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何を描くか?よりどう描くか~横尾忠則さんの個展を見て思う

この記事は、本アカにUPした記事の再UPです。今後美術展レビューをマガジンにまとめるためにコチラに移していきます。

コチラ展覧会レビューのマガジン・ひよこ編

そんなわけで、Piyoko-Labo イラスト担当ひよこです。

現在、東京都現代美術館で開催中の「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」

会期:2021年7月17日(土)- 10月17日(日)

以下のレビューは、この春に名古屋市にある愛知県美術館で行われた展覧会のものです。(冬には大分に巡回予定)

4度目の千本ノックの価値あり!な展覧会


横尾さんは2008年世田谷・2010年大阪国際・2013年豊島に続いて4回目なのに、また行ってしまいました。どんだけ横尾さん好きなんでしょう。

そしてまた千本ノックに打たれてきました。大阪のポスター展の打たれっぷりには勝てないだろうと思ったけど、全然負けてない。すごい作品量。

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世田谷美術館での2008年の展覧会からすでに干支が一周し、その後描かれた最新作は新しい世界観を構築していました。世田谷の図録と見比べると、同じ絵もあり、似てるけどちょっと違った絵もあって。

横尾さんといえば、全身ピンクでかなりピンク(エロ)っぽい女の子のシリーズ「ピンクガール」や、様々なY字路をひたすら描く「Y字路シリーズ」など、何十年も描き続けているモチーフがあることが特徴の一つ。

この「よく似た絵」や「同じモチーフが何度も登場する」のって、描いてて飽きたり、しんどくなったりしないのか、と思うのです。そもそも巨大な絵を1枚描き上げるって相当パワーが必要です。

同じモチーフで描き続けられるモチベーションとか体力とか、ホントすごいなーとただただ感嘆するしかありません。


愛とは究極のディスり?


横尾さんにはいろいろ好きなシリーズがありますが、特に好きなのは、アンリ・ルソーへのオマージュ作品。

これは、ルソーの自画像として有名な作品です。

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それを横尾さんが描くとこうなります。

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この絵のタイトルは「正確な寸法で描かれたルソー像」。世田谷でこれを見た時、大爆笑。

念のためいうと、下の方に小さく描かれているのがルソー。それをわかりやすくするために、元の絵と同じ位置に絵の具のパレットを残してます。

思いっきりディスってますやん、て感じですが、ルソーへの愛ゆえに描けるんですね、きっと。

今回も展示されています、ルソーシリーズ。


ダリにも通ずる技術力とファンタジーの融合


ちょうど昨日、ダリ展についてUPしましたが、横尾さんにはダリとの共通点が多いように感じます。

なんといっても卓越した技術力と幻想世界が融合していること。

そして、絵画の世界にとどまらず、様々な創作活動をしていること。

技術に関しては、2008年世田谷美術館個展の際に「ほぼ日」の糸井さんのインタビューに、横尾さんはこんな風に答えています。

https://www.1101.com/boukenooooo/2008-06-06.html

ぼくはすべて、技術がテーマなんですよ。
もう、技術しかないんです。
イメージなんか、どうでもいいわけ。
やっぱり、絵画は技術です。
イメージは何でもいい。
もう、そこにあるもの、
出会ったもので、いいんじゃないかな。

つい「何を描くか」が先にあって、それを表現するために技術を磨こうとするんだけど、先に技術を磨いてあれば、何を描くかなんてどっちでもいいことなのだ、ということですね。

いやはや、耳が痛い。。。

今回が今までと一番違うのは、改めて、戦争体験や幼児期の想い出が作品にどう影響を与えたかを感じながら鑑賞できたこと。さらに作品世界が理解できたような気がします。

大量の絵画の展示が終わった後には、コロナ禍の中でマスクをつけた横尾作品の画像が大量に紹介されていて、千本ノックは終わりません。

壁一面の横尾さんの滝写真コレクション全展示とともに「東海地方初」らしい意気込みを感じた、素晴らしい展覧会でした。

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夏から秋は東京、冬には九州へ巡回

冒頭のご案内通り、この展覧会には巡回展があります。

東京都現代美術館 2021年7月17日(土)~10月17日(日)
大分県立美術館 2021年12月4日(土)~2022年1月23日(日)[予定]

なかなかのボリュームで、千本ノックに打たれること必須です。体力と時間には余裕を持って行ってくださいね。

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