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ソール・ライターのすべて

"私が写真を撮るのは自宅の周辺だ。神秘的なことは馴染み深い場所で起きると思っている。なにも、世界の裏側まで行く必要はないんだ。"2017年発刊の本書は80歳を迎えて世界的に"再発見"された写真家、画家の作品と言葉で紡がれたファッション、ストリート、ヌード、絵画まで収録の作品集。


個人的には京都で開催されていた展覧会、その最終日に駆け込む予定がまさかの?"長蛇の列"で。結局鑑賞出来なかったので手にとりました。

さて、そんな本書は1940年代にニューヨークを舞台に絵画のようなカラー写真の先駆者として有名ファッション誌の表紙を飾るも、商業性が強く求められる80年代になると表舞台から姿を消したソール・ライター。彼のややシニカルな短い言葉と共に、約200点の写真を中心に絵画作品なども収録されているわけですが。

まず、文化芸術は『生きていく上で必要不可欠』と、当たり前の事を"わざわざ"文化庁長官が発言しないといけない『辺境の島国』でストレスのかかる非日常的な生活を国家に強いられる2021年現在。写真家としてのソール・ライターにより【雨粒に包まれた窓、駅のホームや街角】から覗き見するように撮られた【ニューヨークの人々の日常】は言葉にならないほどの癒しを与えてくれて、何とも感謝の気持ちで一杯になりました。

また、お恥ずかしながら?初めて今回、まとまった形でソール・ライターの作品を眺めたのですが。特に写真については、ちょっと前の時代だと、同じく浮世絵に影響を受けている印象派の【ドガを想起させられる大胆な構図】で切り取られた無名の人々の姿からは様々な知られざる物語をイメージさせられた一方で、本書後半の女性たちの開放感あるヌードからは対照的にソール・ライターとの【特別な距離感】を感じさせられて、同じく映像を撮る一人として勉強になりました。

写真好きな全ての人へ。またコロナにより今、失われている『日常』に想いを馳せたい人にもオススメ。

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