まもるンち

お話を書くことが大好きです。カクヨムでも他の作品を連載中。そちらもご一読いただけたらと…

まもるンち

お話を書くことが大好きです。カクヨムでも他の作品を連載中。そちらもご一読いただけたらとてもとても嬉しいです。→X(Twitter)のリンクから飛べます。 ※無断転載はお断わりしています。

最近の記事

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恐怖の手触りをさぐる ~このコンテンツの主旨について~

怖い話が好きだ。 人に聞かせるのも、人から聞くのも好き。 ホラー小説もホラーマンガも読む。ホラー映画も観る。 では怖がるのが好きかというと、別にそうでもない。 僕はものすごく怖がりだ。 だからこそ、恐怖という感情の正体を暴いてしまいたいのかもしれない。 恐怖の正体を知りたい。 だから少しでも多くの恐怖に触れるため、色々な人から話を聞いた。 その人自身が経験した怖い出来事について。 その人の友人が経験した不思議な出来事について。 ここにはそういったお話を、できるだけ脚色しな

    • グラウンド その2

      N実さんは目を凝らした。 「それは血まみれの赤ちゃんでした」 女性が抱いた赤ん坊からは生々しく鮮血が滴っており、 彼女の胸から腹にかけて真っ赤に染めていた。 そして女性は時折顔を上げ、 また俯いては赤ん坊の身体に唇を付けてしゃぶり、 その血をすすっていた。 真っ白な顔の中で口の周りだけが異様に赤い。 「不思議ですよね。その辺りでなぜか、 あ、もう死ぬかもしれないな、ってヘンに覚悟できたんですよ」 とはいえN実さんはかさりとも落ち葉を鳴らすことなく、 ゆっくりと元来た

      • グラウンド その1

        今は女性ジャーナリストとして働くN実さん。 彼女もまた奇妙な体験をしている。 「瀬戸内海のある島に行ったんですね」 卒業旅行だ。 スキューバのサークル仲間三人と。 女だけの旅行だった。 「わりと有名な島ですよ。好きな人なら何回も訪れるような」 それはガイドブックにも載っているような島だったらしい。 観光地というほどでもないが、 集落がいくつかあり、大きなグラウンドやテニスコートもある。 古き良き漁村としての顔も持つ、 好事家ウケのするこじんまりとした島だ。 N実さんは

        • すうーっ。 その2

          その日の夜。 さっそく妖怪が出たらしい。 O君が布団でとろとろとまどろんでいた時。 すうーっ、と壁から足が出てきた。 それは辺りをうかがうような様子だったらしい。 すうーっと出てはすっと引っ込み、 またすうーっと出ては素早く引っ込み。 眠さで感覚が麻痺していたO君は、 出ては引っ込むその白い足を無感動に見ていた。 そしてまた足が出て、 今度は一気に反対側の壁に走りぬけた。 舞台のカミテから出てシモテに入るように、 それは一瞬で対面の壁に吸い込まれた。 しかし、一瞬ではあ

        • 固定された記事

        恐怖の手触りをさぐる ~このコンテンツの主旨について~

          すうーっ。 その1

          O君は今、事情があって一軒家に一人暮らししている。 その家に妖怪が出て困っていた、と言って彼はからからと笑った。 そんな話に目がないと知っていて、 なかなか僕に話してくれなかった。 どうして? と聞くと、 「もう出なくなった。だから安心して話せるかな、と思って。 だってアンタ、今出てるんだよ、というと俺んちに来るだろ?」 と言う。 専門的な知識もない人間がそんなことして、 妖怪の怒りを買うようなことになったらたまらんからな、 と付け加えた。 きっかけは大掃除だ。 一階

          すうーっ。 その1

          血も凍るような怖い話

          十五年以上前、U君が高校生の頃の話。 当時彼は大阪の北部、ほとんど京都との境辺りに住んでいた。 山裾にある古い家で、 U君の六畳間は離れに一部屋だけ孤立して建っていた。 雨がしとしと降る、ある梅雨の夜。 U君はその部屋で友達六人と四方山話に花を咲かせていた。 何組の誰それは可愛い、とかいった話が一通り終わった頃。 極めて自動的に、座は怪談話に移行した。 静かな夜だ。雨音以外は聞こえない。 場を盛り上げるため、 U君は蛍光灯を消して懐中電灯を一つつけた。 うおっ、と興奮気

          血も凍るような怖い話

          まさに変なおじさん

          昔、朝の通勤電車で変なものを見たことがある。 五十歳くらいのおじさんだ。 ドアのすぐそばに立って景色を見ている。 背広を着ていて、なんだかくたびれていた。 そのおじさんはハンチング帽を被っていた。 帽子の具合がよくなかったのか、 すっと頭から取って形を整えた。 その時に見えたのだ。 左耳のすぐ上に小さなスイッチがあった。 そいつは銀色で、五ミリくらいのツマミがある。 オンとオフが切り替えられるようになっている。 (……えっ。……えっ!?) と思って僕がもう一度目を凝

          まさに変なおじさん

          黒い絵 その3

          奥さんはT実ちゃんが目を覚まさぬよう、 足音を忍ばせて灰色の紙束と黒の紙束を抱えた。 そしてそのまま近くの公園へと向かった。 そこにはグラウンドがあるのだ。 「奥さんは不思議に思ったんです。 同じ黒で塗り潰されたたくさんの紙なのに、 T実ちゃんはどうして順番通り並べようとするんだろうって」 奥さんの思った通りだった。 黒の紙にも灰色の紙にも、 色の濃度に微妙な階調があったのだ。 なんらかの法則にのっとり、 T実ちゃんは紙に順番をつけていた。 奥さんはグラウンドに立つと、

