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管理社会 ディストピアの名作SF映画②[12選]

こんばんは ぷらねったです
技術の発展にともない 人々の自由が制限された 未来の世界
今回は「ディストピアの名作・傑作SF映画」をテーマにした SF映画を紹介していきます


ディストピア特集の第一弾はこちら↓

1.デス・レース2000年 (1975年)

監督は ポール・バーテル
ロジャー・コーマン製作で描かれる 殺人カーレースがテーマのSF映画です

舞台は 西暦2000年
国民からの絶大なる人気を誇る "デス・レース"が 今年も開催されます
このデスレースは レース中に一般市民を轢くことで その市民の年齢や性別に応じてポイントが加算されるという 野蛮なルールを持ちます
昨年の優勝者であるフランケンシュタインや 嫌われ者のマシンガン・ジョーなどによるデッドヒートがはじまる...というストーリーです


超低予算の30万ドルで製作されたとは思えない 過激な演出が魅力の映画です
本作品では 大部分でカーレースのシーンが描かれています
まるで 幼いころに見たアニメ「チキチキマシン猛レース」の要素を感じさせる 個性あふれる車の数々
その車体は なぜか動物をモチーフにしたデザインばかりです


見どころは 臨場感あふれるグロテスクさの "ポイント獲得"シーンだけではありません
フランケンシュタイン そして同乗するアニーがもつ レースの勝利以外の目的が明らかになっていく脚本も 大きな魅力です
時おり なぜか気の抜けたBGMが流れたりする意外性もあります
また 「ロッキー」や「ランボー」シリーズなどで知られるシルヴェスター・スタローンが マシンガン・ジョーの役で出演していますが ブレイク直前の時期であったため 格安のギャラで済んだそうです
ちなみに 1976年に 本作品のアーケードゲーム版が開発され 日本でも発売されたことがありますが
その過激さが大きく問題視され 日本においては 電気用品取締法違反の容疑で 輸入業者が逮捕されるに至った経緯があります


謎を秘めたフランケンシュタインが 狂った世界でレーサーとして活躍する 斬新なヒーロー像
唯一無二の魅力をはなつ 倫理観の崩壊したカーレースを描いた ディストピアSFとなっています

2.リベリオン (2002年)

監督は カート・ウィマー
架空の最強戦闘術"ガン=カタ"を取り入れた アクションSF映画です

舞台は 第三次世界大戦後に出現した 全体主義の国家である リブリア
党首のファーザー率いる テトラグラマトン党が独裁政党として君臨し 二度と戦争が起らないよう 感情を持つことが禁止された社会になっていました
芸術など 心を揺さぶるコンテンツはすべて"EC-10"という分類で禁止され 人々は感情抑制薬"プロジアム"の服用を義務付けられています
主人公のジョン・プレストンは 超優秀な"第1級クラリック"として ルールに背いたもの達を 感情違反者として摘発,処刑する...というストーリーです


本作品オリジナルの戦闘術である ガン=カタとは 『銃(ガン)+武術の型(カタ)』を組み合わせた造語です
その定義としては"第三次世界大戦までに蓄積された膨大なデータをもとに 統計学的に有利な位置に自らの身体を移動させながら戦闘する事で 被弾率を最小限にして 攻撃効率を最大限に高める"というものになっています
...要するに 対人戦ではほぼ無敵ということです
作中では 技の習得だけで攻撃能力が120%向上するという説明もされており
特に"第1級クラリック"と呼ばれる この戦闘術を極めた特殊捜査官には 基本的に銃弾が1発も当たりません


そんな最強捜査官のひとりである主人公のジョン・プレストンを 本作品では クリスチャン・ベールが演じています
個人的には シリアスな雰囲気で描かれるガン=カタの演出は もはやコメディだと思っています


アクションばかりに目が行ってしまいますが 本作品で描かれるディストピア世界にも注目です
全体主義国家リブリアと その党首であるファーザー率いる テトラグラマトン党
独裁国家として 「人間にとって感情は弱点であり 悪である」という考えから 市民に対して感情をもつことを禁じています
微妙な差異こそありますが 全体主義, 独裁, 市民同士の密告など含め やはりベースになっているのは「1984」の世界観でしょう


果たして 絶対的指導者 ファーザーの正体とは
そして この映画はコメディなのでしょうか
時にかっこよく 時に無意味に炸裂する最強のガン=カタを ぜひご自身の目で確かめてみてください

3.電子頭脳おばあさん (1962年)

