僕と君とでは何が違う?
iPhoneがアップデートされたら、WhatsAppの電話番号も日本のものに更新されていた。
このアプリは電話番号が変わると、もう別人として認識されてしまって、今までと同じやりとりが続けられなくなる。
いつからだったんだろう。
Hi.だけで終わる返信に困るメッセージや、突然のボイスメッセージも、チェーンメールみたいなのも来なくなったのは時間の経過だと思っていた。
あたたかくて少しだけうざったいアフリカの文化。ないことに気づくとちょっと寂しい。
もしかしたらアフリカの家族は、クリスマスや年末年始にメッセージをくれていたかもな。
それに気付いた今日は、久しぶりにアフリカ備忘録。
スマホ使えなかったら何するの?
私の住んでいた村には電波がなかった。
隊員が住むようなエリアは珍しいかもしれないけれど、断水も停電も少なくて困らない程度。長くても半日で復旧する。
水も濁っているのは見たことがない。
だけど電波だけが最弱。
インターネットは繋がっていないも同然で、道を一本入ると通話すらままならない。
運が良ければ数時間に1回、突然LINEの通知音が連続で鳴り響いて電波をキャッチしたことを知らせてくれる。
慌ててスマホを手にして返信すると、30分くらいスムーズに使える時もあれば、返信を送る時にはもう電波はなくなっているときも。
深夜と早朝は使う人が減るせいか比較的つながることが多かったから、日本にいる家族に連絡をとるときは、夜寝る前か早朝に庭に出てLINEでメッセージを送った。
夜は蚊との戦いながら溜まった返信をし続けた。
日本の情報社会に慣れきった私には、これが一番のストレスだった。
心細くなっても、困ったことがあっても、日本人の誰とも連絡がスムーズにとれない。
SNSで情報を得ることも、好きなものに触れることもできない。
そんな私の心の拠り所が、ダウンロードしておいた音楽、アニメや映画だった。
前にも書いたけれど、この環境のおかげで魔女の宅急便で号泣できる体質になった。
ガーナ人に負けじと流したJ-POP
ガーナ人は音楽を爆音で流す。
クラブかな?と思うレベルで、時には気持ちのよい歌声も聞こえてくる。
私も部屋にいるときは負けじとJ-POPを流し続けていた。
魔女の宅急便と同じくらい、いや、それ以上にリピートしていたのが、Mrs.GREEN APPLEの「僕のこと」。
1曲目、その日の終わり、嫌なことがあって帰ってきたとき。
私のひとさし指は、真っ先にこの曲の再生ボタンを押した。
歌詞の頭から、私がガーナで生きていて感じたことがそのまんまなんだ。
数多のトラブルを引いていた私は、ガーナの人たちが怖くて仕方ない時期が長かった。
自分がマイノリティになったことも怖かったとも思う。
ガーナの人たちと仲良くやっている同期を見ては落ち込んだ。
みんなも色々な葛藤や困難があったと思う。
それでもそれを見せない強さと優しさが羨ましかった。
生きているだけで必死だったから、毎晩とろけるように眠りについた。
何かが好転することを期待しながらベッドに入り、新しい1日の朝には同じ期待をしていた。
あの頃の私、すごく人間くさく生きてたなあ。
日本に帰ってきて再び聞くと
歌詞の後半は、日本に帰ってきてからより一層味わい深いものとなった。
今でも頻繁に、私のひとさし指はこの曲の再生ボタンに向かっていく。
協力隊のやってることは報われないことが多いと思う。
実際に「協力隊って意味あるの?」という声は、隊員内外問わずよく聞く。
3ヶ月しかいなかった私の活動なんて、意味は皆無だと思う。
ガーナには何も残っていないかもしれないけれど、私の中にはガーナで生きた時間は、しっかりと自分の一部になっている。
あの時間があったからこそ、この春から新しいスタートを切ることができた。
あまりに短くてなかったことにしたかった3ヶ月の隊員生活も、口にするのもしんどかったトラブルも、今では自分が提供できる話題の一つ。
色々な場所で自分の強みとして活用している。
ガーナが好きかと言われれば、嫌いじゃないとしか答えられない。
それは帰国直後から今でも変わらない。
それでもあの時間は、私の人生の中で価値の高いものだと言い切れる。
言い切れるようになった。
僕と君とでは何が違う?
歌詞の通り問われたら、全部違うよ!と言いたくなる。
日本人の私とガーナで出会った人々。
見た目も、考え方も、価値観も、生活も、言葉も、嗜好も、大切にすることも、全くもって違うことばっかりだ。
そんなの分かっていたつもりだったけれど、あの頃の私は、本当は分かっていなかったと思う。
違うから歩み寄れなかったり、すれ違ったりするのは当たり前なのに。
まるで自分の不運のように捉えていた
ただ、人間という共通点だけで笑い合ったり、家族と言い合ったりもできるのだ。
そんな奇跡的な現実を自分の体全部で味わったことは、私の人生における大きな学びだ。
自分の送りたい人生、やりたいこと。
それに向けてこの春から再スタートを切りました。
愛おしいと思えるようになった過去と共存しながら、今をしっかりと生きていきたいと思います。
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