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IJOOZ(アイジュース)は成功できるか?

近所のスーパーの入口付近に、
突如ド派手な自動販売機が登場しました。
シンガポールからやって来たという
「IJOOZ(アイジュース)」
オレンジジュース生搾り自販機です。

遠くからも目立つオレンジ色のフードを被った自販機です。
正面から見た自販機はこんな感じ。
本物のオレンジが上の方に格納されているのが見えます。

ジュース1杯に、オレンジが丸ごと4個分
使われているとのこと。
「45秒で即時生搾り」とある通り、
自販機で注文するとその場で圧搾し、
45秒ほど待った後に取出口から
受け取ることになります。

現金を入れたところ、いきなり準備(調理)開始!
「注文」あるいは「スタート」のボタンはありませんでした。
現金以外にもQRコード決済に対応しています。

1杯が350円。
さて、これが高いか安いか、
買う人が多いのか少ないのか、
色々と突っ込みたいポイントが
ありますが、順を追って考えて
行きましょう。

ビジネスモデル的に、
自販機で生搾りオレンジジュースを
展開することが、どの程度成功の
見込みを持っているのか

簡易シミュレーションで確認する
ことが必須です。

昨年の7月、丁度半年前にこちらの
プレスリリースが出ていました。
これによると、4月に上陸した後に
関東各地で20台ほど展開中とのこと。

3ヶ月で累計6万杯を達成したとの
記述がリリースの中にありました。
単純計算で、60,000÷3ヶ月÷20台を
すると1,000杯

計算しやすいので、この1台1ヶ月あたり
1,000杯を基準に
してみましょう。

1杯350円ですから、1ヶ月の売上
350×1,000=350,000円!
これで、固定費と変動費をどの程度
カバーできるか
が焦点です。

まず固定費として、自販機1台の
お値段がいくらかかっているか、
気になるところですよね。
通常の飲料用自販機は、ネットで
見る限り100万円前後しそうです。
通常のものとは異なり、かなり特殊な
仕様
ですから、仮に3倍の300万円程度
かかると想定しましょう。

耐用年数一般に10年とされている
ようですが、オレンジを搾るという
特殊作業
もありますので、通常の
自販機とは違うはず。
ということでこれまた
仮に半分の5年を想定します。

300万円を60か月償却とすると、
1ヶ月当たり50,000円
1杯あたりで50円かかる計算です。
(厳密な金利計算などは無視。)

これ以外に地代もかかるはずですが、
拠点によって大分ばらつきもあるため、
一旦ここは無視しておきます。

続いて、変動費の方はどの程度かかる
のでしょうか?
オレンジを4個その場で絞っています
ので、原材料費として最低オレンジ
4個分
はかかります。

この価格が、実は曲者。
その辺のスーパーで売られている価格
だと、1個あたり100円程度は平気で
かかりそうですが、当然ながらずっと
安値で仕入可能でないと、この商売は
成り立ちません

仮に1個50円程度として、
4個ですから200円としましょう。

ここに、紙コップやふた(シール)と
いった資材費用
も追加されます。
これはせいぜい1個あたり10円程度に
収まるでしょう。

このように、紙コップにプラスチックのシーリングがされるので、こぼれる心配はありません。

更に、機械のメンテナンス費用、
オレンジを補充するのにかかる
人件費
といったものもかかります。
ここは相当複雑なシミュレーションが
本来は必要ですが、私なりに簡易の
見込みを立てて、1個あたり30円
収まるだろうとはじき出しました。

オレンジが外から見えます。
1台に常時何個入っているのか分かりませんが、仮に200個入っていたら50杯提供可能です。
1ヶ月に1000杯出そうと思ったら、20回以上補充が必要ですね。

さぁ、合計するといくらか?
固定費の按分で50円、
変動費で200円+10円+30円=240円、
合計すると290円です。
となると、粗利は60円

悪くないと思えるかもしれませんが、
正直なところこのビジネスは厳しい!
というのが私の感想です。

そもそも、オレンジの価格があまりに
不安定で、ちょっと不作になったり
しただけで市場価格が乱高下するのは
目に見えているのですよね。

上記では1個50円、4個で200円との
見込みにしましたが、これが仮に
1.5倍になると、コストが+100円で
一瞬にして赤字転落
です。

より本質的な観点では、
「生搾りオレンジジュース」
人気度合いが見えません。
「生搾り」というだけで、
誰もが群がるほどの「価値」を
感じるかというと、
疑問を禁じ得ない
のです。

もちろん美味しかったのですが、毎日のようにリピートする人がどれだけいるかというと
かなり疑問符が付きます。

スタバのコーヒーのように、
中毒性があるとか、
店員さんとのやり取りに癒されるとか、
居心地の良い空間を楽しめる、
といった様々な付加価値を重層的に
提供できるわけでもない
でしょう。

そうなると、1台あたり毎月1000杯を
コンスタントに売り続けるという仮定が
崩れる
ような気がするのです。

公式Instagramにあったリンクから
設置場所一覧とやらをクリックすると、
2024年2月の現時点では、
169台の稼働が確認できました。

リリースには、昨年末までに1000台の
設置を目指している
とありましたので、
相当に苦戦していることは事実です。

ということで、私の勝手な分析では、
先行きがなかなか厳しそうだという
結論になってしまいました。

何かしら起死回生の一手はあるのか、
この後の行方をしばらくは注視して
おきたいと思います。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。