監督は イジー・トルンカ
人形劇作家の巨匠がストップモーションで描く チェコの短編SF映画です

舞台は近未来
1人の少女は おばあさんと2人で暮らしていました
両親の家に戻ることになった少女は おばあさんに見送られ 旅立ちます
飛行カプセルに乗せられて やっと家へと着いたはずでしたが そこに待っていたのは...というストーリーです


コミカルな邦題に似合わず 温度の低い 不気味な雰囲気の作品です
人形アニメの巨匠 イジー・トルンカによって描かれる 奇妙で秀逸な世界観
とにかく 人形をはじめ 小道具やセットデザインなど 美術面のセンスが爆発しています
レトロな未来のイメージが 独特の形で表現されていて オリジナリティに溢れています
ストップモーションによる人形や物の動きも素晴らしく 感情をもち 本当に生きているかのようです


また 不協和音を取り入れた不気味な音楽も秀逸で 宇宙的な音と前衛的な演奏が 独特の雰囲気を生みだしています
映像と同期したような音楽の使い方もされており とてもおもしろい効果を生みだしています
社会を風刺したような ブラックユーモアあふれるストーリーは おそらく 近代化が急速に進んでいたであろう当時の社会に対して 警鐘を鳴らすことを意図していたのではないかと思います


チェコの人形アニメ作家であるイジー・トルンカが 晩年に描いた 本作品
29分間という短編ながらも 強い魅力を放つ 傑作SF映画となっています

4.赤ちゃんよ永遠に (1972年)

監督は マイケル·キャンパス
デンマークで撮影された 退廃的な雰囲気漂うディストピアSF映画です

舞台は 近未来の21世紀
人口の異常な増加の結果 世界にスモッグが立ち込め 人類を除くほとんどの動植物は絶滅
呼吸用マスク無しでは 外に出られないほどになっていました
このような環境汚染によって起こった食糧危機により 人口増加の抑制を目的とした 30年間の 妊娠および出産禁止令が発令されます
赤ちゃんの代わりとして 妊娠適齢期の若い夫妻に対しては 等身大の赤ちゃんを模したロボットベビーが配給されることに...というストーリーです


「全国民に対して 大統領から重要なお知らせがあります」というアナウンスからはじまる 本作品
靄がかった都市の上空から 地上の人々へ "妊娠と出産を禁じる"という 一方的な通達がおこなわれる 物悲しい雰囲気が印象的です


1949年の ジョージ・オーウェルによって描かれたSF小説「1984年」に影響を受けたと思われる 近未来のディストピア世界
ロボットベビーのデザインや動きは とても不気味です
登場する人物たちは それぞれが常に険しい顔をしており 元気や活気などとは程遠い 絶望的な状況に陥っています
「ソイレント・グリーン」よりも1年早く公開された映画ですが 食糧配給についてもしっかりと描かれているのが 個人的に驚きでした


作中で描かれたディストピア世界は アルフォンソ・キュアロン監督による2006年の映画「トゥモロー・ワールド」における"突然繫殖能力を失った人類"として描かれたテーマと かなり近い内容とも言えるかと思います
それぞれのディストピア世界を見比べてみるのも おもしろいかもしれません


DVD版などでは「SFロボットベイビーポリス」という副題も付けられた 本作品
退廃的な近未来を描く 傑作SF映画となっています

5.あやつり糸の世界 (1973年)

監督は ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
未来社会を予測できるスーパーコンピューターの開発に取り組んでいた フォルマー教授が ある日神経に異常をきたして変死を遂げます
変死の現場に居合わせたラウゼは その時の様子を 後任のシュティラー教授に話そうとしましたが ラウゼは突然消滅
その後 なぜか周囲の人間は 「ラウゼなど知らない」と言って 存在自体を否定する...というストーリーです


ダニエル・ガロイによる 1964年の小説を元に制作されました
同じ小説を元に 1999年には「13F」という映画も制作されていますが それぞれ違った仕上がりになっています
本作品は 映像の雰囲気やセットのかっこよさなど 抜群なセンスを放つ 西ドイツで製作された 213分の大作です


ファスビンダー監督にとっては 唯一SFジャンルに属する映画です
「13F」をはじめ「マトリックス」や「インセプション」など この映画に影響を受けたであろう作品は 多数あります
ストーリーの奥深さ 独特の雰囲気 どれを取っても素晴らしい映画です
あえて 内容を詳しく説明することはしません
必ず一生に一度は観てほしいような 唯一無二のSF映画になっています

6.地球爆破作戦 (1970年)

