技を要求される役柄を見事に演じている。

映画でも印象的な昼と夜の間の美しいシーンのように善悪の境目が曖昧なままに観客を最後まで連れて行く監督の手腕にも脱帽である。
これが初長編映画というのだから韓国映画恐るべし、である。

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