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障害者雇用の注目トピック 法定雇用率引き上げについて3分で要約 (と、今後の障害者雇用についてわたしが今思うこと)

こんにちは。パーソルダイバースの戸田です。
障害者の就職・転職支援サービス「dodaチャレンジ」で、企業様の採用・雇用の支援をしています。

今日は今まさに障害者採用にかかわる方の間で話題騒然の、法定雇用率の引き上げについてのポイントと、並行して検討が進んでいるそれ以外の重要トピックについて、3分でわかるくらいに要約してみます。
(より詳しい情報がほしい方は本文中のリンクをご参照ください)

そしてあわせて、そんな大きな変化のただ中にある障害者雇用の今後について、私がいま思うことについて書こうと思います。


法定雇用率引き上げと それ以外の注目トピック

3年後には法定雇用は2.7%に

法律の改正などを伴うので、最終的な決定にはまだステップがありますが、とはいえそうなることはほぼ決定的となったと言ってもよい状況です。

また並行して議論されているトピックのなかで注目度が高いものとしては、「短時間勤務の方の雇用拡大」があります。

それ以外にも、

が今後の注目テーマとなりそうです。
▼より詳しい情報はこちらの解説記事をご覧ください▼


法定雇用率が上がると はたらく障害者は増えるのか?

素朴な疑問ですが、これについて私は「増える」と思います。
なぜなら、これまで10年くらいの間、雇用率引き上げ→はたらく人数の増加、を繰り返してきたという歴史がありますので、今後も同様の事が起きるだろうと考えます。

実は法定雇用率は、5年に1回程度のタイミングで、いま設定されている率が適切なのかどうか確認して、見直しするかを検討する、とあらかじめ決まっています。なので、これまでも何度かの見直しがされてきました。


そして、引き上げられる法定雇用率に引っ張られるように、はたらく障害者の数は増えつづけてきました。
(たまたまですが、このグラフの中の一番古いデータである2005年は私が大学の卒業論文で障害者雇用について調べていたころでして、その当時と今でははたらく障害者の数が2倍以上になったのだなと思うと、非常に感慨深いものがあります)

法定雇用率2.7%は衝撃の数字

現在の2.3%からすると、たった0.4%、それも3年かけて段階的に引き上げるので何をそんなに騒ぐのか、と思う方もいるかもしれませんが、障害者雇用に関わる人事の方や関係者にとっては「衝撃的な数字」だと思います。
これは、実人数にした方が分かりやすいと思います。

「0.4%」という数値だけ見ると、「ほんのちょっと」という印象を受ける方もいると思います。ですが、じゃあこの引き上げによって、はたして何人分の雇用増加をもたらすのかを、ざっくりと計算してみます。この0.4%が意味することのイメージをつかんでいただくために、かなり乱暴に試算しますが、あくまでイメージという事でご理解ください。

さきほどの資料の中の数値を引用すると、2022年時点でのはたらく障害者は61.4万人で、実雇用率は2.25%。ということは、割り戻した分母となる数値は約2730万人。

これに2.7%をかけて、引きあがった法定雇用率を満たすのに必要な雇用者数を試算すると、約73.7万人。直近の雇用人数である61.4万人との差は、なんと12.3万人となります。ちょうど2割増です。
それだけ求職者の方にとっては就職の機会がひらけるチャンスとも言えます。

少子高齢化で人口が減り、特に働き手世代の減少が様々な場面で取りざたされている日本社会において、ここだけ局所的に2割も増える計算なわけです。しかも3年少しくらいの期間で。

日本社会全体のトレンドを考えると、0.4%がいかに大きな数値であるかがお感じいただけるのではないでしょうか。

また、衝撃と表現したもう一つの理由としては、この10年くらいの間で多くの企業が、雇用人数を増やすための取り組みをすでに行ってきており、そのうえでさらなる引き上げだからということもあります。

過去10年くらいの間は、数年おきに雇用率が引き上げられており、それに合わせて様々な工夫や努力をしながら今に至っている、という企業は少なくないと思います。少なくとも、そうした企業様から数多くのご相談をいただいてきた私たちとしては、そのように考えています。

いろいろなことをこれまでもしてきた上での、そこからさらに、という事ですので、企業にとってこれはひと筋縄ではいかない難しい状況になると感じています。

これからに向けて いま思うこと


入社するまでのことと、入社したあとのことの両立という難題

多くの企業においては、「新たに採用を増やす必要がある。じゃあどうやって?」ということが目下の懸案事項になる(もうすでになっている)かと思います。

採用計画をどう作り直すのか、どんな人材をターゲットとし、どうやって採用し、どこにどう配置するのか。課題は山積みです。

もちろんそれは極めて重要な議論だと思いますし、パーソルダイバースとしてもそうしたお悩みの解決に向けて何としても貢献したいと考えています。

ただ、これからに向けていま思うこととしては、どうやってその人数まで採用をするのかという量の確保の話だけではなく、採用するその人にどのように活躍してもらい組織に貢献してもらうのか、採用した後にその人と会社・職場とはどういう関係であることを目指すのかという、

