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ペットフード基本の『き』 低アレルギーフードのウソ
はじめに
以前の記事で低アレルギーフードの基本について解説しました。
その記事の中で言っていた「低アレルギーフード」というのは、厳密な意味での低アレルギーフード、つまり「食物アレルギーの治療のために使われる療法食」のことなんですね。
一方で、ペットショップやホームセンター、オンラインストアなどで市販されているフードの中にも「低アレルギー」をうたっているものがたくさんあります。
それらのフードを実際に見たわけでも使ってみたわけでもありませんから、品質については僕は何も言うことができません。ただ、それらのフードの説明には多くのウソが含まれています。むしろ正しい説明を見たことがありません。
このペットフード講座は、飼い主さん自身が考えて、ねこさん・わんちゃんに合ったフードを選べるようになってもらいたくで始めました。ですので、「原材料が○○なフードを選びましょう」みたいに、断定的なことは書かないようにしています。とくに「××なフードはダメ」といった、否定的なことはできるだけ書かないようにしています。
とは言え、「低アレルギー」の説明はあまりにもウソが多くて、見過ごしているのがつらくなってきました。そこで、今回はあえて否定的な内容を書くことにします。もちろん特定のフードを取りあげて「これはダメ」なんてことは書きません。あくまでも「この説明は間違いです」ってことを、その理由も含めて解説するだけですからご安心ください(?)。
この記事では、あえて「ウソ」という言葉を使っていますが、これらのフードの説明が、意図的につかれた「ウソ」なのか、たんによく知らないための「間違い」なのかはわかりません。
ただ、意図的に「ウソ」をつくのは論外として、よく知らずにフードを作っていながら、いかにも「ねこさん・わんちゃんのことを考えていますよ」という印象を与えるような説明をするのも無責任だと思っています。
マーケティングが優先されるご時世ですからしょうがない部分もありますが、だからこそ飼い主さんたちに「フードリテラシー」を身につけてもらいたいと願っています。
◾️ 「アレルギーのことを考えて、○○な原材料を使っています」はウソ
意外に思われるかもしれませんが、アレルギーになりにくい原材料や、逆に、アレルギーになりやすい原材料というものはありません。
もちろん、いますでに食物アレルギーになってしまっているのであれば、どの成分がアレルギーの原因になっているかを絞り込んで、その成分を含んでいないフードを選んで食べさせてあげないといけません。小麦アレルギーの人が、小麦を含んだ食品を食べないようにするのと同じです。
このようなアレルギーの原因となる成分や物質のことを「アレルゲン」といいます。例えばスギ花粉症の場合はスギの花粉がアレルゲンです。
そういうことではなくて、いまとくに食物アレルギーでない、ねこさん・わんちゃんが食べるフードに関しては、「○○はアレルギーになりやすい」とか「××はアレルギーになりやすい」とかはありません。
変な言いかたになりますが、アレルギーがおこるには、体の中でアレルギーをおこす準備ができている必要があります。花粉症がおこるのは、体の中で花粉に対してアレルギー反応をおこす準備ができているからです。花粉症じゃない人は、花粉に対してアレルギー反応をおこす準備ができていないから、花粉症じゃないのです。
次の1.と2.は似ているようですが、根本的に違います。
いますでに『△△アレルギー』をもっているねこさん・わんちゃんが、△△を食べてアレルギーの症状が出る
いまアレルギーをもっていない ねこさん・わんちゃんが、◾️◾️を食べて『◾️◾️アレルギー」になってしまう
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②アレルギーじゃなかったのがアレルギーをおこす準備ができてしまう
どう違うかと言うと
は、アレルギーをおこす準備ができている状態でアレルゲンを食べてしまってアレルギーの症状がでる、ということです。
は、いままでアレルギーをおこす準備ができていない状態だったのが、◾️◾️を食べたことがきっかけで、◾️◾️アレルギーをおこす準備ができしまった、ということです。
「アレルギーのことを考えて、○○な原材料を使っています」というのは、「2.のようなことがおこりにくい原材料を使っています」という印象をあたえるための説明です。
ちなみに、ストレートに「アレルギーになりにくい原材料を使っています」という言いかたは、薬機法に抵触するためできません。
ところが、実際にはそんな原材料はありません。っていうか、どちらかと言うと「2.のようなことがおこりやすい原材料」というものが、そもそもありません。
