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ソフィー・フィリエール追悼上映に行ってきた@日仏学院

こんにちは。あるいはこんばんは。おしゃま図書です。先週末、「スクリーンで見よう!マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル」という特集上映があり、昨年7月に58歳で亡くなったソフィー・フィリエール監督の追悼上映に行ってきました。
(ホントは日曜日に書いたのに、あとちょっとでアップ、という前になぜか真っ白に…なぜ??? と、思っていたら、気づかないうちにそっちもアップされていた…ので、今回新たに直しました。前のを読んでくださった方には申し訳ありませんでした)
いやぁ、めちゃくちゃ面白かった!!!
ほとんど日本で公開されていないということで、まったく知りませんでした。


ソフィー・フィリエールってどんな人?

La Fémis(国立高等映像音響芸術学校、旧フランス高等映画学院)出身。卒業生にはアラン・レネ、パトリス・ルコント、フランソワ・オゾンらフランス映画界を背負って立つ面々が!いわば、映画界のエリートですよね。ソフィーの訃報を知らせるル・モンドの記事を発見。

記事では、ファブリス・ルキーニ、エマニュエル・ドゥヴォスらの追悼コメントの他、今回日仏学院で上映した2作に出演しているサンドリーヌ・キベルランのコメントも。さらに、サンドリーヌのインスタへのリンクがあったので元の投稿をみてみました。

サンドリーヌのインスタより


たくさん悲しみのコメントが書かれていますが、最後に Je suis dévastée aujourd'hui.(今日は悲しみにくれている、というような感じでしょうか)とあり、ル・モンドはここから引用したのだな、と確認。「dévastée」という単語、ここで初めて知りました。好きな俳優さんが亡くなったときの日記に使ってみよう(あんまり、そういう機会は来ないでほしいけど)。一応、この単語、どんなときに使うのか、ChatGPTに聞いたら、以下のような回答が!

1. 圧倒的な悲しみと絶望
「dévastée」は「壊滅的な」という意味を持つ「dévaster」から派生した言葉であり、心が完全に打ちひしがれ、何も考えられないほどの悲しみを表します。日本語の「打ちひしがれる」「絶望する」に近いニュアンスです。

2. 喪失感と空虚感
大切な人を失ったとき、人は深い喪失感と空虚感に襲われます。「dévastée」には、人生の光を失ったような虚無感や、何もかもがどうでもよくなってしまうような無気力感も含まれています。

3. 立ち直れないほどの苦痛
「dévastée」は、悲しみのあまり立ち直れないほどの苦痛を感じている様子を表すこともできます。日本語の「心が張り裂ける」「生き地獄」のような表現に近いニュアンスです。

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ほんと、便利な世の中です。
さて、では、上映作品について。まずは短編。

女と犬(Des filles et des chiens)

(フランス/1991/6分/デジタル/カラー)
出演:サンドリーヌ・キベルラン、エレーヌ・フィリエール
*MyFFF2024配信作品

仲良しガール2人が、歩きながら「こっちとこっちならどっち選ぶ?」という遊び(違うけど、うんこ味のカレーとカレー味のうんこならどっち食べる?みたいな感じのやつです)をしている。ただそれだけと言ったらそれだけなんだけど、まるでヌーヴェル・ヴァーグの監督たちが若い頃に撮っていそうな作品。みずみずしくて、眩しいです。
最初の短編(大学の卒制?)で1992年にジャン・ヴィゴ賞をとっていると言うではありませんか! 将来を嘱望されていた若手の一人だったことは間違いありません。
今回のマイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルで見れるので、もう一度見てみようっと!

20年後の私も美しい(La Belle et la belle)

(フランス/2018年/95分/カラー/デジタル)
出演:サンドリーヌ・キベルラン、アガット・ボニゼール、メルヴィル・プポー

誰でも「あの頃に戻ってやり直せたら」と思うことってあると思いますが、その場合、大抵は今の主人公がタイムスリップするパターンですよね。
『ペギー・スーの結婚』しかり、『カミーユ、恋はふたたび』しかり…。
あるいは、未来の息子や孫がやってくるパターン。
ロマン・デュリスとジャン=ポール・ベルモンドが共演した『パリの確率』とかもありますね。
ところが、ソフィー・フィリエールは、同じ時代に、異なる年代の自分を出会わせるのです! そして、ふたりとも少しずつ、人生を選択していく。
赤い衣装のマルゴー/サンドリーヌ(40代)と、青い衣装のマルゴー/アガット(20代)。時間の経過とともに、サンドリーヌには青や暗い色が、アガットには赤い服が増えていく。少しずつ、ふたりが混ざり合っていくのが色からもわかって面白い。
お話は現代なのに、どこかおとぎ話みたいなのよ。リヴェットの『セリーヌとジュリーは舟でいく』や『北の橋』みたいな作品が好きな方なら、大好物な映画だと思う。
あと! やはりメルヴィル・プポーの、めちゃ元カノに未練あります的な熱いまなざし!!! 素晴らしすぎて、どうしてこの作品が未公開なのか信じられません。あんな目で見つめられたいですわ!

20代のマルゴーを演じているのは、監督の実娘、アガット・ボニゼール。かわいい。なんとなく、サンドリーヌ・キベルランとも似て見えるから不思議!

新作はMa Vie, ma Gueule

亡くなる前、ソフィー・フィリエール監督は新作を撮っていたそうです。
タイトルは«Ma Vie, ma Gueule»。直訳すると「私の人生、私の口」となりますが、自分の好きに生きるとか、自分の意見を言う、反抗的な態度をとるときなどに使うみたいですね。Gueule は、顔とか表情という意味で使うこともあるらしいから、「自分の人生を自分らしく生きる」というニュアンス? 自分探し的なテーマって、あっちの人たち好きよね。
とにかく、なんかネットに載ってる粗筋読んでもさっぱりよくわからないんだけど、アニエス・ジャウイとフィリップ・カトリーヌが出てるってだけで、めちゃ面白そうじゃん!

ソフィー・フィリエール特集上映求む!

なんとか新作が日本でも公開され、そのタイミングで日仏学院でレトロスペクティブやってほしいです。そしたら絶対通います。
今回、初めてソフィー・フィリエール作品を観て、なんでこれ公開されないのよ!と、心底思いました。世代的には、デプレシャンとノエミ・ルボヴスキの間くらいだそうですが。監督だけじゃなくて、脚本も書くのよね。日本で見られるのだと、カトリーヌ・ドヌーヴが娘のキアラ・マストロヤンニと共演した『アンティークの祝祭』がありますね。これ、見逃してた!!

配給って、慈善事業じゃないから、おとなの事情もあってなんでもかんでも輸入できないとは思いますが、ここは一つ、日仏学院さんに頑張っていただきたい。シャンタル・アケルマンだって、あんなに評判よかったし! きっと今、女性監督が〝きて〟るんだと思う!!!

ところで。カンヌでパルムドールをとり、2月23日に日本で公開されるジュスティーヌ・トリエ監督作品『落下の解剖学』に、実はソフィーが役者で出てるらしい。これもやはり女性監督ですよ。


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