1/30 ジュース

毎日りんごジュースを爆飲している。

ここ1か月ほど実家で暮らしているのだが、実家がりんご県として有名な事を差し引いてもちょっと信じられない量のりんごジュースがある。

だが別に困っているわけではないし、りんごが好きでりんごジュースがもっと好きな僕にとってはむしろありがたい話だ。

地元が地元な事もあって、生まれてこの方りんごジュースで困ったことが無い。というか冷蔵庫にりんごジュース以外の清涼飲料水が入ってるのを見た事がない。紙パックやら瓶やらペットボトルやら缶やらで、あの手この手の英才教育を受けてきた。喉が渇けばりんごジュースを飲むし、しょっぱいお菓子を食べたらりんごジュースを飲むし、おにぎりと一緒にりんごジュースを飲んだ事もある。食べ合わせが悪すぎて死ぬかと思った。

大学のために上京してからも、親の仕送りの中にりんごジュースがあった。最初はお米やインスタント食品のついでぐらいの立ち位置だったのが、親にお礼のメールを送る際に何が来ても「りんごジュースありがとうございました」とばかり送っていたらりんごジュースしか送ってこなくなった。僕の部屋は2階にあるのだが、毎回配達のお兄さんが重そうに段ボールいっぱいのりんごジュースを運んでくるのを見るたび、世の中には色んな仕事があるなと思う。

僕のりんごジュース贔屓がひどいせいで、母親がこのぐらいの男子はみんなりんごジュースに目が無いのではと錯覚して、社会人の兄貴の家にも大量のりんごジュースを送りつけたことがあった。結果的には飲み切れずに腐らしてしまい、挙句の果てには流しにそのまま捨ててしまったらしい。人間として尊敬できる面の多い兄ではあるが、ことりんごジュースにおいてはとんだ外道野郎だと思う。排水溝を流れたりんごジュースが不憫でならない。

りんごジュースを余らした事など人生においてただの1度も無いが、せっかく沢山もらっているのでたまに友好の証として人にあげる事がある。全員(やっぱりんご好きなんだ笑 青森笑)ぐらいのテンションで半笑いのまま受け取っていくが、こっちは毎回腹を裂く思いでプレゼントしている訳なのでもっと喜んでほしいのが本音だ。僕がりんごジュースを渡すというのは信用の証明であるわけなのだから、貰った人はその事を自信にし、家に帰ってもさっき貰ったりんごジュースの事を考えて思わず笑みをこぼしたり、何か困った時にりんごジュースのパッケージを見て明日への活力を取り戻したりしてもらわないと、りんごジュースをあげた対価として釣り合ってないので気をつけて欲しい。

食後にコーヒーを嗜む父親のように、大人になればいつか飲み物を香りで味わい始める時期が来るんだろうなと信じていたが、22歳になって大学を卒業するような年齢を迎えても一向にその兆しが現れなかった。りんごジュースは味が甘くて色が綺麗でジューシーで最高!それに引き換えコーヒーは…という思いがいまだに全然ある。

今僕がよく飲んでいるのは280mlの小さなペットボトルに入った『希望の雫』という名前のやつで、パッケージには空気に触れさせず酸化防止剤も使わない独自の製法で搾り上げた究極のりんごジュースである事が明記されている。市場に出荷されている分は僕がほとんど飲み干しているのでお店で見かける事などはまず無いと思うが、もし見かける機会があったら1度ぜひ手に取って、あの布施さんがオススメするのだから絶対に美味しいはずだという強い先入観を持ちながら、その甘美な味わいを心ゆくまで堪能して頂きたいと思う。



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