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エッセイあれこれ、それ、どれ?

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ふと思って、ふと書きたくなったこと。思いつきをただ書きつづっただけ。まとまりのないものを、ここにおさめようと思っています。また、他のクリエイターさんの記事で、心に刺さったものを、… もっと読む
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#短編小説

閉店セール

閉店セール

 このたび、3年弱つづけてきたnote商店を閉店する運びとなりました。
 SNSは所詮バーチャル空間。言葉の先にリアルな人がいると分かっていても、人を人として感じることができません。

 なんか虚しさがつのるばかりです。再生に向けて、試行錯誤してきましたが、状況は悪化するばかり。

 連載小説を書いても鳴かず飛ばず。
 書きたいことは書き尽くしたような気もしますし、私などいなくても代わりはほかにた

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ショートストーリー | お洒落なひと

ショートストーリー | お洒落なひと

リンスインシャンプーをした君の髪が揺れる。
「君の香りだね」と僕が言うと
「それはメリット?それともデメリット?」と訊く君はお洒落だ。
金メダルをかじってバッシングを受けた市長のように、ミルクにつけたオレオをかじっている。
「朝からお菓子なんて」と言って笑った僕に
「あら、おかしい?」と言ってにやついた君からは危ない匂い。

「これは君の香りかな?」
僕はきみの頭の匂いを嗅いで、それから耳の後ろの

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掌編小説 | リリー

掌編小説 | リリー

マキは機嫌がいい。それは誰が見ても明らかだった。中途半端に伸びた髪が肩にあたり、はねている。何度ブラシで撫で付けても直せない毛先の癖に、いつもなら苛立ちを見せるマキが、今日は鼻歌を歌っている。

ドレッサーの鏡越しにリリーと目が合うと、マキはくすくすと笑った。
「リリー。なんて顔。そんな冷めた目で見ないでよ」
マキは椅子から立ち上がり、リリーの横に座ると、彼女の髪を撫でた。
「今夜、あなたも一緒に

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短編小説 | 忙しい人

短編小説 | 忙しい人

 ある夏のことである。浜辺で寝そべりながらジュース🍹を飲んでいた。

「今日も暑いですね。しかし、浜辺でバカンス✨🌴🌺✨。いいですよね」
通りすがりの人が話しかけてきた。私はバカンスを楽しんでいるわけではなかった。

「今、とても忙しいのです。放っておいてくれますか?」
相手に失礼だと思いつつ、こんなに忙しい中、他人の邪魔に耐えきれず言った。

「すみませんでした。このあとお仕事なのでしょう

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短編 | 瑠璃色の1%

短編 | 瑠璃色の1%

 その日の勢いで、彼にすべてを曝そうとした。しかし、また、直前になっておじけづいてしまった。

「ごめんなさい。やっぱり無理です」

「そうか。それじゃ仕方がないね」

 そう言うと、彼はベッドからおり、服を着始めた。

「ごめんなさい、本当に…」

 彼は私の目を見て微笑んだ。

 体を重ねる寸前になって、勇気が持てずにそのまま何もなく…というのは今回で3回目だった。

 彼のことを信頼していな

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わたしのかばんに入れるものは•••【短編小説】

わたしのかばんに入れるものは•••【短編小説】

「仕事行ってくるね~。朝ご飯は、用意してあるから、レンジであっためて食べて~。」
リビングから母の声が聞こえ、目を覚ます。

「わかった~。気を付けて行ってきてね」
母の声掛けに気づいたわたしは、寝ぼけ眼のまま、返事をした。

ベッドの中で、天井を見上げたまま、
しばし考え事をしていたら、
8時30分を迎えようとしていた。

両親は、7時30分には家を出るから、
1時間近く時間が経ってしまっている

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短編 | 早朝のLINE

短編 | 早朝のLINE

💬
おはよう
ございます

💬
おはよう
ございます

💬
なんか
あいさつが
かたくない?
もっと
くだけた感じがいいな

💬
おっはー
コケコッコー🐔

💬
なんか
私のこと
バカにしてない?
もっと普通に
あいさつ出来ないのかな?

💬
むむむ
この場合
模範解答はいかに?