監督は ジョセフ・サージェント
コンピュータによる人類の支配を描いた ディストピアSF映画です

舞台は 冷戦時代のアメリカ
フォービン博士は 自ら開発したスーパーコンピュータである"コロッサス"を起動しました
コロッサスは 国家ミサイル防衛システムの要であり さまざまな情報を自ら収集し 驚くべきスピードで進化を遂げていきます
ソ連に先んじたと満足していた軍や上層部でしたが コロッサスによると ソ連にも"ガーディアン"というスーパーコンピュータがあると言います
自我を形成したコロッサスとガーディアンは 互いに情報交換をはじめますが 危険を察知した両国は スーパーコンピュータの接続を遮断する...というストーリーです


デニス・ジョーンズによる 1966年の小説を元に制作されました
2007年ごろには ロン・ハワード監督によるリメイクの話が立ち上がっていたこともありましたが そこからは何も音沙汰がありません


さまざまな情報を自ら収集するコンピュータというのは 現在取り沙汰される AIを連想させるところです
"機械が支配する社会"というテーマにおいては先駆者的な作品であり これに近いテーマは「ターミネーター」シリーズでも描かれています
本作品に登場するコンピュータは CDCというコンピュータ会社によって無償提供されたもので 総額480万ドル相当の機器だったそうです
そのため 制作当時は 撮影のない期間も警備員が配置され 周辺での飲食も禁止されていたとされます


アメリカとソ連の緊張状態や コンピュータの進歩に伴う危険性というのは まさに現代社会を表したようだと感じる 本作品
70年代の 傑作SF映画となっています

7.CODE46 (2004年)

監督は マイケル・ウィンターボトム
儚い雰囲気が印象的な ロマンスSF映画です

舞台は環境破壊が進み 地球のほとんどが砂漠化した近未来
人々は都市部に密集して生活するようになり 滞在許可証である"パぺル"がない人は 都市間の移動さえできなくなっていました
調査官のウィリアムは パぺル偽装事件を追ううちに パペルの審査や発行をおこなう スフィンクス社で働くマリアと恋に落ちます
そんなウィリアムとマリアには 秘密があります
それは 同一の遺伝子を持つ者同士による生殖を禁じた法律"コード46"に関することだった...というストーリーです


監督のマイケル・ウィンターボトムは SF映画中心に活動してきた訳ではなく 様々なジャンルを横断して映画を撮ってきた人物です
そのためなのか SFとしては珍しいと感じる 美しく儚い雰囲気が印象的です
本作品は 上海, ドバイなどにおいて撮影されました
風景や 会話の端々から 近未来の社会の姿が想像させられますが 上海の街並みは そのまま「ブレードランナー」のようで SF的に感じます
また 北欧を思わせる音楽が素晴らしく 儚い空気感を演出していて サウンドトラックとしても心地よい曲調です
Coldplayによるエンディング曲まで ひと繋ぎの音楽性です


まるでミュージックビデオのように進む物語は独特で SF映画らしからぬ部分が個性的なのですが 人物設定で重要な点があります
それは 主人公のウィリアムが"共感ウイルス"というものに感染しており これによって他人の気持ちや 考えていることが分かるということです
作中ではさりげなく語られる要素なのですが 知っておいたほうが映画が面白くなると思うので あえてネタバレさせていただきます
この前提を無くして本作品を観ると 主人公が かなり自分勝手な行動基準の人物だと思わせる演出が多く 感情移入しにくいため 個人的にはもったいないと感じる部分でした


遺伝子にまつわる 寓話的で悲しい物語
好みがハッキリと分かれるであろう作品ですが 興味がある方は観てみてください

8.タイム/TIME (2011年)

監督は アンドリュー・ニコル
時間が重い価値を持つ社会を描いた ディストピアSF映画です

舞台は そう遠くない未来
人類は遺伝子操作により"25歳から年を取らなくなる"という選択が可能になりました
人口過剰を防ぐため 時間が価値を持った通貨となり 人々は 自分の時間を消費して サービスの対価を支払うこととなっています
1秒も無駄に出来なくなった世界では 左腕の時間表示が0になった時 人は命を落とします
そんな中 主人公のウィルは ある富裕層の男をマフィアによる襲撃から救いますが その男は 117年という途方もない時間をウィルに託し 置き手紙を残したまま死亡してしまう...というストーリーです


製作費は4000万ドル
ジャスティン・ティンバーレイク主演のSF映画です
遺伝子操作を扱った設定や 先天的な不平等がテーマになっており それに反抗する主人公が描かれる点も含め この後紹介する「ガタカ」との共通性を感じる内容といえます
撮影監督は 数多くの名作を撮影してきた ロジャー・ディーキンス
本作品をきっかけに デジタル撮影のスタイルに移行したことでも知られ
その経歴は「1984」,「ショーシャンクの空に」,「ノーカントリー」,「ビューティフル・マインド」など 多岐に渡ります


