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文系起業家のための、ゼロからのディープテック起業の始め方

こんにちは、Planet Savers CEOの池上です。
今日は文系起業家がゼロからどうやってディープテック起業するか、というテーマでお話します。
こんな事業やってるので、理系の人と勘違いされるんですが、高校の時は物理のテストでほぼ赤点取ったり、化学は鉛筆転がしてマークシート埋めたり、数学も受験半年前までひどい点数で、夏休みに毎日6時間勉強してようやくまともな点数が取れるようになった、正真正銘のド文系です。
現状日本ではディープテックが限られてます。特に我々が取り組むClimate Techの分野で本格的なディープテック起業は本当に少ない。
でも、私たちはClimate Techのディープテックには日本の産業復興に貢献する大きなポテンシャルがあると考えており、文系起業家もパッションと行動力があればリードしていけるし、もっと増えていくべきです。
そんな私がディープテック起業を思い立ってから実行したことを時系列でご説明します。

1.発散フェーズ(期間:1か月)

新しい会社を作ると決めた時、Climate Techは勿論候補分野として頭に浮かびましたが、最初から狭める前に広く自分の関心領域を整理してみました。それこそ、気候変動、フードテック、途上国医療、みたいな粗めの粒度です。加えて、一応NFTのような流行分野も多少リサーチしましたが、強いパッション湧く気はしなかったので早々に候補から落としました。
この時すごくやって良かったと感じているのが、友人・知人への自己分析相談や、起業の進め方について助言を求めたことです。
既に一社起業し、経営してる中で新たに起業することへの踏ん切りも一人だとなかなかつかなかったですし、もう社会人10年目を過ぎていたので今更感はありましたが、納得感持って人生賭けて勝負する領域を絞っていくに際し、私のことを多少なりとも知る友人と話して強み・弱みを整理したり、本質的にやりたいこと、意思決定の軸にしたいことを言語化しました。特にお願いして良かったなと思ったのは、超一流のキャリアアドバイザーでコーチングのプロでもある友人に自己分析を手伝ってもらったことです。自分でも気づいていなかった想いや胸のつっかえが取れた感覚がありました。
また、ディープテック領域の起業家の先輩や、VC・エンジェル投資家の方等とお話して、どう起業を進めていくと良いかご助言いただけたことも参考になりました。
そして何より大事だったのは気の置けない友人・知人に声かけて対面でランチ、飲み等し、自分が何故ディープテック起業したいのか、何を成し遂げたいか言語化が進んだことです。正直このフェーズだと理解されないことも多くて反対されたりしたんですが、それでも私はディープテックで挑戦したい、気候変動領域に絞って本気で取り組みたいとむしろ気持ちを固めていきました。

2.探索フェーズ(期間:1か月)

以前電力やエネルギー分野の仕事をしたことはあったものの、最新のトレンド等は追えてなかったので以下の方法でインプットしました。

  • Climate Tech関連の書籍を10冊くらい一気に読む。特に、日本は遅れているという認識で海外の有識者が書いた本を中心に読みました。思想が偏らないように、ビジネスサイドの著者だけでなく、環境アクティビストや科学者の著書も読むように。

  • 本やネットサーフィンで出てくるClimate Tech領域の具体技術について、政府会議等の公開資料や業界団体のレポート、海外有名VCの投資先スタートアップ等調べて、それぞれ更に深掘り。

  • Google Alertやオープンイノベーション・ベンチャー創造協議会等、関連団体が運営するメルマガにも登録。

  • エネルギー、電力系各社に勤める知人へのアポ入れや、ピッチイベント、ブログ等で名前を見つけた業界関係者へLinkedin等でDM、ヒアリング。(海外のオンラインピッチ動画を見ていたら偶然日本人でClimate Techスタートアップに名を連ねている人がいたのでLinkedinで実際にDMしてみました)

以上行った辺りでスプレッドシートに各技術についてのポイントを整理し、ある程度知識武装と想いの言語化ができた段階で、有力大学(東大、京大、東工大等)の系列VCや、ディープテックに強いとされる独立系VCにアポ取りを実施。事例は少なそうですがVCから起業に関心ある研究室等を紹介してもらえる場合もあるので、個人的にはおススメです。 
並行して、各技術についての著名な研究室のアタックリストを作成してアポ入れを始めました。
アタックリストの作り方として、まずは旧帝大や東工大、早慶といった有名大を中心とした大学でフィルターをかけた後、CREST、さきがけ、ERATO、AStep等々、大型の研究支援事業が取れている有望な先生をリストしていく作業をひたすら行いました。
合計60名ほどリストしたところで優先順位を整理し、良さそうな先生方にDMを開始しました。
同時に、各大学の研究発表イベント等もチェックし、そちら経由で直接お話できそうな場合は足を運ぶようにしました。
ちなみに、必ずしも大学の研究室ではなく、企業の技術者の方でも優れた知見やアイデアをお持ちの方がいれば全然良いと思うのですが、なかなかそういった方と偶然出会うチャンスも少ないと思うので、大学回るのが結局一番正攻法かなと私は結論付けました。