なぜなら、体には、「食べたものに対してはアレルギーをおこしにくい」という仕組みがあるからです。もう少しだけ詳しく言うと、「腸の粘膜から体の中に入ってきたものに対しては免疫反応を抑える」ようになっているんです。
小麦アレルギーの人の大半は、小麦を食べたことがきっかけで小麦アレルギーになったわけではありません。
大事なことですのでもう一度言いますが、「アレルギーになりにくい原材料」とか「アレルギーになりやすい原材料」とかはありません。
「じゃあ、どうやって食物アレルギーになるんや?」と思われると思います。もちろん、これがすべてではありませんが、「皮膚のバリアを突破して体の中に入ってきたものに対してアレルギーをおこしやすい」ことがわかっています。その「皮膚のバリアを突破して体の中に入ってきたもの」が、たまたま「食べ物に含まれる成分」だった場合に、食物アレルギーになります。
「それ、どういうこと?」ってなると思いますが、これをちゃんと説明しようとすると、ものすごく長い話になってしまいますので、ここではとにかく「そういうもんだ」と思っておいてください。
一例をあげると、花粉症の人が多い理由のひとつが、花粉にはタンパク質分解酵素が含まれている、ということです。花粉はその酵素を使って、皮膚のバリアを壊して体の中に入ってきます。
気になった方はペットフード講座の本編で「ねこさん・わんちゃんのアレルギー シリーズ」を公開していますので、下の記事一覧からご覧になってみてください。
◾️ 「アレルギーになりにくい消化がいい原材料」は半分ウソ
これも先ほどの説明と同じような話で、もしもすでに食物アレルギーをもっているのであれば、消化がいい原材料のほうが多少なりともアレルギー反応をおこしにくい、というのは間違っていません。
ただ、いま食物アレルギーをもっていないのなら、消化がいい原材料だからといって、食物アレルギーに”なってしまう”のをふせぐことができるわけではありません。
◾️ 「食物アレルギーになるのを避けるためにフードをローテーションしましょう」は真っ赤なウソ
1種類のフードを食べ続けたせいでそのフードの成分に対して食物アレルギーになる、なんてことはまったくありません。よく食べているものに対してアレルギーになりやすいわけではありません。もしも、よく食べているものに対してアレルギーになりやすいのなら、一昔前の日本人のほとんどがコメアレルギーになっていたはずです。
強いて言うなら、「同じフードを長期間あげていると、その分、何かの拍子でフードの成分が皮膚から体の中に入ってくる可能性が高くなるかもしれない」ということはあります。
「何かの拍子」というのは、例えば、「何らかの原因で炎症をおこしている皮膚を、フードを食べた直後になめてしまう」というような場合です。この場合、だ液に残っているフードの成分が、炎症をおこしてバリアが低下している皮膚から体の中に入ってくる可能性が少なからずあります。
ただ、だからといって、フードをローテーションすることで食物アレルギーになりにくい、ということにはまったくなりません。「何かの拍子」がおきた時に食べていたフードの成分に対して、アレルギーをおこすようになるだけです。
◾️ 最後に 〜食物アレルギーになるのをふせぐには〜
免疫の働きについては、まだまだわからないことが多くて、アレルギーに関してもわからないことだらけです。
でも、いまわかっていることをもとに、少しでも食物アレルギーになってしまうリスクを減らすことはできます。
この記事の中で何度も書きましたが、いまの時点でわかっている、食物アレルギーになってしまう大きな原因のひとつが、「皮膚のバリアを突破して食事の成分が体の中に入ってくる」ことです。
これをなるべくふせぐには、「皮膚のバリアを健康にたもつ」ことが大事です。そのためには、「あなたのねこさん・わんちゃんにとって栄養バランスがとれたフード」を選んであげることです。
「あなたのねこさん・わんちゃんにとって栄養バランスがとれたフード」がどんなフードなのかというと、一言でいうことはできませんが、それこそが実はこのペットフード講座で解説していることでもあります。
それでも強いて一言でいうなら、「毛ヅヤや毛並み、皮膚の状態をいい感じにたもつことができるフード」となって、結局は「皮膚のバリアを健康にたもつ」と同じことになってしまいます(笑)。
あと、飼い主さんがしてあげられることは、ねこさん・わんちゃんが皮膚をなめたり掻いたりしているのに気づいたら、なるべく早く動物病院に連れて行って、治療をしてあげることです。皮膚をなめたり掻いたりしていると、皮膚のバリアが壊れてしまうからです。
そのためにも、普段からねこさん・わんちゃんの様子をよく見てあげてくださいね。
※「このフードは大丈夫ですか?」というようなことがあれば、コメント欄に記入してください。わかる範囲で回答します。
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