ちなみに 吹き替え版では 元AKB48の篠田麻里子がヒロインの声優を担当しており 一部では酷評の嵐が巻き起こりました
ご視聴の際は ぜひオリジナル音声でご覧ください

9.ガタカ (1997年)

こちらも監督は アンドリュー・ニコル
遺伝子操作について描かれた 傑作SF映画です

舞台は近未来
人間は 人口受精と遺伝子操作で生まれた"適正者"と 自然妊娠で生まれた"不適正者"に振り分けられていました
不適正者に分類されるヴィンセントは生まれつき虚弱体質であり 不憫に思った両親は 弟のアントンを 適正者として誕生させます
そんな中 ヴィンセントが目指すのは適正者のみに許された 宇宙飛行士の職業だった...というストーリーです


監督のアンドリュー・ニコルは よほどディストピア好きなのか この特集では「トゥルーマン・ショー」と「タイム/TIME」に続いての登場です
「Gattaca」という映画のタイトルは DNAの4つの基本塩基 "G(グアニン)", "A(アデニン)", "T(チミン)", "C(シトシン)"の頭文字で構成されています
先天的な才能をもつ者と 後天的に才能を得ようとする者
それぞれの希望と絶望や 宇宙飛行士になるための さまざまな形の奮闘が描かれます


濃厚なストーリーだけでなく デザイン面も魅力的な作品です
特に印象的な 近未来を思わせる建物は 撮影用セットではなくフランク・ロイド・ライトという建築家によるものです
これは アメリカのカリフォルニア州にある"マリン郡シビックセンター"という建物であり 実際は役所, 裁判所, 図書館など 公的施設を内包した 巨大な施設だといいます
音楽は「ZOO」や「数に溺れて」などでも知られる マイケル・ナイマンが担当しており 注目ポイントのひとつでしょう


効率化された人類が生み出した 残酷な運命と どんな手を使ってでも それを乗り越える物語
人がもつ能力や 他人との優劣について考えさせられる 90年代の名作SF映画となっています

10.時計じかけのオレンジ (1971年)

監督は スタンリー・キューブリック
近未来社会の若者文化を描いた ウルトラバイオレンスSF映画です

舞台は 近未来のロンドン
クラシックを愛する15歳のアレックス・デラージをリーダーとする4人組の"ドルーグ"は ドラッグ入りミルクを飲みながら 夜の無差別的な暴力行為"ウルトラヴァイオレンス"の計画を立てていました
ゴミのように街へ打ち捨てられた老人たちはホームレスとなっており 少年たちは そんな彼らを棍棒でめった打ちにする...というストーリーです


本作品は アンソニー・バージェスによる 原作小説を元に制作されました
印象的なタイトルは "外見はただのオレンジのようだけれど 中身は時計のように管理されて動いている"という 管理された社会を皮肉ったような意味を持っています
あまりの過激な内容により 当初アメリカでは R指定を超える年齢制限である X指定の判定がなされました
その後 数シーンの映像を差し替えることで R指定になった経緯があります
また 当時起きた様々な殺害事件は この映画の模倣が原因だったという話が浮上
結果的には 1973年に キューブリック自身の要請があり イギリスでの公開が中止
この後イギリスでは 1999年まで 劇場,VHS,DVDでの再公開もなかったそうです


この事件のひとつは マーティン・スコセッシ監督の名作映画「タクシードライバー」における脚本の構想に 大きく関わっています
そんな危険な内容が描かれる本作品ですが 元々は「アルタード・ステーツ/未知への挑戦」などでも知られるケン・ラッセル監督によって ローリングストーンズのミック・ジャガー主演での映画化が予定されていましたが キューブリックに権利が渡ったという経緯があります


最終的に主演となったマルコム・マクダウェルは 本作品の撮影時 相当酷い目にあっています
角膜を傷つけたことによる一時的な失明だけでなく 水槽のシーンでの窒息状態
さらにステージショーの撮影では ろっ骨にヒビが入ったそうで 話を聞いているだけで辛くなってきます
その他には 音楽は「シャイニング」でも知られる ウェンディ・カルロスこと ウォルター・カルロスがつとめています


ウルトラバイオレンスという名の通り よい子には絶対見せられない 本作品
鬼才が描いた 過激な内容のSF映画となっています

11.トータル・リコール (1990年)

