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書評 | 青豆ノノ(著)「相川だけはごめんです」(わたしの現代新書)



 襲撃の暴露本!!
 これだけ進んだ情報化社会の中で、青豆ノノ相川だけはごめんです」の出版は暗々裏に画策されていた!!

 今まで明るみになることがなかった、妖しい謎の女・青豆ノノのベールを本人自らが剥がした。私は、郷ひろみ「ダディ」の出版の時よりも大きな衝撃を受けた。 


 暴露本と言っても、決して私生活を曝しているわけではない。しかし、謎に包まれていた氏の執筆技法が惜しげもなく開示されていた。

 氏によれば、小説を書く際には結末は考えずに書き進むという。

「書き始めは結末などを考えておらず、筆を走らせていって筆に結末を任せる感じ」(前掲書p52、第2章「私の小説作法」より引用)

 たとえて言うなら、木彫り仏像を自らの意志をもって彫るのではなく、彫りながら予め木の中に存在する仏を見つけていくような作業だという。

 私がこの一節を読んだ時に想起したのは、夏目漱石夢十夜」の第六夜だった。

 漱石「夢十夜」の第六夜では、現代に生きる主人公が、なぜか運慶が仁王を刻んでいる場面に遭遇した様子が描写されている。漱石は主人公と同じ場所にいた野次馬の男に次のように語らせている。

なに、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の中に埋まっているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出す様なものだから決して間違う筈はない」(夏目漱石『文鳥・夢十夜』、新潮文庫p42)

 私は青豆ノノのデビュー当初から、その卓越した才能に注目していたが、氏の作品は漱石レベルの妙境にまで到達していることを知り、畏敬の念を抱くことを禁じ得なかった。


 氏の「相川だけはごめんです」は、進取の精神に富む青豆がAIを用いた新たな作品を生み出す過程が描かれている。「相川」とは、AIアシスタントの名前だが、どうやら最新のAIでさえ、青豆の縦横無尽な発想にはついていけないようだ。
 あまりにも氏の言うことを理解できない相川を氏が叩きのめす場面は痛快だ。本書の白眉だと言えよう。

 私は、ますます妖艶な文体になっていく青豆ノノにさらに釘付けになっていく。

 氏はかつてこんなことも言っている。

人を傷つけるような作品を書いてみたい」と。
 
 名作というものは、よかれあしかれ、人を傷つけるものだ。ドストエフスキー「罪と罰」を読んでトラウマにならない者などいるだろうか?

 「相川だけはごめんです」を読み、青豆ノノの文学が日本文学という枠を超えて、世界文学に名を連ねる日は近いことを私は確信した。

「相川だけはごめんです」
撮影 : 青豆ノノ(著者自撮り)


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