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中村洋太さんのライターコンサルで学んだ5つのこと

「プロの取材ライターになる」

そう決意して、2022年2月よりフリーライター・中村洋太さんのライターコンサル生になってから2か月半が経った。

初回セッションをはじめ、3度の添削とフィードバックを経て、マインドとスキルの両面で、自分でも驚くほどの変化を感じている。

ここまでを振り返り、中村さんのコンサルでとくに印象に残ったことを5つ書き留めておく。

中村洋太さんのライターコンサル生になるまでの経緯

最初に、中村さんのライターコンサル生になるまでの経緯についてふれておきたい。中村さんのことを初めて知ったのは、2021年8月、中村さんの著書『インタビュー記事の書き方』を拝読したときだ。自主企画でタイ在住者のインタビューを始めて1か月が経った頃で、取材ノウハウを学ぼうと購入した電子書籍だった(note版はこちら)。

読み進めると、そこには実用的なハウツーに加え、中村さんの「ライターの仕事」に対する想いが熱量高く綴られていた。本の終盤には “創造的な仕事をしているという誇りもある” という一説があり、深く頷いてマーカーを引いた。

不覚にも涙が出て驚き、自分が「書くこと」に対して、思っていた以上にプライドを抱いていたと知った。「価値のある文章とは?」という問いについても深く向き合うきっかけになった。

そこから半年間、月1本のペースでタイ在住者のインタビュー記事を執筆した。取材を通じた出会いや得られた知見は私にとっての財産となり、インタビュイーや読者から好意的な感想や反響をいただいたときは、天に昇るほど嬉しかった。

だが次第に、「ライターとしての成長が頭打ちになっている」と、自己流の限界を自覚し始めるようになる。この延長線上にプロへの道は拓けるのだろうか。今の自分のレベル感すらわからない。「一流になるには一流の方から学ぶしかないのでは?」と感じ始めていた。

2022年1月、Twitterで中村さんのアカウントを発見し、「あの書籍の中村さんか」と即フォロー。日々のツイートやnoteの記事を拝見し、ライターコンサルをされていると知った。華々しい実績はもちろんのこと、心揺さぶる文章や誠実な人柄に改めて惹かれた。

“誰かに憧れて” こんなに胸が熱くなったのは、人生で初めてかもしれない。自分と同じ「旅好き」ということも知って、一気に親近感も湧き……

「この方しかいない。中村さんのコンサルを受けたい!」

そう決めて、震えながらTwitterのDMでメッセージを送ると、すぐに丁寧な返信があった。そこから私のライター人生は大きく動き出したのだ。

1、良い記事とはなにか

中村さんのコンサルを受ける前、私の文章はとにかく長かった。インタビュー記事だと余裕の8000字超え。執筆にも膨大な時間を要していた。「この人の魅力を全部詰め込みたい」と筆を走らせるうち、とんでもない長文になって途方に暮れる。「読者に負担だろうな」という問題意識を抱えつつ、根本的な解決策を見出せずにいた。

そんな私の悩みに対して、中村さんは穏やかながらもハッキリと答えてくれた。

「読者目線で見たとき、最後まで読むに堪えうる文章かどうか。これを客観的に考える必要があります。もちろん、なかには1万字前後のインタビュー記事を見事に書き上げるライターさんもいます。でも、それだけの字数で最後までグイグイ引き込むのには、かなり高度な技術が求められるんです。

なので、まずは3000〜4000字程度できちんと質の高い記事を書くことをお勧めします。良質な情報をより短い時間で得られるなら、読者にとっても良いことです」

痛いほど刺さった。プロのライターと自分との差を自覚した瞬間だった。同時にこれから目指すべきものが明確になり、気持ちがスッキリした。

中村さんに文章構成等のアドバイスをもらい、これまでのやり方を根本的に見直した。現在私は3500~4500字ほどでインタビュー記事を執筆している。以前に比べて文字数は半分に減ったが、内容はむしろ「エッセンスを凝縮できている」という実感がある。

不要な部分を削ぎ落とし、人の心に訴えかける大切な部分だけを残す。「良い記事とはなにか」を少しずつだが理解できてきた気がしている。

2、仕事に繋げるには逆算で動く

「将来的にどのメディアでどんな記事を書きたいとか、イメージはありますか?」

中村さんの質問に私はまったく答えられなかった。世の中にどんなメディアがあるかすらよく知らなかったのだ。

「仕事に繋げるための近道は、目標とするメディアに寄せた文章を書くことです。たとえば書きたいメディアの記事が約2500字であれば、そのくらいの文字数の記事を書けるように鍛錬する必要がある。

『仕事にしたい』と真剣に考えているのなら、『既に仕事になっているもの』を見るといい。そこから『なにが自分に足りないか』を逆算していくんです」

ずっと成り行きで文章を書いてきた私にとって、目から鱗だった。私は将来どんなライターになって、どんな記事を書けるようになりたいんだろう? 中村さんとの対話を通じて、目指したいライター像の輪郭が朧げながらも見えてきた。