監督は ポール・バーホーベン
記憶をテーマにしたSF映画です

時は西暦2084年
何度も見る火星の夢に悩む技師のクエイドが "記憶を販売する"というリコール社の広告を見つけます
同僚の反対を押し切ってリコール社に向かい "秘密諜報員として火星を旅する"というコースを選んだクエイドでしたが 処置の途中で暴れだす...というストーリーです


フィリップ・K・ディックの原作小説「追憶売ります」を基に製作されており 「ターミネーター2」の1年前に アーノルド・シュワルツェネッガーが主演した映画となっています
グロいシーンはとにかくグロく お色気シーンや爆破シーンはとにかく派手に バーホーベン監督らしさあふれる 激しい演出に見入ってしまいます
本作品の製作には 公開まで16年 製作会社が何度も入れかわるという 長い歴史があります


元々は1974年に ロナルド・シャセットが 原作の翻案権を1000ドルで購入し その後ダン・オバノンに脚本の協力を依頼したのが始まりの作品です
ラストの展開については2人の意見が対立し 実際には採用されなかった オバノン版も存在するそうです
1979年頃になると 脚本の2人は「エイリアン」の製作に傾倒しましたが「トータル・リコール」は 製作費の問題などで停滞
「エイリアンは大成功をおさめました


その後 1984年時点では 監督にデヴィッド・クローネンバーグが予定されており 完成のため 彼は12回も脚本の草稿を書き直しました
しかし 原作寄りの内容を求めたクローネンバーグに対し「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の火星版を目指したロナルド・シャセットや 製作側との折り合いがつかず 降板
そのショックを跳ね返すように クローネンバーグ監督は 1986年の「ザ・フライ」を完成させたのかもしれません


「ザ・フライ」の成功後 クローネンバーグに「トータル・リコール」の再オファーがありましたが 彼は拒否しています
その後 最終的な製作会社が アーノルド・シュワルツェネッガーを主演に決定し 「ロボコップ」に感銘を受けたシュワルツェネッガーがポール・バーホーベンを監督に指名し ようやく撮影が開始されたといいます


7人の監督, 4人の共同脚本家, 40の脚本草稿を経て完成したのは 娯楽的でありながら 一筋縄ではいかない ダークな物語
SF映画黄金時代の香りがまだ残る 90年代の素晴らしいSF映画です

12.ゼイリブ (1988年)

監督は ジョン・カーペンター
以前も紹介させていただきましたが 何度でも紹介したいSF映画のひとつです

失業者が増え 貧富の差が広がった社会
教会の空き地で暮らすホームレスのキャンプ地において 1台のテレビだけが唯一の娯楽でした
そのテレビは何度も電波ジャックを受けており その都度ヒゲを生やした男が画面にあらわれ "彼ら"についての警鐘を鳴らすメッセージを語る...というストーリーです


本作品は レイ・ネルソンによる 1963年に雑誌掲載された「朝の八時」という短編小説を元に制作されました
ジョンカーペンター監督らしさ溢れる どこか虚しく 退廃的な雰囲気のアクション映画です


作中で描かれるのは メディアによる人々の洗脳や 物質主義に対する批判的な内容です
広告, 雑誌,新聞などに隠されたメッセージがユニークな演出で描かれ 監督自身も担当した気の抜けた音楽が 作品全体を包み込んでいます
現在でも 特定の過激なイデオロギーを主張するために この映画の内容が道具のように用いられることについては ジョン・カーペンター監督自身 たびたび不快感を示しています
あくまで "80年代の社会は 別の銀河から来た起業家の宇宙人たちが地球を乗っ取り 植民地化して 搾取をおこなっているようだ"という考えに基づいて制作したそうです


個人的に好きなのは 中盤で起こる異常に長い格闘シーンです
これは 主演としてプロレスラーのロディ・パイパーを起用した 本作品ならではともいえる部分であり この撮影に関するリハーサルだけでも 3週間ほど掛かったとされています
常識的に考えれば 映画としては異常な長さですが それ自体が資本主義への反抗のようにも感じ 個人的には 映画史に残るシーンだと思っています
現在の世界においても”彼ら”は身近に潜んでいると気づかされる 80年代を象徴する 名作SF映画となっています

あとがき

今回は「ディストピアの名作・傑作SF映画」についてのお話でした
ディストピアがテーマのSF映画は まだまだあります
第3弾以降の動画も作るので ご期待いただければ幸いです
ディストピア映画のような世界が これ以上実現しないことを願って...
最後までご覧いただき ありがとうございました

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