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【存在感を大事にしたい】影山多栄子 インタビュー

影山多栄子 個展『長月に集う人形たち』、開幕6日目を迎えております。
本記事では、8月29日にX スペース配信でお送りしたインタビューより、影山さんご自身のお話を中心にお届けいたします!



「存在感を大事にしたい」

ーー初見のお客様に向けて、簡単な自己紹介をお願いいたします!
影山多栄子(以下、影山):粘土や布、木、その他様々な素材を混ぜ合わせて、様々な人形を制作しています。普段は、主に創作人形の展示に参加しています。

ーーまずは、人形を作り始めたきっかけを、これまでのあゆみを交えながらお話いただけますか?
影山:子どもの頃から、人形が好きでした。そして、絵を描くことや、何かを作ることも好きでした。高校からは美術コースに進み、絵の勉強を始めました。

高校生のとき、ある写真集に出会いました。京都にある宝鏡寺(人形寺とも呼ばれている)に収められている市松人形を撮影したモノクロの写真集(『人形の寺―宝鏡寺の市松人形たち 北川幸三写真集』)です。怖くないけれど、不思議な存在感がありました。写真が持っている雰囲気に惹かれたのもあるかもしれませんが、「市松人形、いいなあ」と思い、大変印象に残りました。

その後、専門学校に進んで絵の勉強をしながら、演劇に関わるようになりました。すごく面白くて、濃密な時間を過ごしていました。ただ、体力的にも、精神的にも辛くて、続けていくことは難しい状況でした。

その後、「何かしたいなあ」と思っていた20代中頃に、“市松人形”のことを思い出しました。「ああいうのが好きだったな。作ってみたいな」と思って、市松人形制作を学べる教室を探しました。が、今のようにスムーズに教室を探せる世の中ではなく、その時は良い教室に出会うことができませんでした。
そんな時、たまたま何かの本で“おかっぱの女の子の人形”をみたんです。それは、山吉由利子さんという方が制作した人形でした。「これなら!」とぴんときて、山吉先生にすぐに電話。その後、先生の教室に通い、人形制作を学んでいきました。


ーー今影山さんが人形制作をされているのは、偶然の出会いがたくさんあったからなのですね。山吉先生のところでは、どんな人形を制作されていたのでしょうか。
影山:主に球体関節人形を作っていました。関節に球が入っていて、腕などを自在に動かすことできる人形です。主に石塑粘土を使っていました。
形自体は、今の自分のスタイルとは異なりますが、流れとしては近いものがあるかもしれません。

ーー事前のアンケートでは、宮崎優人さんという方に市松人形の制作を学んだと伺っていました。先ほどは「教室を探し出せなかった!」とおっしゃっていましたが、その後学ぶことができたんですね?
影山:山吉先生のもとで人形制作を始めた後、改めて「市松人形も作ってみたい」という気持ちが湧き上がってきたんですよね。「1回やっておかなきゃいかん!」と。再び教室を探し、宮崎先生のところに辿り着きました。

ーー念願が叶ったわけですね。実際制作をしてみて、いかがでしたか?
影山:「あ、私が作りたいのはこういうことじゃないんだ!」と気づきました!私が作りたいのは“市松さん”ではなく、高校生のときに出会った写真集で見た、“人形の存在感”なのだな、と。実際に作って、自分が大事にしたいことを自覚できたので、行って良かったなあと思います。
作業の仕方や、道具の使い方も細かく教えていただきました。胡粉、粘土の使い方。着物の縫い方など、布を使った作業の始末の仕方等々、今でも大変役に立っています。

ーーお二人の先生からの学びを経て、今の“影山スタイル”になって行ったのだと思いますが、初期の作品と、現在の作品には違いがあったりしますか?
影山:作りたいもの自体は変わっていなくて、違和感を解消しながら、だんだんに変わっていったような気がします。
最近はちょっとだけ肩の力が抜けた気がします。この春に、10年前の作品をまとめて見る機会があったのですが、「頑張って、緊張して作っているなあ!」と感じました。
「とにかくたくさん作らないと!」と、先生にも言われていましたし、たくさん作らないとわからないこともあるんですかね?

