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青ブラ文学部・オススメ記事

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オススメの記事の紹介したり、個人企画への応募作品を収録します。 たくさんの方に読んで頂きたいと思った記事のまとめ。
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#短編小説

気になる口癖 2371文字#青ブラ文学部

気になる口癖 2371文字#青ブラ文学部

「心配いらない。投げられてるんだから大丈夫さ!」

「……………」

俺の同級生であり、野球部のマネージャーをしている雨粒 光留(あまつぶ みつる)彼の口ぐせは『投げられるんだから大丈夫』だ。

何かにつけその言葉を言う。

一投げられるんだから大丈夫一

俺を含めた部員の殆どは、何故、光留がそんな風に言うのか知らなかったが、それが光留流の励ましであると自然と認識し、それ以上誰も踏み込もうとしなか

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腐れ縁だから #青ブラ文学部

腐れ縁だから #青ブラ文学部

 法廷に入ってきた女性検察官の姿を見て、隣に立つ所長の雰囲気が一気に悪くなる。
 所長だけではない。傍聴席に座るみんなの視線が、一斉に彼女に集まるのを感じる。いつもそうだ。彼女が来ると、場内に不思議な緊張感と高揚が、一瞬の風となって吹き抜ける。

 透き通るような白い肌に、耳下で切りそろえられた黒髪が細い顎の輪郭をなぞり、見とれているうちに目尻の切れ上がった瞳に射竦められる。
 細い肢体に漆黒のス

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腐れ縁だから 1923文字#青ブラ文学部

腐れ縁だから 1923文字#青ブラ文学部

「まさ〜、今、達樹(たつき)の機嫌っていい方?悪い方?」

まただ。

「あっ?………………良いんじゃね?」

「そっか!ありがと!」

「〜〜〜っ!!!俺を介して達樹の事を聞くなーーーー!!」

何でこうなんだ。

「まあまあ、そんな怒らないで。
これでいちいち目くじら立ててたら疲れるよ?」

「疲れたとしてもっ、俺には死活問題なんだよっ!何で皆して達樹の事を俺に聞いてくんだよ!?!本人に聞けば

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腐れ縁だから

腐れ縁だから

ドスッ

「っす」
挨拶らしき吐息と同時に真由の右膝蹴りが冬馬の尾てい骨にヒットする。

「……」
ってぇ、という言葉をなんとか呑み込み、なるべくバレないように尻をさする。いやかなり痛い。これを小学生の頃から毎朝食らっている。そのうち骨折してしまうんじゃないだろうか。なんていうんだっけそういう蓄積していくやつ、そう疲労骨折。

「授業なくてラッキーだよね」
今日は年度始めの体力テストデーだ。保育園

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【短編小説】帰りたい場所、捜索願。

【短編小説】帰りたい場所、捜索願。

夕暮れ時。
日が落ちていく中、
僕はとある場所を探していた。

どうすれば、
このステキな夕暮れを、
自分の中の世界観を、
伝えることができるだろう。

言葉で言い表すことができないわけではない。

ただ、どのような表現をしても、
どこかしっくりこないのだった。

しっくりこないのは、
伝えたい内容も、表現も、
自分の世界観だけで創作されていて、
新たな視点が得られないことが
要因だと感じている。

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帰りたい場所… 1859文字#青ブラ文学部

帰りたい場所… 1859文字#青ブラ文学部

「河瀬さん、今日飲みにいきませんか?」

………また来た。

冷たくて冷酷かもしれないけれど、私は声をかけられて直ぐにそう思った。

「今日は、両親と晩御飯を食べる約束をしているんです。」

何となく浮かんだ理由を伝える。勿論、絶対に信じてもらえないというのも分かって言っている。

けれど、心の中では思ってる。

この理由を聞いて、納得して欲しいって…。

「そうなんですか?……じゃあ、仕方ないで

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【短編小説】君に届かない(#青ブラ文学部)

【短編小説】君に届かない(#青ブラ文学部)

 《約2400文字 / 目安5分》

 誕生日にミサンガを貰ったことがきっかけだった。

 部活が終わって、外はもう暗くなり始めていた。ぞろぞろと部活仲間は帰っていく。友達からは一緒に帰ろうと誘われたが、今日は一人で帰る気分だと言って断った。カッコつけんなよとバカにされたが、僕はそれでよかった。

