見出し画像

病気コラムvol.8《わんちゃん・ねこちゃんの腎不全》

今回はわんちゃん・ねこちゃんの腎不全について紹介します。

「よく聞く病気ではあるけど、実際はどういう病気なの?」
「家族で気づくことができるサインは?」
「どんな治療方法あるの?」
といった疑問や意外と知らないことが、多い病気なのではないでしょうか。

腎臓病の多くは残念ながら発症すると、
元の状態に戻ることが難しく、進行していく病気です。
今回はそんな腎不全について少し詳しくお話します。


腎不全ってどういう病気?腎不全の原因について


腎臓は左右に一つずつあり、
体中の老廃物・毒素を尿として体外へ排出することや、
骨の代謝・血圧調節から造血まで幅広い機能を担っています。

その腎臓の機能が75%以上障害を受けた状態が「腎不全」です。
腎不全の原因はいくつかあり、動物種や年齢で少しずつ異なります。


①      先天性疾患
生まれつき片方もしくは両方の腎臓が機能していない状態であり、
若いわんちゃん・ねこちゃん両方でも起こりうる疾患です。 


②      感染症や免疫疾患による腎炎
細菌やウイルス感染もしくは自己免疫が原因で腎臓が炎症を起こし、
腎臓の細胞が攻撃されてしまう状態です。

ねこちゃんでは猫白血病ウイルス・猫伝染性腹膜炎等のウイルス感染が
原因となることが多く、ほとんどがゆっくり時間をかけて発症します。

一方、わんちゃんで腎不全を起こすことが最も多い感染症は、
レプトスピラという細菌による感染症で、
こちらは急性の腎不全を引き起こします。


③      中毒性物質の摂取
保冷剤や自動車の不凍液、医薬品の誤った摂取でも起こり得ますが、
最も多いのはユリやブドウの過剰摂取による急性の腎不全です。

特にユリは、ねこちゃんでかなり感受性が強く、
明確な中毒量はまだ不明な点が多いですが、
ユリが入った花瓶の水を少量摂取しただけでも
腎不全を発症した例も報告されているためかなり注意が必要です。


④      循環不全
心不全やショック状態により全身の循環が悪くなり、
腎臓に十分な血流が届かなくなっても急性に腎不全を起こします。


⑤      尿路結石症等による尿路閉塞
膀胱結石・腎結石などによって尿路が閉塞されるため、
尿は産生されるけれど排泄できない状態になってしまい、
急性に腎不全を起こす状態です。

わんちゃん・ねこちゃん両方で
発生が多い原因の一つとしてよく知られています。


⑥      歯の病気
歯や歯肉の汚れ・細菌付着が貯留し重度になると、
細菌が血液から臓器に侵入し、腎臓を損傷してしまうことが稀にあります。
老齢のわんちゃん・ねこちゃんで見られることがあります。


⑦      加齢による腎臓機能の低下
加齢とともに長い年月をかけて腎臓の機能が徐々に低下していき、
最終的に腎機能が75%以上障害された状態です。

発症する年齢・スピードは個体差があり、
明確な原因は分かっていない部分も多いですが、
高齢のわんちゃん・ねこちゃんはいずれ陥ってしまうことがほとんどです。


⑧      その他
腎臓の腫瘍や、多発性嚢胞腎という
腎臓にたくさんの液体の貯まった袋(嚢胞)ができていく病気もあります。
これらも、正常な腎臓組織が失われていき腎機能は低下していきます。


引用:イラストでみる犬の病気(講談社)



腎臓病のよくある症状は?


