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ソルトレイク市を恐怖に陥れた狼男伝説

2000年代初頭、ユタ州のソルトレイク市では、都市部で人狼のような生き物が目撃されたという報告が相次ぎ、地元住民を恐怖に陥れた。この謎の生物は「ソルトレイク・ウルフマン」と呼ばれ、その存在は都市伝説として語り継がれるようになった。今回は、当時の新聞記事を掘り起こし、この奇妙な事件とそれに巻き込まれた人々の物語を紹介する。


狼男目撃の始まり

2002年10月、ソルトレイク市の郊外にあるアパートで、最初の目撃情報がもたらされた。夜遅く、仕事帰りの女性がアパートの駐車場に車を停めたとき、人影がサッと動くのを見た。人影はすぐに隣の建物の影に溶け込み、姿を消した。女性が不審に思い、懐中電灯で辺りを見回すと、建物のそばに何か毛むくじゃらの生き物がうずくまっているのが見えた。女性は恐怖のあまり叫び声を上げ、アパートの住民たちが集まってきた。しかし、生き物はすでに姿を消していた。

その生き物の特徴は、目撃者たちの間で少しずつ異なっていた。犬のような顔立ちで四足歩行だった、人間に似ていたが毛深くて爪が長く伸びていた、二足歩行で直立していた、などだ。しかし共通していたのは、その不気味な姿と、目が合った人のあとを追うようにして近づいてくる行動だった。

新聞による報道

地元の新聞「ソルトレイク・トリビューン」はこの奇妙な目撃情報をすぐに拾い上げた。当初は、ハロウィンを前にした心霊特集の一環として、ユーモアを交えた軽いトーンで報じられた。しかし、同様の目撃情報が次々と寄せられ、事態は思わぬ方向へと展開していく。

「月夜の狼男にご用心?」という見出しが付けられ、記事はソルトレイク・ウルフマンについて詳しく報じた。目撃者の証言や、専門家による分析が掲載され、この謎の生物の正体に迫ろうとした。生物学者は「おそらく目撃されたのは大きな野犬かコヨーテだろう。しかし、二足歩行をしていたという証言もあり、謎は深まるばかりだ」とコメントした。

一方、超常現象研究家たちは、ソルトレイク市で人狼のような生き物が目撃されたことに興味を示した。彼らはこの生き物を「ライカンスロピー」(人狼症)として分類し、超常現象の観点から調査を開始した。ライカンスロピーは、古代ギリシャ時代から伝わる概念で、人間が狼に変身するというものだ。研究家たちは、ソルトレイク・ウルフマンが超常現象である可能性を否定しなかった。

恐怖の拡大

新聞の記事が掲載されると、ソルトレイク市民の反応は様々だった。好奇心からウルフマンを探しに行く若者たちが現れ、ウルフマン・ツアーが企画されるほどだった。しかし、大多数の市民は不安と恐怖を募らせていった。子供たちは夜遅くまで外で遊べなくなり、ペットが行方不明になる事件も発生した。

市当局は事態を重く見て、警察のパトロールを強化した。ウルフマン捜索のための特別チームを結成し、目撃情報に沿って罠を仕掛けたり、熱感応カメラを設置したりした。しかし、ウルフマンはなかなか姿を見せず、決定的な証拠は得られなかった。

決定的証拠?

ソルトレイク・ウルフマン騒動がピークに達したのは、2003年1月のある夜のことだった。深夜、市内の高速道路でウルフマンが目撃され、複数のドライバーから通報が入った。高速道路は一時閉鎖され、警察官が現場に駆けつけた。現場に到着した警察官は、信じられない光景を目の当たりにした。

高速道路を四足歩行で疾走する毛むくじゃらの生物。その姿はまさに人狼そのものだった。警察官がパトカーから降り、その生き物に近づこうとしたとき、生き物は高速道路の柵を飛び越え、闇夜の中に消えてしまった。この出来事は複数の警察官によって目撃され、ソルトレイク・ウルフマンの存在を裏付ける決定的な証拠として扱われた。

ソルトレイク・ウルフマンの正体

ウルフマン騒動は数か月にわたって続き、市民を恐怖と混乱に陥れた。しかし、やがて目撃情報は減少し、ウルフマンは姿を消したかのように思われた。

ソルトレイク・トリビューン紙は、ウルフマン騒動の真相に迫るべく、最後の特集記事を掲載した。そこでは、これまでの目撃情報や証言、専門家の意見がまとめられていた。そして、ウルフマンの正体について、いくつかの仮説が立てられた。

最初の仮説は、やはり大型の野犬やコヨーテの存在だった。ソルトレイク市は山々に囲まれており、野生動物が市街地まで下りてくることは珍しくなかった。目撃されたウルフマンの中には、明らかに犬やコヨーテのような特徴を持つものもあった。おそらく、一部の野犬やコヨーテが都市部に適応し、大きく成長したものがウルフマンとして目撃されたのだろうと推測された。

二つ目の仮説は、人間による偽装だった。人間が動物の皮をかぶり、四足歩行で移動することで、ウルフマンの姿を作り出していたというものだ。この仮説を裏付けるように、ウルフマンの目撃情報が減ったのと同じ頃に、市内で動物虐待事件が発生していた。警察は関連性を疑い、捜査を行ったが、決定的な証拠は見つからなかった。

最後の仮説は、超常現象や都市伝説の可能性だった。ライカンスロピーや人狼伝説は、世界各地で長い間語り継がれてきた。ソルトレイク・ウルフマンも、こうした伝説の一部だったのではないか、という見方だ。この仮説は証明も否定もできないものだったが、ソルトレイク市民の想像力をかき立てた。

エピローグ

ソルトレイク・ウルフマンは、2000年代初頭の数年間、ソルトレイク市の市民を驚かせ、混乱させ、魅了した。その存在は、目撃者の心に今でも鮮明に残っている。決定的な証拠は見つからなかったが、ウルフマンが都市伝説として語り継がれるには十分だった。

この事件は、都市部で起きた奇妙な現象として、新聞の歴史にも刻まれた。ソルトレイク・トリビューン紙は、この事件を通して、報道機関としての役割と責任、そして超常現象に対する市民の関心を目の当たりにした。

ソルトレイク・ウルフマン。それは、都市伝説なのか、本当に存在した謎の生物なのか。その真相は今もって不明のままである。

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