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【解説】月移住計画 その可能性

1969年に達成された アポロ11号による 人類史上初の月面着陸
そして現在 イーロンマスクのスペースX社などが 火星移住を目指しています
月面移住の声はあまり聞こえてきませんが いったいどうしてなのでしょうか
今回は「月移住計画 その可能性」というテーマで お話していきます

1. 月が抱える問題点

月は 地球から 約38万キロメートルの距離に位置しています
一方 火星までは 約7528万キロメートルも離れているのです
火星と比べて 比較的近い距離にあることが明らかですが なぜ月移住計画の声は 聞こえてこないのでしょうか
それは月が抱える 移住に際しての さまざまな問題点に起因しています

ひとつ目に 大気がほとんど存在しないことが 大きな問題になります
月の重力は 地球の約6分の1であるため 大気が宇宙空間へ逃げていきます
これは 宇宙からの放射線が ほとんどそのまま 月面へ降りそそぐことを意味します
放射線は さまざまな病気の原因となるため 長期滞在の大きな壁となるでしょう

ふたつ目に 気温の問題があります
約15日間続く昼には 約120度という超高温になりますが その後15日間続く夜には 約マイナス170度まで下がります
しかし この極端な気温と放射線の問題は 地下に住むことで影響を抑えることも考えられており 建物の材料の候補となる 鉄, アルミニウム, ケイ素などは 月の砂に含まれています

三つ目の問題は 酸素の生成です
月には空気がないため 酸素を生成する必要があります
月の砂には酸化物が大量に存在するため ここから酸素を作り出すことが 主な対策となるでしょう

四つ目は 水源の確保です
例えば地球には 豊富な水源である海や川がありますが 月にはありません
月の裏側や 極地には氷があると言われていますが 含有量は非常に少なく 水を取り出すのは困難と考えられています
日のあたる部分でも 水分子が検出されましたが その存在や 詳しい量はいまだ不明です
人間が生きていくためには 一日約3リットルほどの水が必要と言われています
現時点では 地球から大量の水を運んでくるのか または水素だけを運んで 酸素と化合させて水を作り出すことが必要になります

五つ目は 食料の確保です
水の問題を解決した前提で 温室の設備を建設すれば 野菜などを栽培することは可能だと思われます
しかし 栽培と 設備の試験 構築には時間が掛かるため 短期的には 地球から運ぶのが現実的な手段となります

このように 月の環境に関する問題点だけでも 山積みです

2. 移住計画の可能性

1章であげた水源の問題点の解決策として「地球の資源を運んでくる」ということが 現状では必須となります
これは "多くの人々が長期滞在するのは難しい" ということを意味します
しかし 少人数の長期滞在であれば 可能性は十分あると考えます
放射線, 気温, 酸素の問題は設備の建設で解決し 水や食料は定期的に地球から運んでくる という方法は 現実的に考えられるでしょう
現在進行中の有人月面着陸プロジェクトである「アルテミス計画」では いくつかの目標が定められています
①「月面における 持続的駐留の確立」
②「民間企業が 月面経済を構築するための地盤を築く」
③「人類史上初の有人火星探査を実現するための 次のステップとなる」
これらの目標すべてが 少人数での長期滞在で達成できると思われます

①「月面における 持続的駐留の確立」という目標は 月面基地の建設によって達成されます
ここでは 例えば火星などで使用する生命維持システムや 人工重力の試験
さらには 持続可能なエネルギーの生成や 食料や酸素の供給サイクルの確保などがおこなわれるでしょう
建設の材料を月で調達できる目途が立てば さらに達成の可能性は高まります
②「民間宇宙企業が 月面経済を構築するための地盤を築く」という目標については 月面基地の建設後、民間宇宙企業によるさまざまな発展が期待されます
例えば作業人員や物資の輸送, 探査用ローバーの提供などが計画されています
将来的には宇宙旅行として月面へ短期滞在することなども考えられるでしょう
③「人類史上初の有人火星探査を実現するための 次のステップとなる」という目標は 月面基地や民間宇宙企業の発展にともない達成されるでしょう
火星探査用のロケットや宇宙船については 月面で開発または整備されることが考えられます

今回紹介してきた月の環境や アルテミス計画の目標からすると 現時点ではあくまで作業員の長期滞在を目指していることは明らかであり やはり 多くの人々による月面移住は 目指していないのでしょう
スペースX社などが目指す火星移住についても その環境面での難しさが多く語られています
果たして 人類が地球以外の惑星に定住することはあるのでしょうか

月面基地の建設と その先で目指す有人での火星探査
壮大な目標は ここから10年, 20年の間に達成されるのか注目していきたいと思っています
今回は「月移住計画 その可能性」についてのお話でした
最後までご覧いただき ありがとうございました

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