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ずっとお城で暮らしてる

"あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。十八歳。姉さんのコンスタンスと暮らしている。運さえよければオオカミ女に生まれていたかもしれない、と何度も考えたことがある。"1994年発刊の本書は、日常と非日常の境界を描く著者の代表作にして、解釈が読み手それぞれに委ねられた『本の形をした怪物』的な一冊。

個人的には、恐怖小説の有名作にして美しい表紙が印象的な(読後に見ると実は怖い)本書。2019年5月にアメリカで映画公開されたのをきっかけに久しぶりに再読しました。(日本公開あるのかな。。)

さて、そんな本書は閉鎖的な村の人々から虐げられるも、隔絶された屋敷では【幸せに暮らす】姉妹と叔父。しかし、そこに乱入者が現れたことで大きな変化が。と言った感じなのですが、率直に言って、あらすじでだけでは本書の魅力は全く伝わらないと思います(笑)ページ数も多くないし、ぜひネタバレ抜きで【感じるままに一度読み通してください】多少人を選ぶかもしれませんが、ハマる人にはどっぷりハマります。

でも、その上でちょっと補足すると。実年齢の割にダークなハックルベリー・フィン?【不自然に幼い語り口】の妹、メリキャットことメアリ・キャサリンの一人称で書かれている、典型的な【信頼できない語り手】ぶりがポイントというか、本書をじわじわと怖くしている主な要因で。一度メリキャットの視点に重ねて読み終えてから、じっくり【俯瞰的にもう一度疑って読んでみる】と、最初の時と印象が全く違ってくるのが本書の本当によく出来た所かと。

怪物が出てきたりといった派手さはなくも【じわじわくる恐怖小説】の傑作を探す人へ。また読書会などで互いに感想を語り合える本を探す人にも課題本としてオススメ。

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