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香ばしい人間観察vol.4元非モテミソジニー

東京以外の首都圏又は地方の政令指定都市で生まれ育ったので生粋の田舎者のような純朴さはなく公務員や教師のような意識が高く圧が強い親のもと貧困でも裕福でもない保守的な家庭で抑圧されて育った。何の変哲もない地元の公立小学校に入学し女の子なんて一切意識していなかったはずなのにイケメンで運動神経が良い奴がキャーキャー言われているのに対し自分は何故かキモがられているという事実に薄っすら気付き心にササクレが出来る。それとなく母親に相談してみたものの「貴方はお勉強を頑張りなさい」と言われるし母親が唯一褒めてくれるのはテストが満点だった時だけなのでとりあえずテストで良い点を取り続けていたら中学受験を勧められたが中学でモテる夢を捨てきれず男しかいない男子校なんて絶対嫌だと思い地元の公立進学校を目指す。顔も身長も運動神経も普通で面白い発言ができるわけでもなく底抜けの明るさがあるわけでもなく体育のドッヂボールで好きな女の子にわざとボールを当てるなどの関わり合いしか出来ないまま小学校6年間を終えようとしたところ照れからくる些細な揶揄いでクラスで一番可愛い女の子を泣かせてしまい女子全員からシカトされるという最悪のラストを飾る。女って怖い女って面倒臭いという思いを抱えたまま中学に入学すると当たり前にイケメンで運動神経が良い奴がモテを加速させていき当たり前に自分はキモがられている現実に打ちひしがれる。そんな現実を打破すべく頑張ってモテそうな運動部に入部してみたもののフィジカルも弱く足も遅いため活躍することはなく球拾いに徹していたら上級生からボールの標的にされるなどの緩いイジメを受けたため半年で退部して帰宅部となる。退部したことで陽キャとの国交が断絶してしまうことを危惧しクラスの運動部から弄られることでなんとか陰キャに堕ちることなく居場所を確保することに成功するが女子とは一言も言葉を交わすことなく中学3年間を終える。高校デビューを目論みコンビニでのワックスを買って髪の毛をセットしてみたものの運動不足とストレスが原因でできた思春期ニキビまみれの顔でモテるわけもなく顔と身長という遺伝子ガチャを恨むことしかできず唯一自分が勝てるのは学力だけということに気付き自分より学力の低い人間たちを見下しながら大学デビューを夢見る。イケメンたちがカラオケで年上の女に馬乗りにされて順調に童貞を卒業していくのを小耳に挟みつつ右手で鉛筆を握り左手で陰茎を握り受験勉強に励み続けて晴れて志望大学に合格する。大学デビューを成功させるために自宅の風呂場でセルフで茶髪に染めあげリア充を夢見て有名テニサーに加入を試みるもなぜか門前払いされてしまったが微妙なオールラウンドサークルの新歓に紛れ込むことに成功。斜に構える癖が抜けきれず照れもありどうやって女の子と話したら良いかわからないまま居酒屋の隅っこで習ったばかりのコールを口パクしていたら続々と女の子が酔っ払って正気を失っていき男に持ち帰られていく様を目の当たりにして酒の偉大さを思い知る。大学名と一人暮らしの部屋と酒という三種の神器を手に入れたもののそもそも女の子と飲むというシチュエーションに恵まれず痺れをきらして祖父母からもらった入学祝いを握りしめて風Xで童貞を卒業し「金で女は買える」ということを学ぶ。そんな苦い思い出ばかりの学生時代を経て血眼になって金とステータスを得た現在の趣味はラウンジ。銀座のクラブは膨大な金をかけてもやれない玄人ばかりだし歌舞伎町のキャバ嬢はなんか怖いし音が出る方のクラブは金も女も消えて何も残らないがラウンジは素人に毛が生えたような女ばかりで高いシャンパンを入れなくても小金程度で自分の隣についてくれる。過去自分のことをキモいと言っていた女たちが、過去自分の存在を無視してきた女たちが、過去自分に見向きもせずに目の前で持ち帰られていった女たちが、今隣に座って笑顔でニコニコと話を聞いてくれて自分に擦り寄ってくる快感。大学時代に出来なかった爆飲みを今金を払って再現して遅く来た青春を味わっているのだ。どんなに横柄な態度をとっても、酔った女のスカートを捲っても、尻を撫でても、胸を鷲掴みにしても、酒を強要しても、何をしたって金を払ってさえいれば咎められないし笑顔で流してくれる無法地帯。クラスで2番目か3番目に可愛いレベルの手の届かなかった女たちが今や自分の支配下に堕ちていくこの状況がたまらないと思うものの金に靡く女たちを見るたびに女が嫌いになっていく。どうせ自分に寄ってくる女は全員金目当て。金を払うから隣にいてくれるし、金を払うから笑顔で話を聞いてくれるし、金を払うから一緒にお酒を飲んでくれるし、金を払うからセックスをしてくれる。結局誰からも本気で愛されたことはないし愛したこともないという悲しい現実に気付く。学生時代にモテなかったことが拗らせの原因だと思っていたが万人にモテなくとも誰かたった一人でも良いから自分のことを深く愛してくれる人がいたらこんなに拗らせることはなかったはず。親にもっと愛して欲しかった本当の友達が欲しかったたった一人の彼女を大事にすればよかった。自分の中に渦巻く底知れぬ闇に飲み込まれるくらいなら酒に飲まれる方がマシ。昔のことは思い出したくないし何も考えたくないから嫌なことは全部酒と共に飲み込んで記憶を抹消する。可愛い女の子たちに囲まれてラウンジで飲むと一時的に心は満たされるが二日酔いの頃には心にぽっかりと穴があいてその穴を埋めるべく今夜もラウンジへ繰り出すのだった。

※スパイスを散りばめて妄想を煮詰めたフィクションであり実在の人物は存在しません

※あえて読点も打たず改行もしていません。最後まで読んでくださった方お疲れ様でした。深呼吸してくださいね


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