💬
そんなのも
わからないの?
普通に
「おはよう」だけでいい

💬
なんか難しいね

💬
なん

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手のひらの恋【短編小説】

手のひらの恋【短編小説】

あれは、わたしが、まだ幼稚園に通っていた頃。

わたしは、身体が弱くて、幼稚園を休むことがよくあった。

休んだ日でも、
少し元気が戻ってきている日だと、
お母さんは、わたしを公園に連れて行ってくれた。

その公園では、はるくんと呼ぶ男の子とよく遊んでいた。

よく、と言っても、毎日会えていたわけではなかった。

わたしも、公園に行けない日があったし、
わたしが公園に行った日に、はるくんが公園にい

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真弓

真弓

 
 昭和三十五年  
 河原をとりまく青々とした木々のうちがわに降り注ぐ光が薄茶色の小石に反射して、あたりを一層明るく輝かせている。

 暖かい陽の光に包まれて、ちょこちょこ移動してはしゃがんで遊んでいる。
 上流から水が流れて来る。
 ちょろちょろでもなく、ざーでもない。
 丁度いい感じの流れ。
 手首まで入れなくても川底に触れられる。
 指先でかき混ぜると透明だった水がたちまち白く濁る。
 

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2から3へ飛び、3から4へ飛ぶ時、桜色🌸はどう見えるだろうか

2から3へ飛び、3から4へ飛ぶ時、桜色🌸はどう見えるだろうか

 桜色🌸に染まる季節が近づきつつある。3次元に咲く花を見ることを学んだ私は、4次元の桜色を見ることは果たして可能だろうか?

(1) 中学生・高校生の学ぶ数学

 中学生の数学では、1年生で1次方程式を、2年生で連立方程式を、3年生で2次方程式を学ぶ。
 関数は1年生は比例・反比例、2年生は1次関数、3年生は2次関数を学ぶ。
 つまり、方程式・関数に関しては基本的に平面しか扱わない。グラフは「X

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ワキ毛vsスネ毛論争 | そのコラボレーションは面白いか?

ワキ毛vsスネ毛論争 | そのコラボレーションは面白いか?

 学生時代の話である。ゼミの研究発表会のような催し物があったので、私の部屋に同じゼミの友人が来て、打ち合わせをしたことがあった。「友人」と書いたが、悩み事などをお互いに語り合えるような親密さはなかった。だから、本当は「友人」というよりも「知人」といったほうが正確である。別に仲が悪いというわけではないが、必要な話し合いをしたら、早く一人になりたいな、と思っていた。

 とりあえず「こんな感じでいこう

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短編1000文字 | Kabushiki外車の音、あるいは、株式会社のおと

短編1000文字 | Kabushiki外車の音、あるいは、株式会社のおと

 私の名は亜希子。28歳、職業AV女優。大学院博士課程を満期終了したが、ドクター論文は書かずに退学した。
 外資系金融機関への就職は決まっていたが、右から左へ金を動かすだけの仕事には興味が持てず、入社3日目で退職した。

 いつも学業成績はトップだった。特に努力したわけではないが、乾いた砂に注いだ水のように、あらゆる知識を苦もなく吸収することができた。
 私は頭で生きているわけじゃない。身体を持つ

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短編 | 赤と黒

短編 | 赤と黒

地下室に隠れている男がいた。

「お前の名前は?」

「言えぬ」

「言わないのなら撃つぞ」

「お前たちは本気で言っているのか?私の顔を見て気づかないとは愚か者めが」

「口を慎め!何様のつもりだ!撃つぞ!」

「私はこの国の王だ!」

「えっ?!」

 私たちは男の思わぬ言葉に耳を疑った。本当か?こんな砲弾の飛び交う場所に護衛の者をひとりも付けることなく隠れているなどあり得るだろうか?

 私

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📻️ 太宰治 | 満願

太宰治 | 満願

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太宰治「満願」(新潮文庫「走れメロス」所収、pp.50-52)。

「一味爽涼」(いちみそうりょう)(↓)
https://idiom-encyclopedia.com/itimisouryou/

「簡単服」(かんたんふく)(↓)
https://kotobank.jp/word/%E7%B0%A1%E5%8D%98%E6%9C%8D-470775