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No.98 1985年 5年生社会科 伝統工芸「アジアの伝統工芸パンフレット」づくり

 1980年代の子どもたちにとって、先進国の情報は親やメディアなどを通して比較的入りやすいですが、アジアのことについては、情報も入らず大人も教えようとしていないということが見られました。児童文学でも欧米のものは多く出版されていましたが、アジアの児童文学はあまりなかったようです。子どもたちの「アジアイメージ」は欧米に比べマイナスの要素が多かったように感じていました。このような状況は現代でもあまり変わらないのではないでしょうか。
 1980年代当時、アジアの一員としての日本の子どもたちと他のアジアの人々の生活を同じ位置においてアジアを理解していくことが国際理解教育にとって課題になると考えていました。そのためには、アジアの文化(文化遺産・音楽・伝統工芸・昔話・児童文学など)を積極的に教材化することを試みました。
 
 当時、5年生社会科に「日本の伝統産業」という単元がありました。輪島塗が教科書で扱われていました。その輪島塗の発展としてアジアの伝統工芸を取り上げ、ひとりひとりの子どもがオリジナルな「アジアの伝統工芸パンフレット」づくりに取り組みました。学習材として、ユネスコ・アジア文化センター作成の「文化キット(3)アジア太平洋の伝統手工芸」とその中に入っている解説書を使用しました。この文化キットのスライドには、①日本(輪島塗)②韓国(竹細工)③中国(ひすい細工)④フィリピン(刺繍)⑤マレーシア(アンニャマン)⑥シンガポール(凧)⑦インドネシア(バティック)⑧ベトナム(竹細工)⑨タイ(絹織物)⑩ビルマ(焼き物)⑪バングラデシュ(カンタ)⑫インド(絞り染め)⑬スリランカ(敷き物)⑭ネパール(仮面)⑮パキスタン(装身具)
 一つ一つのスライドを見ながらその伝統工芸の解説をし、その美しさ、細やかさや日本の伝統工芸品との共通点や相違点などを話し合い4時間かけてスライドを見ていきました。許可を頂きこのスライドから写真をつくり、模造紙にアジアの地図を描きそれぞれの国にその写真を貼りました。その「アジアの伝統工芸マップ」を参考にしながら、「アジアの伝統工芸パンフレット」をつくりました。
 ある子どもの作品をご紹介致します。


 ユネスコ・アジア文化センターの「文化キット(3)アジア太平洋の伝統手工芸」は子どもたちに他のアジアの人々とのつながりを考えさせてくれました。一つ一つのスライドの美しさ、繊細さ、大胆さ、面白さに驚きの連続でした。スライドの見せ方もただ見せるのではなく、原料は何で出来ているのか、どうやって作るのか、どのような用途があるのかを想像させたり、その作品から理解できることを話し合ったりといった子どもたちの自由な発想を中心にした学習形態がとれました。
 「アジアの伝統工芸パンフレット」づくりも、子どもたちの個性的な表現の追求を全面的に認め、ひとりひとりがその作品の持ち味を十分に出し、イラストを中心にして面白くまとめていました。作品例に挙げた子どもも丁寧な物の見方と同時に面白さもその過程で学んだようでした。


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