PGT-Aの結果は母体年齢によってどう変化するか、86,208件ものPGT-Aのデータから

論文

Armstrong A et al. The nature of embryonic mosaicism across female age spectrum: an analysis of 21,345 preimplantation genetic testing for aneuploidy cycles. F S Rep. 2023 Apr 8;4(3):256-261.

要旨

本論文では、17,366名の患者の21,345ものサイクルから得られた、86,208個の胚のPGT-Aの結果を詳細に分析しています。PGT-A検査会社では世界最大手であるCooper surgicalが、2019-2021年にかけて、289のIVFクリニックのPGT-Aのデータを集積・分析しました。PGT-Aの結果を母体年齢ごとに分類し、またモザイク異常の発生率の影響の有無を調べています。

方法

17,366名の患者の21,345周期から得られた合計86,208個の胚について、PGT-Aを実施しました。Cooper surgicalではPGTaiSM2.0という技術を用いています。Cooper surgicalのPGT-Aの技術は、生検した細胞の前ゲノム増幅はスタンダードな方法、NGSは他の検査会社よりもデータ量を多く取っているようです。また3倍体などの倍数体の検出も可能のようです。検査結果を検査員などによる主観的な解釈ではなく、AIを用いた解釈をおこなっているようです。PGTaiSM2.0の効果についてはHPを参照していただけたらと思いますが、個人的には査読付き論文での評価も見たいと思っています。
PGT-Aの判定結果は、0-20%は正二倍体、20-40%は低レベルモザイク、40-80%は高レベルモザイク、80-100%は異数体と判定しています。またモザイク染色体異常は、segmental aneuploidy(部分異数体; 欠失や重複)とaneuploidy(異数体)と分類し、関与する染色体が2本以上の場合、Complex(複雑)としました。結果を母体年齢区分で以下のように層別化しました: <35歳、35-37歳、38-40歳、41-42歳、>42歳。

結果

母体年齢ごとのPGT-A結果の分布

全体で86,208個の胚のうち、44%が染色体正常で、40.2%が異数体(そのうち染色体1本の異常が27.9%、2本以上の染色体が異常を持つのは12.3%)でした。モザイク異常は15.8%でした。母体年齢の高齢化により、染色体正常胚の減少、および染色体異常胚の増加はこれまでの報告と一致しています。一方でモザイク異常については、低レベルモザイク、高レベルモザイクはほぼ半々で、母体年齢が<35yoで18.9%、35-37yoで17.3%、38-40yoで15.4%、41-42yoで14.0%、>42yoで8.5%と減少傾向にあります。これはモザイク異常の発生は一定ではあるけれど、母体年齢の高齢化に伴い染色体異常を持つ胚の割合が増加し、その結果、異数体+モザイク異常の異数体(2本以上)の胚が増えると考えられます。

モザイク異常胚の種類の分布

モザイク異常の結果を詳細に調べた結果、26,745個のモザイク胚のうち、39.2%がMosaic Segmental Aneuploidy(1本が33.4%で、2本以上が5.8%)で、60.9%がMosaic Aneuploidy(1本が32.8%で、2本以上が28.1%)でした。Mosaic Aneuploidyは母体年齢の高齢化に伴い割合が増加しました。一方でMosaic Segmental Aneuploidyの割合は減少するという結果でした。

まとめ

本論文のデータにはそこまで新規性は見られませんでしたが、さすがに世界最大手のPGT-A検査会社のでーただけあって、膨大な症例数でした。日本でもCooper surgicalをPGT-A検査会社に選んでいるIVFクリニックさんでは、この論文のデータが参考になり、PGT-A実施時に患者さんへの説明に使えるのではないでしょうか?欲をいえば、胚の移植率や妊娠率までデータとして出して欲しかったです。

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