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オムライスと創作料理#04「著者5人が決まる」

私に声がかかった時点で既に『カラー版 図説 デザインの歴史』の著者3人は決まっていた。

中心となるのが暮沢剛巳先生。万博の研究等が有名な方だ。

オリンピックと万博

私に声がかかったのは暮沢先生のご提案だと思う。以前書きかけの博士論文(20世紀の家電製品が対象)を一度お見せしたことがあったのが直接の理由ではないかと思う。そういえばアメリカのスポーツエンターテイメントWWEの話をしたこともあったと記憶している。世の中何の縁が繋がるかわからないものである。

グラフィック分野の担当に山本政幸先生。フォントを擬人化した漫画の監修という珍しい仕事もされている。

となりのヘルベチカ

6月にデザイン学会で松井実(@minoru_matsui)先生と「『進化思考』批判」という発表をし、その後をtogetterにまとめていただいたのだが、その最初のツイートがこれ↓だった。

発表には無関係の山本先生の名前が無駄に露出してしまった感があり、申し訳ない気持ちである…。

建築分野の担当には天内大樹先生。建築の本も色々と書かれているが、柏木博さんと一緒に『図鑑デザイン全史』の翻訳もしているので、建築もプロダクトもいける。

図鑑デザイン全史

そしてそこに加わったのが、私と高橋裕行さん。私はプロダクトの担当、高橋さんは主に情報系の担当、という役どころだ。

高橋さんの本は博論書いている時に読んだ記憶がある。いや、授業の調べものだったかもしれない。

コミュニケーションのデザイン史

以上、5人の布陣となった。

オンラインミーティングを重ねながら、まずは各章のタイトル(扱う内容)を決めることから始まった。暮沢先生が担当しているデザイン史の授業の内容を叩き台として、特にポストモダン以降で何を扱うか、を中心にアイデア出しをしていったような感じである。

結局のところ、ポストモダン以降は年代ごとに記述するのが無理なのだと思う。世の中が複雑化していることもあるし、当時を生きていた人間が多いので、語り口は十人十色だ。そのため、特定の分野やテーマごとに数十年間の流れを記述するのが良いのではないかと考えた。

例えば私が執筆担当した「36 モビリティのデザイン」は検討段階で提案したものだ。初めの頃の覚書を見ると「多様化するトランスポーテーション」という名前を付けていて、「パイクカー/SUV/コンパクトカー/will/コンコルド/ユーロスター・新幹線/suica」といったキーワードを挙げていた。

カーデザインの世界は工業デザインの世界では花形であったのだが、特殊な世界というか、所謂デザイン史からは切り離されているようなところがあったように思う。T型フォード、戦前ドイツのフォルクスワーゲン、戦後のアメリカ車の流線形などがつまみ食いされる程度で、実際の産業における重要度(金額規模)に対して扱いが軽かったと思う。かといって、深入りするとどこまでも深入りできてしまう。そこで、とりあえず1章を当てて、全体像を描こうと思った。

他にも文房具のデザインも人気がある分野だが、あまりこの手の本には載っていない。載っているのはゼムクリップばかりだ。

そのように、従来のデザイン史の本に欠けていると私が感じていた分野を挙げて行った。

敢えて自省するならば、明確な編集方針(コンセプト)の議論をせずに内容(コンテンツ)の検討を始めてしまったのは良くなかったかもしれない。とはいえ、時間にも限りがあるので、難しいところではあった。(つづく)



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