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見仏記

"内緒話をするように、耳元に口を寄せてくる。『だけどさ、いとうさん。仏像がまってるんだよ、仏像が』そう言って、うれしそうにみうらさんは笑った。なんだかアイドルのコンサートに行こうとしている少年みたいだ。"1993年発刊、本書は2人の独自鑑賞、考察姿勢が楽しい全国見仏道中記。

個人的には、みうらじゅんファンを自称しているくせに?長らく未読だったのでようやく手にとりました。

さて、そんな本書は約30年前と。みうらじゅん、いとうせいこうの両名が若かりし30代の時に中央公論誌上で連載された見仏ツアー(取材)を、いとうせいこうの視線でまとめたもので。

全国、具体的には奈良5回、京都3回、東北3回、九州2回の計13回、東京駅の"銀の鈴"で待ち合わせしては、お寺などの建造物には一切目もくれず、ひたすら【目当ての仏像鑑賞に明け暮れた記録】となっているのですが。

足をむけて【仰向けに寝転がりながら】仏像を鑑賞しつつ、仏像の配置をミュージシャンの配置で考えたり、東北の仏像をパース(遠近法)が狂ってると考察したり、はたまた『みやげもん屋』にはなぜ木刀が売っているのか?とオリジナルBGMをくちずさみながらひたすら楽しそうな発言をしている"みうらじゅん"

一方、そんな"みうらじゅん"をおかしなことばかり言って批判を受けても【自分が守らなければ】と、冷静な保護者、観察者を気取ろうとするも、みうらじゅんに引きずられるように次第に時間や空間を超えて【脳内妄想がひろがっていく】"いとうせいこう"と、タイプの違う2人が醸し出す"おかしみ"が何ともツボにはまって面白かった。

また、本書には紹介される仏像の写真は掲載されていないので(イラストは一部ある)知らない仏像はググったりして検索して補完する読み方になったのですが。WEB紹介記事のいくつかに『あの見仏記で、みうらじゅん、いとうせいこうか絶賛』的な書かれ方をされているのを見て、お二人の(そして本書の)影響の大きさを実感したり。(しかし、みうらじゅんが惚れた浄瑠璃寺の吉祥天女像。いとうせいこうが惚れる西大寺の文殊菩薩。確かに魅力的)

そして本書はラストで『三十三年後の三月三日、三時三十三分に三十三間堂の前で会いましょう』との約束をして別れる。という何だかドラマのラストの様な終わり方をしているのですが。気づけば後数年後!(のはず)果たして2人は約束を覚えているのか?そんなどうでもいいことを読後に心配したり。

2人のファンはもちろん、仏像を自由に鑑賞したい全ての人にオススメ。

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