3.意思決定フェーズ(期間:2か月)

20名ほどにメールしたり直接お話聞きに行き、実際に打ち合わせできたのは10名弱だったと思います(中には結構厳しめの返信いただく先生もいらっしゃいましたので、心折れないメンタリティは大事だと思います)。
なお、実際に打ち合わせする際にはその先生のご研究についてある程度調べていくのは当たり前ながら超重要です。「文系なんで不勉強で恐縮ですが先生の~というご研究を読んで大変ポテンシャルを感じました!」みたいなノリでお話し、結構研究内容突っ込んで議論できるように素人ながら頑張って調べていきました。
その中で、特に起業にご関心お持ちいただけて可能性を感じた先生数名とは数回打ち合わせを重ねました。
ありがたいことにとても素晴らしい研究者の方が複数いらっしゃったのですが、ずるずると意思決定しないのは先方にも申し訳なかったため、意思決定のデッドラインを定めて検討を進めました。
その中でもDACの市場規模の拡がりと、世界でも圧倒的に勝てる可能性がある技術を既に持たれていることから、最終的にPlanet Saversの共同創業者である伊與木と組むのがベストと考えました(詳細は前回のNote記事参照)。特に伊與木の場合は年齢も近く、人柄もざっくばらんで、出会って割と早い時点から昔から知っている友人のような関係が築けたのも大きかったです。
また、伊與木の場合、MITでのポスドク経験もあり視座が国際的で、起業にも最初から前向きでした。最初の打ち合わせから一か月後にはDAC用のゼオライトを試作しているという恐ろしいプロアクティブさにも畏敬の念を持ちました笑

4.試験運用フェーズ(期間:半年)

とはいえ、全くこれまで関わったことの無かった人といきなり会社設立するのはリスク高い(共同創業者が相性悪くて破綻するスタートアップも多いです)ので、半年間は法人登記をせず以下、ステルスで活動を進めました
①伊與木と起業すると決めてすぐに投資家や顧客候補向けのピッチ資料を作成し、お付き合いのあったVCの方や、エネルギー系の会社で勤める知人に説明しフィードバックを求めました。反応はポジティブなものもネガティブなものもありましたが、教育事業立ち上げた時よりは良い反応が随分多かった印象です。
②複数のアクセラに応募。不採択のものもありましたが、採択いただけたものもあり、そういった中でいただいたフィードバックをベースに事業プランを磨いていきました。
③顧客候補となる企業様へのヒアリングをかなりのペースで行いました。半年で20社以上お話させていただきました。やはり需要家の方の考えが聞けると事業の解像度も爆上がりします。全く何もアセットが無い我々とお話しいただいた企業様方には感謝しかございません。この場を借りてお礼申し上げます。
④これはめちゃくちゃ大事だったと思うのですが、私たちに欠けているピースであったエンジニアリングのスペシャリストがチームにパートタイムでジョインしました。私は文系、伊與木もCO2吸着材の研究者で、DACのシステムに不可欠な装置やプラントの専門性は限られてしまいます。この点は活動を始めたときから気になっていたので、LinkedInでプレミアムモードに入って関連領域の機械エンジニアの人を10名以上リストアップしてDMしましたが、返事は残念ながらありませんでした。しかし!以前私が参加したインキュベーションプログラムで同期だった方に相談したら何とDACのスペシャリストを紹介してもらえるというミラクルが、、、!!やはりネットワークを駆使してリクルートするのは本当に大事だと思います。
⑤最後に重要視していたのが助成金の獲得です。やはりディープテックはお金がかかります。初期投資を賄える額の助成金が取れたら法人登記しようと決めていました。締切2日前の助成金の存在に気付いてマッハで書類作成したり、2か月間かけて丁寧に作った助成金の申請が一次審査で落とされたり、色々ありましたが、無事に環境省のSBIR等に採択いただき、半年で創業の決意ができました。
なお、伊與木との間でも、この間一緒に活動したことでお互いに対しての理解も深まり、納得して起業に至れたと思います。

以上、これから起業される方等に参考になっていれば幸いです。

そして、この立ち上げ期に相談に乗っていただいたり、人を紹介していただいたり、ご支援いただいた全ての方に感謝しております。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
Planet Saversを引き続きよろしくお願いします!!