見出し画像

「好き」で「得意」な結末とは?

面白い物語の可能性を探る

物語の結末を8パターンに分類することに何の意味があるのかと言うと、一番大きいメリットは自作の物語を「客観視」できることだと思います。

人間は慣習の虜囚です。

多くの人は自分が閉じ込められている「主観」の枠組みになかなか気づきません。ケアレスミスを起こすのは焦っている時ですが、「自分は今焦っているな」と気づくことはあまりありません。

そんな時には他人の気持ちになって自分を見つめ直すのが有効です。

自分の物語の結末の選択肢を、他人の視線で冷静に分析するのです。

そこには思いがけない可能性が潜んでいることがよくあります。

結末を8パターンに分けると、考えたこともないような展開に出会ってハッとしたり、「やっぱりこれではダメだ」ときっぱり諦めたりできるようになります。

「物語の三要素が導く8パターンの結末」では、8パターンの結末を作るコツとそのためのプロンプトをご紹介しました。

もちろん時間と頭をしっかり使えばプロンプトなど必要ありませんが、実際、既に生成AIがそこにあるのですから、その力を利用するのは現実的な選択だと思います。

自分でやってみれば判りますが、これはけっこう大変な作業です。私が自分だけで8パターンの結末あらすじを作った時は4時間かかりました。(そしてとても疲れました)

ちなみに今回はMicrosoftのCopilotを使って「赤ずきんの8つの結末を作ってみました。全部作るのにかかった時間は1分か2分か、まあ大体そのくらいでした。

どちらを選ぼうともあなたの自由です。

すべての行程を自分の頭だけでやり通す。それもまた生成AI時代のストーリーテリングのスタイルの一つだと思います。

いずれにせよ、私たちが物語創作に使える時間は有限です。まずは手を動かさないと、あっという間に人生が終わってしまいます。

それでは、探求の旅を続けましょう。どんな結末が赤ずきんを待ち構えているのでしょうか?

<赤ずきんのあらすじ>

赤ずきんと呼ばれる女の子がいた。彼女はワインを届けるお使いを頼まれて森の向こうのおばあさんの家へと向かうが、その途中で一匹の狼に遭い、唆されて道草をする。

狼は先回りをしておばあさんの家へ行き、家にいたおばあさんを食べてしまう。そしておばあさんの姿に成り代わり、赤ずきんが来るのを待つ。

赤ずきんがおばあさんの家に到着。おばあさんに化けていた狼に赤ずきんは食べられてしまう。

満腹になった狼が寝入っていたところを通りがかった猟師が気付き、狼の腹の中から二人を助け出す。

赤ずきんは言いつけを守らなかった自分を悔い、反省していい子になる。

***

以下は、【問題】、【敵】、【目的】の3要素の組み合わせによる8つの結末のあらすじです。それぞれの『結末』には、その組み合わせを示すラベルを付けています。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

赤ずきんの8つの結末

<赤ずきんの3つの要素>

赤ずきんが解決すべき【問題】=おばあさんにワインを届ける

赤ずきんが倒すべき【敵】=狼

赤ずきんが達成したい【目的】=おばあさんと二人で生還する

<ラベル>

結末は、主人公が『問題』を解決するか否か、『敵』を倒すか否か、『目的』を遂げるか否かの組み合わせによって8種類のタイプに分類(ラベリング)できます。

解決したり打倒したり達成する場合は + (プラス)、しない場合は - (マイナス)と表記します。

例えば、「 +-+ (プラス・マイナス・プラス)」というラベルは、主人公が『問題』を解決し、『敵』に敗れ、『目的』を遂げるという意味です。

このようにして、8パターンの結末ができあがります。

1.【問題】解決、【敵】倒す、【目的】達成

 (ラベル:+ + +)

赤ずきんはおばあさんの家に着く前に、狼の罠に気づいて逃げ出す。森の中で猟師に助けられ、一緒におばあさんの家へ向かう。狼はおばあさんを食べようとしたが、猟師に撃たれて倒される。おばあさんは無事に助かり、赤ずきんはお使いのワインを渡す。二人は狼の襲撃を乗り越えて生還する。

2.【問題】解決、【敵】倒す、【目的】達成しない

 (ラベル:+ + -)

赤ずきんはおばあさんの家に着く前に、狼の罠に気づいて逃げ出す。森の中で猟師に助けられ、一緒におばあさんの家へ向かう。狼はおばあさんを食べようとしたが、猟師に撃たれて倒される。しかし、おばあさんは狼に食べられてしまっていた。赤ずきんはおばあさんの死を悲しみ、お使いのワインを墓に供える。

3.【問題】解決、【敵】倒さない、【目的】達成

 (ラベル:+ - +)

赤ずきんはおばあさんの家に着く前に、狼の罠に気づいて逃げ出す。森の中で猟師に助けられ、一緒におばあさんの家へ向かう。狼はおばあさんを食べようとしたが、おばあさんは狼に抵抗して逃げることができた。おばあさんと赤ずきんは再会を喜び、お使いのワインを渡す。狼は怒って森に帰っていく。

4.【問題】解決、【敵】倒さない、【目的】達成しない

 (ラベル:+ - -)

赤ずきんはおばあさんの家に着く前に、狼の罠に気づいて逃げ出す。森の中で猟師に助けられ、一緒におばあさんの家へ向かう。狼はおばあさんを食べようとしたが、おばあさんは狼に抵抗して逃げることができた。しかし、おばあさんは狼に噛まれて重傷を負っていた。赤ずきんはおばあさんの手を握りお使いのワインを渡すが、おばあさんは赤ずきんに感謝の言葉を残して息を引き取る。