 なぜなら、同じ部活の女子から一緒に帰ろうと誘われたからだ。

 その人のことが好きだったわけではな

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君に届かない 1375文字#青ブラ文学部

君に届かない 1375文字#青ブラ文学部

「私は、上原みたいな人…絶対に好きにはならない」

「私は、私が1番大切だから…」

彼女に言われた言葉は、今でも俺の頭と心に残ってる……。

◈◈◈
「上原〜、お前また女の子振って泣かしたんだって〜?」

大学の近くにある居酒屋に高校時代からの友人、松下と飲みに来ている。

「ふってねーよ。俺が振られたんだよ」

「でも、そのお前を振ったっていう女の子、泣いてたって言ってぜ?」

「………とにか

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[青ブラ文学部] | お題 ~5.19(日)まで

[青ブラ文学部] | お題 ~5.19(日)まで


(1)青ブラ文学部#君に届かない

「君に届かない」というお題で、小説、エッセイ、詩、楽曲、写真・イラストなどの作品を投稿してみませんか?
#青ブラ文学部募集要項


☆「#青ブラ文学部」というタグをつける。
☆応募記事のタイトルは「#君に届かない」にして下さい。
☆可能ならば、この記事を投稿記事に埋め込んでください。


小説、エッセイ、詩などの文学作品、写真・イラスト、音楽などの芸術作

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小説 | あの日の償い~永久欠番のあなたへ~

小説 | あの日の償い~永久欠番のあなたへ~

(1) 昭和55年5月

 やっと夜勤が終わった。本当に疲れた。体が痛い。とりあえず、うちに帰って、いったん寝よう。

 そういえば、今日は母の日だったな。ひと眠りしたら、カーネーションを買って久しぶりに実家に顔を見せよう。高いものはプレゼントできないけど、今までたくさん母さんには心配をかけてきたからな。

(2) 昭和62年4月

「すいません、今日は郵便局に行ってきます」

「お前、また貯金か

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永久欠番の恋 2390文字(永久欠番のあなたへ)#青ブラ文学部

永久欠番の恋 2390文字(永久欠番のあなたへ)#青ブラ文学部

女性は恋を上書きして、
男性はファイル別の保管をする。

よく、男女の恋愛においての記憶の仕方を、上の様に例える。

俺に限って言えば、その通りだな…なんて思う。

⚓⚓⚓
「はぁ〜、まだ先は長いな…」

俺はクルーズ船の船員をしている。

俺の乗るクルーズ船は半年で始発地から目的地へ行き帰ってくるクルーズ船で、その半年は休みなく働き、残りの半年は、ほぼ休暇になる。

だから、まあ、大変だけど、楽

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ただ、扉が開くのを待っている(小さなオルゴール)1185文字#青ブラ文学部

ただ、扉が開くのを待っている(小さなオルゴール)1185文字#青ブラ文学部

僕は、いつも待っている。
静かに……
そっと……
ずっと………。

◈◈◈
彼女の邪魔にはなりたくない。

それに、彼女の事を一人で思う時間も嫌いではない自分が居る。
けれど、いつも待ってばかり居る僕の姿は、友人である政時(まさとき)の目に少し余るようだ。

「いつまでこんな半端な関係でいるつもりだ?」

「中途半端って?……彼女との関係の事?」

「他に何があるってんだよ!」

「…………ないね

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[ ステキなサプライズ ]:青ブラ文学部(小さなオルゴール)

[ ステキなサプライズ ]:青ブラ文学部(小さなオルゴール)

↑↑コチラの企画に参加してみました〜
お題がステキですね😊♪

[ ステキなサプライズ ]

 実家からそんなに離れていない場所に、念願の一軒家を建てた。
 持ち家か賃貸か、そんな論争をしている動画をたまに見るが、地方では損得なしに一軒家を建てるのが、ごくごく一般的だ。
 この場所は、元々、雑木林だったところ。
 子どもの頃は、よく忍び込んで、虫をとったり秘密基地を作ったりして遊んでいた。
 そ

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