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【解説】火星移住計画 その可能性 [NASAやイーロンマスクのスペースXによる宇宙開発の未来]

"火星に100万人の都市をつくる"
スペースX社などを率いるアメリカの実業家イーロン・マスクは 2016年9月にこのように宣言し
2024年には第一段階として「人類史上初となる 火星に向けての有人宇宙船を送りこむ」そんな計画を発表しました

今回は「火星移住計画 その可能性」というテーマで お話ししていきます

※動画版はこちら

1. 計画の目的 そして目標

"火星に都市を建設し 100万人を居住させる" というのが
イーロン・マスクの発表した 火星移住計画の 最終的な目標です
なぜ 火星を目指すことを考えたのでしょうか?

それは 比較的近い惑星の中で考えた場合 火星はある程度 地球と近い環境をもっているためです
重力は地球の約37%で かたい地面があり 地下には水で出来た氷があるため 人類が生存できる可能性があると考えられているのです
未来の世界で もし 地球がなんらかの危機的状況に陥ったとしたら...
"地球のバックアップ"として火星に都市を建設しておくべきというのが イーロン・マスクの計画の大義名分であり
さまざまな理由で地球が滅亡してしまう可能性も交えながら「人類が 複数の惑星の住人になる」という目的が明言されているのです

2. 計画の現在

計画では 地球を出発してから片道3か月から6か月をかけて 火星へ到着することを目指しています

航行距離を最短にするためには 公転速度の異なる地球と火星が軌道上で近づいた頃を見計らって 出発する必要があります
このような 出発の"適切なタイミング"は 2年2か月ほどの周期で訪れます

また 現状では"火星への片道切符"となってしまい 地球への帰還は困難になることが予測されていますが
火星から地球へ帰還することを視野に入れる場合には 帰還するための機材や設備だけでなく 出発の"適切なタイミング"を考える必要があります

まずは2024年に 火星への基地建設をおこない 最終的には40年から100年後までに人口100万人の都市をつくりあげる という計画であり
人々の輸送手段としては ビッグ・ファルコン・ロケット と呼ばれる巨大ロケットに 100人乗りの宇宙船を搭載し 火星に向けて 人々を繰り返し送り込む ということが想定されていますが
この ロケットの発射実験はたびたび失敗していることもあり なかなか計画通りには進まなそうなのが現状です

3. 立ちはだかる課題

火星での生活においてまず問題となるのは 人間が生きるのに必須な酸素の生成方法です
火星の大気の96%は二酸化炭素であり もちろんそのままでは呼吸ができないため 長期的に生存するために 酸素の生成設備が必要になります

また 地球とは異なる 気候についても考える必要があります
火星の最高気温は30℃
最低気温はマイナス140℃
平均気温はマイナス63℃です
建物を含めた 防寒対策は非常に重要となります

さらに 頻繁に起きる砂嵐も 考慮に入れなくてはなりません
それは 6から8年に1度 火星全体を覆うほど大きくなり 数か月間 続く場合があります
これは 例えば太陽光発電のためのパネルに 太陽光が届きにくくなったり 細かい粒子が機材故障の原因になったり 吸い込んだ人の身体に 悪影響を及ぼす可能性もあります
屋外活動が制限されることなども考えられるため なんらかの対策が必須になるでしょう

宇宙から降りそそぐ放射線も 大きな問題です
火星では 放射線をさえぎるための大気が不十分であり 磁気もありません
これにより 火星に4,5日滞在しただけで 地球上で1年間に浴びる放射線量に相当する と予測されます
この放射線量によって 発がんリスクが大きく高まります
対策としては "レゴリス"という 火星を覆っている土砂を建物にかぶせることで 放射線を防ぐ方法などが考えられています

食料生産も 大きな課題となります
植物の栽培が必須になると思われますが 火星の土には 窒素やリンといった養分がありません
植物の生長に必須となる こういった栄養素が含まれる岩石を採取し それを基にして土をつくる など 相当な工夫が必要になるでしょう

水を供給できるような施設も必要です
そして 永住できるような環境にするのであれば 住居, 娯楽施設, それぞれの役割, 信頼できるリーダーなど 考えるべき課題は 山積みです

4. 他にもあった 火星移住計画

オランダの民間人団体「マーズ・ワン」は2012年に火星への永住計画を発表して参加者を募り なんとそこには20万人もの応募がありました

2031年に最初の4人が火星へ向かう計画ですが 実現する可能性の不透明さや 地球への帰還についての可能性を考慮しない"火星への片道切符"となるような計画を倫理的に問題視する声もあります

火星に関する計画は 民間団体だけではありません
2010年, アメリカの バラク・オバマ元大統領は "2030年代に火星周回軌道上に宇宙飛行士を派遣し 帰還させる" という構想を発表しています


さらに NASAによる「アルテミス計画」では
まず2025年頃を目標に有人衛星を月周回軌道に乗せ
2025年以降にはアポロ計画以来となる有人月面着陸
そして その先にある 有人火星探査も視野に入れた 壮大な宇宙開発が模索されているのです

あとがき

すこし前までは単なるおとぎ話のようだった 火星移住
現実の世界で このような計画がいまも少しずつ進んでいます
もしこのような計画に誰でも参加できるとしたら...あなたは火星へ移住したいと思いますか?
恐怖と好奇心 果たして どちらが上回るのでしょうか

今回は「火星移住計画 その可能性」についてのお話でした
最後までご覧いただき ありがとうございました


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