「可能性は無限にあります。自分が望む仕事や将来像を定義付けて、そこまでの道筋を立てることができれば、あとは逆算して行動するのみです」

コンサルを通じて、将来やりたいことへの道筋が少しずつできてきた。愚直に行動していこう。

3、いつの時代でも色褪せない、代替不可能な文章を書く


中村さんがこんな助言をくれた。

「みくさんは世界一周の経験とかタイ在住とか、ユニークな個性がある方だから、インタビューとは別に、『自分がどう生きてきて、どんなことを感じたか』みたいな自分軸の記事を書くのもいいと思います」

とても響く言葉だった。実は私自身、『自分のことを書いてみたい』という気持ちはずっと抱いていたのだ。でも……

5年前に終えた世界一周の話なんて、情報の鮮度が落ちれば「ほぼ価値がない」と思っていた。その不安を吐露すると中村さんは、

「個人の体験から得られた気付きには普遍的な価値があります。いつの時代でも色褪せない、みくさんにしか書けない文章があるはずです」

そう言って、「この本はエッセイを書くうえでお手本になります」と、片桐はいりさんの旅エッセイ本『わたしのマトカ』を薦めてくれた。

その本では、筆者がフィンランドで過ごした1か月半が、独特なユーモアを交えて色鮮やかに綴られている。現地の暮らしや人々の情景がありありと瞼に浮かび、まるで一緒に旅をしているかのよう。優しく温かく、清々しさが残り、16年以上も前の話なのにまったく古さを感じない。

そうか、そういうことなんだ。私にもあるよ。旅で胸が高鳴り心動かされたエピソードや出会いが、いくつも脳裏に浮かんできた。

そして先日、初めて旅エッセイに挑戦してみた。エッセイならではの難しさはあるけど、とにかく楽しい。新しい世界が開けた気がしている。


4、ありのままを実直に書く

自分が書いたインタビュー記事のリード文が陳腐で、「ありきたりすぎる」と頭を悩ませていた。

記事添削のフィードバックのとき、リード文を書くときの参考にと、中村さんがノンフィクション作家・小松成美さんの著書『虹色のチョーク』の書き出しを、ゆっくりと読み上げてくれた。

“その会社の窓は、輝いていた。虹色の線がいくつも重なり、花や昆虫や星や雲が人の顔を描き出している…”

「小松さんが初めてその会社に取材で訪れた時、彼女が目にしたものをそのまま書いているんですよ。それを読んだ読者は、まるで自分が目にした光景かのように感じ、スッと感情移入できる。あくまで一例ですが、これが良い書き手の描き方です」

このアドバイスを反映してリード文を書くと、途端に文章が生き生きし始めた。実際に見たこと感じたことを、誇張せず、実直かつ冷静に描く。これを常に心に留めるようにしている。

5、どんな生き方をしたいのか

ある日のコンサルで、私が「世界一周中はジャーナリストのような活動をするのが好きで、帰国後はその経験をもとに旅の講演をした」という話をした。すると中村さんが、

「みくさんの個性に紐付く話だから、そこはもっと掘り下げるといい。その軸が、今後の人生全般にも繋がってくる可能性があります。ライターとしてのキャリアに限らず、どんな生き方をしたいのかも含めて考えてみるといいです」

とおっしゃって、さらに「みくさんは、帰国したらまた講演とかしたくないですか?」と予想外の質問をしてきたので、「こ、講演ですか?」と、思わず声がうわずってしまった。

「講演はすごく楽しかったですけど…... なんで私がまた講演をやりたいと思ってるってわかったんですか?」

「好きなことを話しているときって、なんとなく生き生きして、声のトーンも変わるんです。まずは好きなこと、やりたいことを自覚する。そしてそれを夢物語で終わらすんじゃなくて、実現するために動いていく。未来にどうなっていたいかが明確になれば、今の行動が変わってきます」

講演のことは少ししか話していないのに、心の内を見透かされて、「一体この方は何者なんだろう」と鳥肌が立った。中村さんは、私のずっと先の未来にまで光を照らしてくれた。

私は今、10年先、20年先の自分の姿をイメージしながら、これからどんな生き方をしたいのか思い巡らせている。

コンサルを受けるたびに見える景色が変わる

コンサルを受けるたび、目の前の景色が変わっていく不思議。中村さんはいつも私の話に真剣に耳を傾けてくれ、寄り添いつつ、プロ視点での的確なアドバイスをくださる。

今の私に足りないもの、削ぎ落とすべきもの、今後の方向性……様々なものがクリアになり、新たな道が拓けてきた感覚がある。

コンサル中の会話はポジティブなエネルギーに満ちていて、とにかく楽しく、希望しか湧いてこない。中村さんからもらう言葉のすべてが私の原動力となっている。

コンサルで得た学びは山ほどあるが、さらに長文になってしまいそうなので、キリのいい「5つ」に留めておいた。なにをどう考えても、中村さんのコンサル生になったことは私にとって最良の選択だった。

中村さんは「善く生きる人を増やしたい」とおっしゃる。まさに私にとって、彼は一流のライターとしてだけでなく、「善く生きる人」としても憧れの師匠だ。その背中を追いかけながら、これからも精進していこう。


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