          黒い絵 その3

          黒い絵 その2

          「ご飯もあまり食べなくなって痩せていったんです。 でも、無理に食べさせようとしても暴れて手に負えないらしくて」 落ち着かせるすべは一つ。 紙とクレヨンを与えることだ。 活発な女の子だったのに、 ほとんど何も話さなくなった。 Wさん夫婦もストレスで痩せ細った。 夫婦仲も険悪になりつつあった。 診療内科医も首をかしげるばかりだった。 ある日、T実ちゃんははたと黒クレヨンを置いた。 もう何十本使ったのかわからない。 リビングには黒く塗り潰された紙が散乱していた。 T実ちゃんはぼ

          黒い絵 その2

          黒い絵 その1

          Kさんはかつて不動産関係の仕事に就いていた。 今は全然別の仕事に就いていて、 それは元々やりたかった仕事ではないそうだが、 それでも忙しく充実した日々を送っている。 不動産関係の会社に就職するのは、 かつて彼女の夢だった。 しかし結果としてこの話を聞いた数ヵ月後、 彼女は会社を後にすることとなる。 その話を聞いたのがきっかけで不動産関係から足を洗ったわけではない。 理想と現実のギャップに苦しんだ、 とKさんは言っている。 そのギャップ部分には少なからず、 今から書く話が絡

          黒い絵 その1

          イタ電

          イタ電がかかってくるらしい。 電話をとると、Fさんが何を話しても応えない。 いわゆる無言電話だ。 しかし必ず、 『○○駅、○○駅です。次は△△駅、△△駅です』 というアナウンスがバックで流れている。 ざわついている。地下鉄のホームからかけているらしい。 電話はそこで唐突に切れる。 翌日、同じ時間にまた携帯が鳴る。 とると、また無言だ。 バックでは、 『△△駅、△△駅です。……次は□□駅、□□駅です』 というアナウンス。 その翌日もかかってくる。 依然として無言。

          追伸 その3

          ある雨の日。 G君は駅で電車待ちをしていた。 唐突に携帯が鳴った。 見たこともない番号だった。 「Sからの電話だった。名乗らなくてもすぐわかったよ」 おい、というG君の制止を無視して、S君は淡々と引継ぎをはじめた。 しばらくの間、G君は黙って聞いていた。 しかしS君が『……本当にすみませんが』と言った瞬間、G君はブチ切れた。 「てめえいい加減にしろよ‼ なに死んでまで謝ってんだよ? てめえはなあ、もう働かなくていいんだよ! もう休んでいいんだよ! 引継ぎなんか気にして

          追伸 その3

          追伸 その2

          棺の前でS君の遺影を見ても、なぜかG君の胸に悲しみの感情は湧かなかった。 「ただ、なんで気付いてやれなかったんだろ、って。……あとね」 S君が逝った前日の夜。 またも係長の携帯にS君から連絡があったようだ。 係長はその時は気付かず、 奇しくも翌朝、S君の訃報を知らせる部下からの電話で、前夜のS君からの着信の存在を知った。 着信を知らせる緑のLEDが物悲しく明滅していたのだ。 ここにいたんだよ、と言わんばかりに。 伝言は残されていなかった。 「最期まで俺に電話をしてこなか

          追伸 その2

          追伸 その1

          「最初は係長の携帯に連絡があったんだ」 G君は少し寂しそうな口調で言った。 「俺はSのこと、けっこう厳しく叱ったりしてたからね。 死んでからも、俺のとこにはかけづらかったんじゃないかな」 営業スタッフとしてS君は新卒で入社し、 その指導役としてG君が選ばれた。 S君は決して無能な人間ではなかったという。 仕事の覚えは悪くない。愛想がよく、人懐っこい。 人間的にもマメだし話好きだ。 しかし欠点もあった。 「人が良すぎるんだよ。優しいから押しが弱くなる。そこんとこはよ

          追伸 その1

          カセットテープ その2

          それから数日後。 僕とO君は馴染みのバーに行った。 店長が元ミュージシャンで、 O君や僕といった音楽をやっている若い奴らを可愛がってくれていたのだ。 その人は当然様々な音楽や楽器にも精通していて、 僕達が拙いテクニックで作った曲をよく聞いてもらっていた。 僕も新曲ができると、 そのバーでたまに弾き語りなんかさせてもらっていた。 その日、バーに持ってきたのはもちろんあのテープだ。 「店長。面白いもん持ってきましたよ」 O君はテープを指でつまんでひらひらさせると、 すぐ

          カセットテープ その2

          カセットテープ その1

          O君は今、大阪の某クラブでDJをしている。 彼とは学生時代からの付き合いだ。 ファッションに敏感で、 日本ではまだ流行っていない音楽にも詳しかった。 当時からずっとバンドをやっていたし、 そんな音楽好きが高じて今はレコード回しに精出しているのだ。 彼が当時参加していたバンドは、 当時関西アンダーグラウンドシーンではわりと名が通っていた。 O君はギターを担当していたが、 作曲はもっぱらO君の仕事であり、 おのずとサウンドコンポーザー的立場も担うようになっていた。 彼の自宅

          カセットテープ その1