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【解説】アンドロメダ銀河の正体 |将来予想される天の川銀河との衝突とは?

宇宙に横たわる 大きな渦巻のような アンドロメダ銀河
地球からも目視できるこの銀河は いったい どのようなものなのでしょうか
今回は「アンドロメダ銀河 その正体」というテーマで さまざまな渦巻銀河の姿を紹介しながら お話ししていきます

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1. アンドロメダ銀河をめぐる歴史

アンドロメダ銀河が天文学者たちの脚光を浴びるようになったのは 1920年代 初頭のことです
当時の議論として 「わたしたちの存在する 天の川銀河が宇宙のすべてなのか」
それとも 「その外側には別の星が存在するのか」
ということが論争されていました
アンドロメダ銀河は 「アンドロメダ星雲」と呼ばれており あくまで 星間ガスや宇宙塵の集まりである星雲に分類されていました
数千万以上の星々の集まりである 銀河という扱いも されていなかったのです

この論争に終止符を打ったのは アメリカの天文学者 エドウィン・ハッブルでした
1924年 ハッブルは アンドロメダ星雲の外縁部をとらえた写真のなかで セファイド変光星を発見しました
セファイド変光星とは 2~50日程度の短い周期で その明るさが1,2等級ほど変わる星です
この種の星について 「明るさの変動周期が長いほど 絶対高度が大きい」 ということが 当時から知られていました
この性質を利用して 観測された見かけ上の明るさと比較し アンドロメダ星雲までの距離を求めたのです
その結果 アンドロメダ星雲と呼ばれていた天体は 天の川銀河と同じぐらいの規模をもつ星の集合体であり 銀河系の外側にあることが判明したのです
こうして アンドロメダ星雲は「アンドロメダ銀河」となったのです

2. アンドロメダ銀河の正体

銀河は さまざまな種類に分類されますが アンドロメダ銀河は「渦巻銀河」と呼ばれます
これらの銀河は 真上から見ると円盤状で 横から見ると凸レンズのような形をしています
天の川銀河が 約2000~4000億の星で構成されているのに対して
アンドロメダ銀河は その倍以上 約1兆個の星を持ちます
当初 ハッブルの計算では 地球からの距離が約100万光年とされていましたが 1944年に ドイツの天文学者 ウォルター・バーデによって 230万光年と訂正され 現在では 250万光年というのが定説です
また 秒速300kmというスピードで 天の川銀河に近づいているとされ 約40億年後には衝突し その後 ひとつの楕円銀河を形成すると予測されています

銀河の構造は 大きく分けると 「ハロー」, 「ディスク」, 「バルジ」, 「銀河中心核」の4つに分類されます
まず 「ハロー」 です
ハローは 銀河全体を包み込むように 希薄な星間ガスや球状星団などがまばらに分布した 球状領域です
直接その姿をとらえることは難しく ダークマターも豊富に含まれていると推測されています
アンドロメダ銀河のハローは 130万光年以上も広がっているとされており これは 天の川銀河のハローと アンドロメダ銀河のハローが すでに接触しているであろうことを 示唆しています

つづいて 「ディスク」 です
ディスクは 「銀河円盤」 とも呼ばれ 星と星間ガスで構成されています
そして 「渦状腕」という 渦巻構造をもちます
ディスクを構成する星の年齢は 100億年未満であり ところどころ 高密度な星間ガスの領域も存在します

つづいて 「バルジ」 です
バルジは 銀河中央にある膨らみの部分であり 年老いた星やダークマター,ガスなどで構成される 球状領域です
バルジを構成する星の年齢は 銀河のうまれた 約100億年前とされています
天の川銀河と比べて ダークマターやガスが 非常に少ないことが判明しています

最後に 「銀河中心核」 です
文字通り 銀河の中心部分を意味します
わたしたちの天の川銀河では 銀河の中心部に星やガスが密集し 銀河中心核には巨大ブラックホールが存在すると考えられ さまざまな活動の様子が観測されています
一方 アンドロメダ銀河の中心部に ガスはほとんど存在せず 中心核が2つ存在することがわかっています
中心核のひとつはブラックホールであり もう片方は正体不明とされています
また ガスが中心に向けて落下してゆくという 特異な性質をもちます

3. アンドロメダ銀河の渦巻構造

このように アンドロメダ銀河は渦巻状の構造をもちます
なぜ このように形を保ったまま ぐるぐるとまわっているのでしょうか
まず 銀河内部にある星や星雲は 中心からの距離に関係なく 同じ速度で回転することがわかっています
ということは 銀河の渦を一本の縄だとすると 中心部で星が大渋滞を起こしてゆくはずです
しかし アンドロメダ銀河だけでなく 他の渦巻銀河でも そのようなことは起きていません
このことは 長い間説明がつかず 問題となっていました
この矛盾を解決するのが1964年に考案された 「密度波理論」 と呼ばれる理論です
これは "銀河の渦は星自体の配列ではなく 星たちがつくる重力場 いわゆる星密度が 波のように移動して構成されている"という内容です
銀河の縄のように見える部分は"腕"と呼ばれますが そこに星が固定されているわけではなく あくまで星が密集しているエリア だということです
この説は 車の渋滞に例えられます
星が車だとすると 腕の部分は渋滞しているエリアです
渋滞エリアで 車はゆっくりと進み そこを抜ければ通常のスピードで走りだします
これと同じようなことが 銀河の渦巻で起こる とされているのです
また ガスは腕の部分に入った際 星の生みだす強い重力により 音速を超えて加速され 衝撃波が発生して密度が急激に上がり 星形成領域が発生します
この現象は「銀河衝撃波」と呼ばれています
星が集まって渦巻状の密集エリアを形成し ガスが その重力の谷間で圧縮され 新たな星がうまれるきっかけを生みだすサイクルが そこにはあるのです

渦巻状の構造については 磁力線が原因だとする説もありますが 「密度波理論」そして「銀河衝撃波」という説は 星形成までの流れを示す理論として 定説となっています

4. 天の川銀河との衝突

アンドロメダ銀河と天の川銀河は 数十個の銀河で構成された集団である 「銀河群」 に属しています
秒速300kmというスピードで 天の川銀河に近づいているアンドロメダ銀河
遠い未来でふたつの銀河は衝突し 最終的には ひとつの大きな銀河になると考えられています
NASAが公開している衝突のイメージは このようなものです
20億年後 アンドロメダ銀河の全体が見えるほどに接近
37.5億年後 さらに接近し 天の川銀河が歪みはじめます
39億年後 2つの銀河は交錯します
そして 星間ガスが圧縮されることにより 新たな星がうまれ 明るく輝きます
40億年後 すり抜けた2つの銀河は引き延ばされ 歪みます
51億年後 2つの銀河は 互いの重力によってふたたび引き寄せられ 2つの銀河核があらわれ 急速な星形成の段階は終わりをむかえます
70億年後 2つの銀河核は融合して 1つの楕円銀河になり 年老いた星々の光が充満します
この頃には 太陽が白色矮星となっていて 地球を燃やし尽くしているとも言われています

あとがき

今回は「アンドロメダ銀河 その正体」についてのお話でした
渦巻くアンドロメダ銀河は いまこの瞬間も わたしたちの天の川銀河へ近づいています
最後までご視聴いただき ありがとうございました

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