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オムライスと創作料理#06「フライングV」

表紙のフライングVが目印!
明日発売になります。どうぞ宜しくお願いします。

デザイン史におけるギターの扱い

実は故柏木博先生もエレキギターについて2度ほど著書(元は記事)で取り上げている。アメリカのロック文化の伝播、という文脈においてである(「エレクトリック・ギター=ロックの力」『20世紀はどのようにデザインされたか』、晶文社、2002)。

そこではギブソン社の《ES(エレクトリック・スパニッシュ)-150》、《レスポール》、フェンダー社の《ブロードキャスター(テレキャスター)》、《ストラトキャスター》の4本を挙げている。ミュージシャンとしてはフレディ・キング、エリック・クラプトン、ビートルズ、プレスリーといった名が挙げられている。クラプトンが文中2か所で出てきているので柏木先生はクラプトンがお好きだったのかもしれない。

従って、デザイン史の教科書でエレキギターを扱うこと自体は私のスタンドプレーというわけではない。最早教える側にジミヘンやマイケル・シェンカーを知らない世代もいなかろう。

さらに言えば、美術出版社の『日本デザイン史』(2003)の表紙にはヤマハの《サイレントバイオリン》が載っている。デザイン史の教科書の表紙に楽器を載せるのも前例アリなのだ。

楽器のデザインというのはあまりデザイン史で語られることがないような気がする。「役に立つ」という視点が強すぎると、そもそも楽器がなくても生きていけるよね、というような結論に至りがちである。楽器に限らずエンターテイメント全般に対してそう言えてしまう。また趣味性が強過ぎるものは通史として扱いにくい、ということもあるだろう。

だが既存のデザイン史は家具、それも椅子を過度に重視し過ぎだろう、と思う。本誌でも椅子はもちろん取り上げているが、人口に膾炙しているもののこれまでのデザイン史では周縁領域と見做されているためか、あるいはあまりに大衆に浸透しているためか、ほとんど触れられることのなかった(そしておそらく経済学や商学あるいは社会学の分野では割と取り上げられているように思われる)ギターやスニーカー、テディベアやカードゲーム、ファストファッションやテーマパークなども取り上げた。これは「すべてのものは誰かがデザインしているんだよ」という私のデザイナー(実務家)としてのメッセージを込めた選択である。

形態は機能に従う?

本誌では38章「形態は機能に従う?」の中でアコースティックギターからエレクトリックギターへの変化によって可能になった形状、という観点でフライングVを取り上げた。通常のギターと異なり、座って弾こうとすると、右腿の上にうまく胴を乗せられず、股で挟むことになる。すると、ヘッド(天神)とネック(棹)が左上がりになる。

言葉では伝わらないと思うので、下の動画をご覧いただきたい。画面左のカイ・ハンセンが弾く赤いVタイプのギターを見て頂くとそれがわかるだろう(実はこれは日本が誇るESP社製のギターで色はピンクと表現されている)。対して画面右のマイケル・ヴァイカートはレスポールを「普通の持ち方」で弾いている。

お分かりいただけただろうか。フライングVは一般的には弾きにくいギターとされている。だがHR/HMしか聴かない私などは見慣れすぎていて「ごく自然」に見えるのだが、改めて見ると左手の手首の角度とか無理があるようにも見える。

ちなみに「HR/HM」と書いたが、英語圏で正しい書き方か自信がなかったので本誌内では「ハードロック/ヘヴィメタル」と書いた。


上の動画は『YOUNG GUITAR』誌の付録DVDのもの(と思われる(違法アッp…))。ジャーマン・メタルの雄HELLOWEENの再集結前にオリジナルメンバー2人が並んでギターを奏でるというファン歓喜の映像であったことを付記しておく。


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