あの絵のような空間を作ってみたい

ーー影響を受けたアーティストはいますか?
影山:影響を受けているものや、好きなものがありすぎて話し切れないですが…。
今回の個展に限って言うと、私が大好きな 山口薫の『おぼろ月に輪舞する子供達』(何必館・京都現代美術館 山口薫作品室所蔵)に影響されています。
この作品を初めて知ったのは高校生のときで、実物を見たのは20代になってからです。怖さもありつつ、美しい作品…。どれか1枚、絵を貰えることになったら、この絵を貰いたいくらい好きです。今回の個展は、この絵のイメージをもとに制作を進めていきました。

ーーなぜこの絵だったのでしょう…?
影山:打ち合わせのため、ピカレスクを訪れたとき、真っ白な空間を見てこの絵を思い出したからです。「あの絵のような空間を作ることができたらいいな。そういう方向で制作ができるんじゃないか?」と思ったんです。

ーーだから“集う”なんですね。
影山:お人形がぐるっと輪になって、真っ白い光の中で何かしている、不思議な空間、という感じですね。ピカレスクHP 告知ページの言葉も、この絵のイメージをきっかけに生まれました。

■作家より 個展開催に際して

「長月に集う人形たち」に寄せて

さささささ
ととととと

どこからか あちこちから
あつまりくる

月に白く照らされた
ここで このひに
にんぎょうたち

おやおやマア
ようこそういらっしゃいました
あなたはたいへんおめずらしい…
水とタンパク質 まぼろし型ですな

さあさあサア
ようやくに とうとうに
うたとおどりの始まりは

とぎれ とぎれの
あらわれては 消え

ピカレスクHP 影山多栄子 個展告知ページより抜粋

ーー“告知ページの言葉”、よく読んでいくと「あなたはたいへんおめずらしい… 水とタンパク質 まぼろし型ですな」という言葉があります。これはもしかして、私たち人間のことでしょうか?
影山:そうなんです!この個展に来てくれた人も、このお人形たちの仲間に入って、「いらっしゃい!」と歓迎されたらいいな、と思って。
ちなみに、人間がなぜ“まぼろし型”かというと、おそらく人形たちより人間の方が早くいなくなるからです。

ーー最後に、作品制作の際にこだわっていることや、見てほしいポイントを教えてください。
影山:ひとりずつ違う人形であるように。存在感やたたずまいを大事にしています。ここにいるんだな、という生命感や、温もりを感じていただけたら嬉しいなあと思います。


影山さん、ありがとうございました!

「この個展に来てくれた人も、このお人形たちの仲間に入って、『いらっしゃい!』と歓迎されたらいいな」とおっしゃっていた影山さん。
展示室の真ん中にいると、まさに仲間に入ったような、生命に囲まれているような不思議な感覚に陥ります。
一方で、良い意味で踏み込み過ぎず、心地よい距離感を保って見守ってくれているようにも感じます。
いつも近くにいて、支え合える。生活の荒波の中で、影山さんのお人形はちょこんとそこにて居て、私たちのことをそっと肯定し続けてくれるのだろうと思います。

ちなみに、「影山さんのお宅にもお人形さんはいますか?ご自身で制作されたお人形はきっといらっしゃるだろうと思いますが…」と聞いてみたところ、「ぬいぐるみ、人の形をしたもの。市松人形や、山吉先生のお人形もいますが、1番古いのは、子どもの頃から持っているうさぎのお人形!うさこちゃんと名前をつけてずっと大事にしていて、子どもの頃は「そのうち動き出すんじゃないか」と、人工呼吸をしてみたこともありました!(笑)」とお話されていました。
影山さんの作品も、誰かの“かけがえのない存在”になることを信じております。

個展は残すところあと1週間。
お人形たちの集いに、あなたもぜひいらっしゃってください。

なお、こちらの記事では、今回の出展作品の解説をご覧いただけます!あわせてお楽しみください!

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【基本営業日時】
*営業 水 - 日・祝 11:00 - 18:00
*定休 毎週月火
*会場 Picaresque Gallery
*住所 東京都渋谷区代々木4-54-7
*電話 070-5273-9561

※2023年9月は、下記日程で18時以降も営業いたします♪
[時間]
18:00~22:00
※4日のみ 19:00~22:00

[日程]
4日(月),5日(火),13日(水),
17日(日),18日(月),19日(火)
20日(水),24日(日),27日(水)

■各展示の詳細
HP「お知らせ」よりご覧ください!
https://picaresquejpn.com/category/information/

■開催予定の展示は
HP「【随時更新】展示スケジュール」よりご覧ください!https://picaresquejpn.com/exhibition-calendar/

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影山多栄子 個展「長月に集う人形たち」

〈会期〉
2023年8月30日(水) – 9月10日(日)

〈詳細〉
https://picaresquejpn.com/taekokageyama_exhibition_2023/

〈影山多栄子 公式SNS〉
Instagram https://www.instagram.com/kageyamataeko/

X (旧 Twitter) https://twitter.com/kageyamataeko

POTOFU https://potofu.me/kagetaeko




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