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擬態

D君は大学時代、大きな銀杏の街路樹の幹に、
“眼”を見つけたことがあるという。

眼は二つ。
白目があり、その中心に黒目がある、いわゆる眼だ。
車の助手席にいるD君と眼が合うと、
その二つの眼はゆっくりとまばたきをした。

D君を見つめたまま動かない。
五秒ほどして、D君は視線を前に戻した。
それ以上はやばい、と思ったらしい。


その後、同じ場所を何度も通った。
しかし、
かの銀杏に眼を見つけることはないという。

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