腎不全のわんちゃん・ねこちゃんの初期症状は・・
・喉の渇きによって水をたくさん飲み、尿量が増え、尿の色が薄くなる
・元気・食欲が落ちてくる
・体重の減少
・下痢や嘔吐などの消化器症状
 
重篤な症状として・・
・尿が出ない (丸一日出なければ危険!)
・痙攣
・口臭・体臭からアンモニアのような異臭がする
この状態は尿毒症と呼ばれ、末期の症状です。
 
尿路結石による尿路閉塞の場合、
上記症状が出る前に頻回にトイレに行くが、
何も出ないということが多く見られます。
症状が一つでも当てはまれば、早期に来院し検査を受けるようにしましょう。

診断・検査法について


腎不全を診断する一般的な検査は以下の4つです。

①      血液検査
腎不全により老廃物が十分に排泄されず、
電解質のバランスが崩れると、
血液検査でも複数の項目で異常値が認められます。


②      超音波検査
腎臓の形に異常がないか、
尿管・膀胱に結石がないか等をチェックできます。


③      尿検査
腎不全により腎臓の機能が落ちると、
血中の必要な水分やたんぱく質も尿からどんどん出ていってしまうため、
尿検査で尿の薄さや尿中のたんぱく量が多くないかを調べることも診断の一つです。


④      レントゲン検査
腎臓や尿管・膀胱内の結石や腎臓の形・大きさの異常等の
チェックを超音波検査と併せて行うことが多いです。
 

慢性腎不全のステージ分類と治療法


検査で異常があり、
年齢や経過時間から加齢による慢性の腎不全と診断された場合、
重症度によってステージを4段階に分け、
進行に応じた食事療法と対症療法を行います。


引用:慢性腎臓病インフォメーションシート(日本全薬工業株式会社)

<ステージ1>
ほとんど症状はなく、血液検査でも異常が見られない段階ですが、
尿検査でたんぱくが検出され、尿が薄いと診断されます。
すでにこのステージ1で腎機能が全体の1/3程度まで低下しています。


<ステージ2>
この段階になると血液検査でも軽度の異常値が認められ、
腎不全初期症状の一つである、水を多く飲む・尿量が増えるといった症状が見られるようになります。

ただ元気・食欲の低下は見られないことが多く、
意外と気づきにくいステージ段階です。
ステージ1~2と診断された場合は、
腎臓に負担をかけないようなたんぱく・リンが制限された食事療法を開始します。


<ステージ3>
明らかな血液検査上の異常値が認められるようになり、
元気・食欲不振や嘔吐・下痢といった消化器症状、貧血症状等が見られるようになります。

ステージ3からは脱水も進行するため、
静脈点滴や継続的な皮下点滴等による体中の水分維持のための治療も状態によって開始します。
食事もできるだけ水分の多いものを積極的に与えていきます。


<ステージ4>
末期の腎不全状態で、尿毒症と呼ばれる時期です。
ステージ3に加え、体中に尿毒素であるアンモニアが回り、
意識も混濁してくる場合もあります。

積極的な治療が必要で、あらゆる対症療法のほか、
栄養・水分摂取のためにチューブでの給餌も検討します。

急性の腎不全の治療法


一方、経過時間や尿路結石・中毒性物質の誤食が原因で、
急性の腎不全と診断された場合は、
急激に進行し命に係わることも多いため迅速な治療が必要となります。

・原因疾患の治療
(例:尿路結石ならば尿路閉塞の解除、
レプトスピラ感染症ならば抗生剤の投与等)

・静脈点滴
腎臓への血流量を増やし腎臓を保護、尿量を増やし老廃物排出を促進させ、
全身の循環改善も図ります。

・人工透析
静脈点滴でも尿が作られず、老廃物を排出できない場合、
人と同様に腹膜・血液透析を検討することがあります。
ただ、透析を行える動物病院は限られているため
一般的な方法ではないかもしれません。
 

一概に腎不全といっても様々な原因や状態があり、
治療法も変わってきます。

また、一度失われた腎機能は残念ながら治療を行っても
元には戻れないため、
腎不全はいかに早期治療で進行を遅らせることができるかが鍵です!

少しでも気になる症状があればお気軽にご相談ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?