幽霊番地
仕事でおもむかなければいけない場所を地図で調べた。
いつも鞄に入れている小さな地図だ。
ところがその地図が小さすぎて、
その番地の隣の番地しか数字が表記されていない。
つまり、3-5-3は地図にかいてあるのだけれど、
僕が行きたい3-5-4は表記がないのだ。
とはいえ、まあこのあたりだろうなと予想はついた。
かくしてその場所へおもむいた。
見つからない。
3-5-4が見つからないのだ。
入り組んだ下町のことだ。
見落としがあるかもしれない。
注意深く探した。
が、どうしても見つからない。
近所の人に歩いても、
「さあ、そんな住所あったかしらねえ」
と要領を得ない。
仕方なくその日はあきらめた。
会社に帰ってネットで調べてみた。
きっちりと3-5-4と入力して検索した。
うん。確かにその番地は存在する。
僕がうろうろしていたすぐ近くだった。
ようくようく道を暗記した。
あの迷った路地。
あそこをこういってこういってこうだな、と。
後日、再訪した。
はたして、3-5-4は存在した。
迷った路地から、こういってこういってこう。
簡単に見つかった。
不思議だ。この道が発見できなかったなんて。
どうしてあの時は見つからなかったんだろう。
また何日かして、その番地へおもむいた。
もう場所はわかっている。
だからあえて違う道から行った。
こっちからなら、
どう考えてもあの店を曲がって曲がったところだ。
が、みつからない。
その日も3-5-4は姿を消していた。
幽霊番地。
そんな言葉が浮かんだ。
ちなみに3-5-4は、
いまだに見つかったり見失ったりを繰り返している。
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