入社した後のはたらき方や、個人と組織の関係のあり方についても置き去りにせず大切にする必要があるということです。
 
これは私自身の信条やポリシーの話かとういと、もちろんそれもありますが、それだけではありません。

数あわせのみで人の採用をしてしまうと、結局のところ本人にとっても会社にとってもうまくいかない未来しかやってこないと考えているからです。

人はただ雇われていて給料がもらえていればOKと考えるのかといえば、そうではないと思います。もちろん、なかなか仕事に就けずに苦労している時には、とにかく就職できることを第一に目指して懸命に職探しをすることもあるでしょう。でも、それだけでずっと満足できる人は少ないのではないでしょうか。

自分の仕事を認められたい。仲間やお客様やだれかに貢献して役に立っていると実感したい。
自分の能力や才能を存分に発揮する場が与えられ、成長していると感じたい。まわりから認められる居場所がほしい。
自分がやっていることに意味があると確信したい。

はたらいていれば、そう思うのはごく当たり前の事であり、そこに障害がある/ないは関係ないと思います。

「雇用率のためにひとまず辞めないでくれ。最低限、在籍してくれていればいいから」なんて言われたら、言われなくても会社からそう思われているだろうなと感じてしまったら、私だったらいたたまれなくてそれ以上は働けません。機を見てすぐ辞めると思います。

そして会社にとっても、苦労して採用したせっかくの人材がすぐ辞めてしまっては、また採用活動をして…と、いたちごっこを繰り返すことになってしまいます。これは会社としても何としても避けたいところです。

また、障害のある方が配属された職場の方にとってはどうでしょうか。
理論上は10万人以上の雇用増ということを踏まえると、これを機に新たに自分の職場に障害のある方が入社・配属されることになるという方は多くなると思います。

おそらく、障害のある人と一緒にはたらく初めての経験になる方や、身近に障害のある人がいる環境は小学校ぶり、という方もいることでしょう。

そして久しぶりの経験であればあるほど、その方の考え方や価値観にもたらす影響は大きいと思います。もしかすると、はたらくことという範囲に限らず、その方の障害者観そのものにも影響を及ぼす可能性すらあるかもしれません。

同じ職場に配属された障害のある方が、自分たちの組織に貢献していると感じられて「来てくれてよかった」と思われるのか。それともそうではないのか。

これは、はたらく本人にとっても、職場の方々にとっても、そして会社にとっても、今後の障害者雇用や、障害のある方とともに過ごすという事そのものの捉え方に影響を及ぼす、大きな分かれ目になると思います。

企業としての社会的責任を果たすために、法定雇用率の達成を目指して今後ますます採用に力をいれる企業は増えると思いますが、

いま企業に求められていることは、採用人数の確保と、入社後のはたらき方や個人・組織間の関係性の担保という、2つのテーマの両立であり、それゆえに非常に難しい状況であると思います。

「障害者雇用の成功」ってなんだろう

当社は、「障害者雇用を成功させる」という言葉を大切にしています。

さきほどの話を踏まえて、「成功ってなんだ?」ということについての私なりの考えをお伝えすると、

そんな、仕事を通じた本人と職場の関わり合いや、貢献と評価の結果として、お互いが「一緒にいたい」と思っている。
そうなって初めて「成功」といえる状態が生まれるのではないかと。そんな風に考えています。

綺麗ごとかと言われたらそうかもしれませんが、それでもやっぱりそうあってほしいと思います。それにそうじゃないと、はたらく個人と会社の関係は長続きしないということも、これまで数多くの就職支援をしてきた経験を通して、確信をもって言えることです。

さて、ずいぶんと偉そうにここまで持論を述べてきましたが、「そういうあんたはこの難題を解決できるのか」と言われると、

はい必ずできます、と即答することは控えたいと思っています。
それくらい、軽はずみに万事解決できますよなんて言えないほど、難しい問題であると感じているからです。

実際のところ、私たちが得意としている障害者専門の人材紹介サービス「dodaチャレンジ」には引き続き多くの求職者の方にご登録をいただいていますが、それだけですべてのご要望にお応えできるかというと、そうではないケースもあると思います。

ですが、これまでもお客様のご要望に何とか応えるためにアイデアをひねり出そうとした結果として、大小さまざまな数十種類におよぶ個別のサービスを作り、ご提供してきました。

そうした個別のサービスを作り出すヒントとなったのは、これまで取り組みを共にしていただいた多くのお客様達との事例と、当社ではたらく1,000名以上の障害のある社員との経験・実例でした。

これからも、知恵を絞って頭から汗をかきながら、そして例えではなく実際に汗をかきながら、お客様と一緒に「うちの会社にとっての障害者雇用の成功ってなんだ」を考え、それを実現するための方法をご提供したいと考えています。

そして、先ほどお伝えしたような、「この会社に入れてよかった。」「この人が来てくれてよかった。」という状態がたくさんの企業の中で生まれることのお手伝いをしたい、と考えています。

最後にお知らせ
もし障害者雇用についてのご相談やお問い合わせ、ひとまず壁打ちに付き合ってほしい等のご要望がありましたら、お気軽にこちらよりご連絡ください。お待ちしております。


また、本文中の資料の引用元である、無料のオンラインセミナーも随時開催しています。リアルタイム開催のものと、動画でいつでも視聴できるものがありますので、ご関心にあうテーマがありましたら是非ご利用ください。




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