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漂流者は何を食べていたか

"この本のために選び抜いた漂流記はどれも苦悩と絶望に閉ざされているが、日がたち、経験を重ねていくにつれて敢然と荒波にたちむかっていく希望と勇気の物語に成長していく"2021年発刊の本書は漂流記マニアでもある著者による食のサバイバル・ブックレビュー。

個人的には主宰した読書会で参加者に紹介されて手にとりました。

さて、そんな本書は作家、エッセイスト、写真家、映画監督と様々な活動で知られる著者が、今回は漂流マニアならぬ『漂流記マニア』として、数ある漂流記の中からノンフィクションの14冊『117日間死の漂流』から『竹筏ヤム号漂流記 ルーツをさぐって2300キロ』までを、漂流中『何を食べていたか』に着目、影響を受けての自身の辺境地帯旅のエピソードをまじえながら楽しく紹介しているわけですが。

まず、私自身も割と子どもの時から漂流記が好きで『コン・ティキ号そ探検記』や『十五少年漂流記』などを読んできたので、著者が紹介してくれる作品に懐かしさを感じつつ。でも流石に分別のついた大人になった今は漂流自体には【ワクワクさより、自分だったら絶対に体験したくない】といった、インドアな気持ちの方が大きくなっているのに、読みながら気づされました。

一方で、本書の漂流中のサバイバル自体ではなく『作中での食事描写』への着目はなかなかに新鮮で。シイラにトビウオ、ウミガメにサメを【共通して漂流者がつかまえ、食べているのか!】と驚いたり、魚や動物たちの命をいただきつつも精神的には【むしろ支えられている】といった矛盾した心境になったりしているのが興味深かった。

漂流記が好きな人はもちろん、極限状態での食。に関心ある方にもオススメ。

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