5.【問題】解決しない、【敵】倒す、【目的】達成

 (ラベル:- + +)

赤ずきんは狼に唆されて道草をする。狼は先回りをしておばあさんの家へ行き、家にいたおばあさんを食べてしまう。そしておばあさんの姿に成り代わり、赤ずきんが来るのを待つ。赤ずきんがおばあさんの家に到着。おばあさんに化けていた狼に赤ずきんは食べられてしまう。満腹になった狼が寝入っていたところを通りがかった猟師が気付き、狼の腹の中から二人を助け出す。狼は猟師に撃たれて倒される。赤ずきんとおばあさんは奇跡的に生還するが、お使いのワインは狼に飲まれてしまっていた。

6.【問題】解決しない、【敵】倒す、【目的】達成しない

 (ラベル:- + -)

赤ずきんは狼に唆されて道草をする。狼は先回りをしておばあさんの家へ行き、家にいたおばあさんを食べてしまう。そしておばあさんの姿に成り代わり、赤ずきんが来るのを待つ。赤ずきんがおばあさんの家に到着。おばあさんに化けていた狼に赤ずきんは食べられてしまう。満腹になった狼が寝入っていたところを通りがかった猟師が気付き、狼の腹の中から赤ずきんを助け出す。しかし、おばあさんは狼に食べられてしまっていた。狼は猟師に撃たれて倒される。赤ずきんはおばあさんの死とお使いの失敗を悔やむ。

7.【問題】解決しない、【敵】倒さない、【目的】達成

 (ラベル:- - +)

赤ずきんは狼に唆されて道草をする。狼は先回りをしておばあさんの家へ行き、家にいたおばあさんを食べてしまう。そしておばあさんの姿に成り代わり、赤ずきんが来るのを待つ。赤ずきんがおばあさんの家に到着。おばあさんに化けていた狼に赤ずきんは食べられてしまう。満腹になった狼が寝入っていたところを通りがかった猟師が気付くが、狼に恐れをなして逃げてしまう。狼はそのまま眠り続ける。赤ずきんとおばあさんは狼の腹の中で生きていることに気づき、お使いのワインの瓶を割って狼の腹を切り開く。二人は狼の腹から脱出し、生還する。

8.【問題】解決しない、【敵】倒さない、【目的】達成しない

 (ラベル:- - -)

赤ずきんは狼に唆されて道草をする。狼は先回りをしておばあさんの家へ行き、家にいたおばあさんを食べてしまう。そしておばあさんの姿に成り代わり、赤ずきんが来るのを待つ。赤ずきんがおばあさんの家に到着。おばあさんに化けていた狼に赤ずきんは食べられてしまう。満腹になった狼が寝入っていたところを通りがかった猟師が気付くが、狼に恐れをなして逃げてしまう。狼はそのまま眠り続ける。赤ずきんとおばあさんは狼の腹の中で死んでしまう。お使いのワインは狼に飲まれてしまっていた。

***

以上が8つの結末のあらすじです。吟味して好きなタイプを選んで、800文字程度に膨らませてみましょう。

全然悩まずにするすると作れたら、それはあなたの「得意」なタイプでもあります。

好きなんだけどうまく作れない場合は、それほど得意ではないということでしょう。

私なら、どちらを優先するかといえば「得意」なほうです。

得意なものを好きになるのはたやすいことですが、逆は苦労するからです。

それでも「好き」なものを書きたい場合は、趣味として楽しんでください。

もしも「好き」で「得意」なパターンが見つかったなら、それはあなたの強い武器になり得ます。次は2000文字、さらに4000文字と、どんどん掘り下げていきましょう!

そして、他の物語でも試してみてください。

例えばここでタイプ7の「赤ずきんの結末」を選んで……

【赤ずきん】を「世界最強の子どもスパイ」に。

【狼】を「米国諜報部CIA」に。

【ワイン】を「秘密兵器」に入れ替えてみましょう。

世界最強の子どもスパイはCIAに唆されて道草をする。CIAは先回りをしておばあさんの家へ行き、家にいたおばあさんを逮捕してしまう。そしておばあさんの姿に成り代わり、子どもスパイが来るのを待つ。子どもスパイがおばあさんの家に到着。おばあさんに化けていたCIAに子どもスパイは捕まってしまう。しかしCIAは子どもスパイの隠し持っていた催眠ガスを食らって寝入ってしまう。そこに子どもスパイの命を狙っている伝説のスパイハンターが急襲をかけるが、眠りこける沢山のCIAを見て恐れをなして逃げてしまう。子どもスパイとおばあさんはCIAだらけの部屋の中から、秘密兵器を使って逃げ出す。こうして二人はCIAの罠から脱出し、生還するのだった。

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑

子どもスパイはどんな道草を食ったのか? おばあさんの正体は何者なのか? 秘密兵器とはどんなものか? スパイハンターは何を企んでいたのか? 

癖の強めな設定にワクワク感が止まりません。おそらくこれが私の好きで得意なタイプの設定と結末なのでしょう。

特定のパターンで連想が続くようであれば、それがあなたの黄金の戦略が詰まった宝箱です。

何かのストーリーを書いていて展開に困った時は、すかさずそのパターンに持ち込むようにしましょう。きっと突破口が見つかりますよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?