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<第15回>リモートワーク時代の到来を予言した書

『ワーク・シフト~孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』 
リンダ・グラットン著 (プレジデント社)

イントロダクション~10年前に予測された2025年の世界とは?

本書は2012年に発刊された、リンダ・グラットン氏初の翻訳本です。著者は2012年当時、「今後10年で、未来に最もインパクトを与えるビジネス理論家」と賞されただけでなく、経営組織論の世界的権威であり、英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」の一人でもあります。

リンダ・グラットン氏といえば、42万部突破の『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)も有名ですので、名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

今回も、本書の「プロローグ」から、気になった部分を抜粋してみました。

"仕事は、私たちの人生に大きな影響を及ぼす要素の一つだ"
"過去二十年間の働き方や生き方の常識が多くの面で崩れようとしている"
"過去から現在へ、そして未来へと、一本の道がまっすぐ続いているわけではない"
"変化に目を閉ざすのは無謀で危険だし、過去にうまくいったやり方が未来に通用すると決めつけるのも楽天的すぎる"
"未来について考えて行動することを後回しにし、手遅れになるのは避けてほしい"

ところで、昨今の「働き方改革」は国が進めているものですが、実際どういったものか、ちゃんと知っている人はどのくらいいるのでしょう?

「働き方改革」とは、"働く方々が個々の事情に応じた、多様で柔軟な働き方を「自分」で「選択」できるようにするための改革"です。
いままで、"日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上や、就業機会の拡大、意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが不可欠"とされてきました。
しかし、これからは"働く方の置かれた事情に応じて、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがよりよい将来の展望を持てるようにすることをめざす"、これが「働き方改革」です。

おや、「??」と思っていませんか? 「いままで、何がいけなかったの?」と思った人もいたのではないでしょうか。
『ワーク・シフト』には、この「働き方改革」の本質が書かれています(しかも、10年も前に!)。
では早速、読み解いていきましょう!!

➋独断と偏見のお勧めポイント~なぜワーク・シフトの必要があるのか?

3年後に待ち受ける「時代を激変させる」五つの要因

本書は、「これから(2011年以後)いったい何が待っているのか?」という、未来予測から始まります。その予測のために、2011年に起こっていた興味深い事実に触れ、未来で重要となる五つの要因にも言及しています。
※ちなみに、本書では具体的な2025年の「あるある」ストーリーが各章に書かれており、非常にイメージしやすくなっています。

詳細は本書に譲りますが、未来を形づくる五つの要因は、以下のとおりです。
①テクノロジーの進化
②グローバル化の進展
③人口構成の変化と長寿化
④社会の変化
⑤エネルギー環境問題の深刻化

「この程度は想像できるよ」と思った人も多いのではないでしょうか。
しかし、この五つの要因が微妙に組み合わさるのが、未来です。

本書のなかから、わかりやすい事例を一つ紹介しましょう。
たとえば、「テクノロジーの進化」「グローバル化の進展」によって、1日24時間休まず、どこにいても仕事ができる未来は、すでに現実になっていませんか?
「これって、いつも仕事に追われ続けているってことでしょ? 前からそうだったけど、未来も同じなの?」と、思った人はたくさんいるのではないでしょうか。

著者は、「どうして、未来の仕事の世界で働く人たちは、ますます時間に追われるようになるのか?」について、さまざまな事実と要因から未来を予測しています。また、いつも時間に追われている未来が、「気づかないうちに積み重なる既成事実」にならないようにするには、現実を正しく理解する必要があると言います。

"本当に、朝7時から夜10時まで、電話とメールの対応をしなければいけないのか?"
"本当に、一人で慌ただしく昼食を取らなくてはいけないのか?"
"本当に、一日に何百通ものメールに目を通さなくてはいけないのか?"

このような問いに、あなたならどんな答えを出しますか?

❸深掘りの勧め~あなたは働き方を<シフト>できるか?

「幸福感」と「やりがい」を味わえるキャリアを築こう

著者は、本書のなかで、下記の三つのシフトを推奨しています。
①ゼネラリストから連続スペシャリストへ
②孤独な競争から協力して起こすイノベーションへ
③大量消費から情熱を傾けられる経験へ

詳細は本書に譲りますが、大切なことは、どうすれば「幸福感」と「やりがい」を味わえるキャリアを築くことができるのか、ということです。

著者は、「エピローグ」に三つの手紙を載せています。
それは、子どもたち、企業経営者、政治家に向けて、のものですが、これから起こる変化や近視眼的な見方に対しての「助言」と「警告」です。
日本でも最近、ダイバーシティやSDGs、働き方改革に取り組んでいる企業は多いですが、取り組みの本質は何でしょうか? 企業ポスターに使うだけでは、ダメですよね。
あなたは、働き方をどう<シフト>しますか?

◆今回の名言◆

「何かをさせようと思ったら、いちばん忙しいヤツにやらせろ。それが、事を的確にすませる方法だ」 
ナポレオン・ボナパルト(1769~1821年/フランス第一帝政の皇帝ナポレオン1世)

忙しい人のほうが、仕事は正確だったりしますね。できるビジネスパーソンは、そこが違います!

★おまけ★最近読んでいる本

『安売り王一代~私の「ドン・キホーテ」人生』 安田隆夫著 (文春新書)

著者は、あの総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」の創業者。2019年に㈱パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(旧・㈱ドンキホーテホールディングス)の取締役(非常勤)への復帰も話題になった、元祖「逆張り」経営者です。資金不足、人材不足、事件やトラブルの数々を乗り越える著者の行動力には、脱帽です。「パンチパーマ」姿での強烈な営業は、いまのインサイドセールス(電話やメール、Web会議ツールなどを活用した非対面での営業活動)時代にも通用するのでは? お勧めです。