PGT-A有無による累積生児獲得率の比較

論文

Kato K, et al. Comparison of 1-year cumulative live birth and perinatal outcomes following single blastocyst transfer with or without preimplantation genetic testing for aneuploidy: a propensity score-matched study. J Assist Reprod Genet. 2023 Sep 4.

要旨

反復ART不成功患者(RIF: Recurrent Implantation Failure)習慣流産(RPL: Recurrent Pregnancy Loss)の患者について、PGT-Aの有無が累積生児獲得率(CLBR: Cumulative Live Birth Rate)に影響するか検証した論文になります。PGT-Aの効果については、これまでの論文と同じように、胚移植あたりの生児獲得率はRIFやRPLのすべての年齢群でPGT-Aで有意に改善していることを報告しています。一方で、1年間の治療期間におけるCLBRは、全体として、PGT-AはRIFおよびRPLにおいて1年間の治療期間あたりのCLBRを改善するのに不十分であることが示唆されました。

方法

PGT-A群579名(RIF319名, RPL260名)とNon PGT-A群7,089名の合計7,668名の患者さんを用いて、PGT-Aの有無でのCLBRを比較・分析し、RIFやRPLの背景を持つ特定の年齢層の患者 (40歳未満, 40-42歳, 43歳以上の3グループ)に対するPGT-Aの効果について調べました。このような試験を行う際に、PGT-A群とPGT-Aを行わない群で条件を等しくする必要がありますが、その際に起きる偏りをなくすために、傾向スコアマッチングを用いて、両親の年齢、採卵回数、胚移植の回数、流産歴の有無、不妊原因などの偏りを減少させて、最終的にRIF301名, RPL240名で比較しています。PGT-Aで用いた染色体の解析手法はCGHアレイで、染色体正常胚とモザイク異常胚を移植にもちいています。患者の臨床記録を365日間調査し、PGT-Aの有無に関してCLBRを統計的に比較しました。

PGT-Aの結果

PGT-Aに使用された2,455個の胚盤胞のうち、529個(21.5%)が染色体正常と診断されました。 母体年齢ごとですと40歳未満では39.1%、40-42歳では16.6%、43歳以上では5.6%が染色体正常と診断されました。

胚移植あたりの成績(RIF)

RIFの背景を持つ患者では、PGT-A群とNon PGT-A群の比較で、
移植率が33.2% : 75.0%
妊娠率が27.2% : 73.2%
出生率が20.3% : 68.9%
流産率が25.5% : 5.8%となりました。

胚移植あたりの成績(RPL)

RPLの背景を持つ患者では、PGT-A群とNon PGT-A群の比較で、
移植率が38.7% : 71.4%
妊娠率が32.3% : 70.1%
出生率が19.2% : 64.6%
流産率が40.5% : 7.8%となりました。

PGT-A群と対照群のCLBR

RIF、RPLの背景を持つ患者ともに、採卵回数あたり、治療期間あたりのCLBRはPGT-A群とNon PGT-A群で同等でした。採卵回数が少ない、治療期間が短い場合では、Non PGT-A群の方がCLBRが高い傾向にありますが、採卵回数が多くなり、治療期間が長期化するほど、PGT-A群の方がCLBRがたかくなる傾向にあります。また胚移植あたりでは、PGT-A群の方がCLBRが有意に高い結果となりました。また母体年齢を40歳未満, 40-42歳, 43歳以上の3グループに分けたところ、40歳未満または43歳以上の女性では、治療期間あたりのCLBRはPGT-A群とNon PGT-A群で同等でした。しかし、40-42歳ではPGT-A群の方がNon PGT-A群よりもCLBRが有意に高い結果となりました。

まとめ

RIFおよびRPLの患者では、すべての年齢群においてPGT-A後に胚移植あたりの移植率、妊娠率、出生率が有意に改善し、流産率は減少しました。このデータはこれまでの報告と同じように、PGT-Aの効果をとしてよく知られています。一方で、治療期間ごとのCLBRは、RIFおよびRPL症例における40歳未満および43歳以上の女性では改善しませんでした。生児出産までの期間に関して、RIFとRPLの両方の患者群において、40歳未満の女性では染色体正常を持つ胚の割合が高く、PGT-Aの効果は大きく期待できないかもしれません。対照的に、43歳以上の高齢女性では、採卵卵子数が少なく、また胚盤胞期まで到達する胚数も少ない傾向にあります。したがって、PGT-Aすることにより移植可能な胚盤胞が見つからないこともあります。これは出産に至らない胚の移植を避けると考えることもできます。

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