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AAA 與真司郎さんのカミングアウトを聞いて

昨日、AAAの與真司郎さんがファンミーティングで自身のセクシュアリティ(ゲイ)についてカミングアウトしたとyahooニュースの記事が目に留まりました。

最初に記事を目にしたときは、與さんにはそんなイメージは全くなく、加えて全くLGBTQ+のイメージのない方がカミングアウトするケースも珍しいのでただただ驚きでした。驚くまま、いくつかの記事を見ていると、当日読まれた手紙全文を発見し食い入るように読んでしまいました。

私はゲイで、年齢もアラフォーに足をつっこみつつあり、憚りながら言うと與さんと同年代です。手紙の全文を読んでいると與さんの心の痛みや葛藤がなんとなく想像でき、本当に計り知れないほど辛かっただろうなと感じました。一方でファン、関係者、LGBTQ+ はじめ多方面に配慮のある内容に、心が打たれ涙がでてきました。

手紙の全文はここで見ることができます


また手紙を実際にお話しされている映像はこちらから見られます(ファンの皆様の反応も素敵です)。


私が手紙と映像を見てまず感じたこと。それは與さんがとても心根がまじめで優しいんだろうなということです。手紙を読めばだれもがそう分かるでしょう。手紙は誤解されないよう推敲し、かつスピーチも相当練習してきたんだろうな感じました。

與さんはまじめが過ぎるが故に時として内罰的になったりするかもしれません。ファンに対してずっと自分自身の一部を隠して生きるというのは、ファン想いであればあるほど辛いものなのだろうと思います。本人の捉えようによっては、小さな嘘をつき罪悪感を覚える感覚になるのかもしれないとも感じました。また多くのSNSフォロワーやファンを持ち、幼いころから芸能界に身を置いているからこそ、無意識に役割に応えようなんて思ったりするのかもしれないと感じました。


読んでいて胸が張り裂けそうになったのは、手紙のこの箇所です。

(引用)

僕が子どものころ、テレビではLGBTQ+のことをおもしろおかしく扱っている時代でした。もちろん、そのころは今みたいにインターネットが普及していなかったので、自分のセクシュアリティーについて疑問を持ったとしても、そのことについて知る機会がほとんどありませんでした。
 だから、そのころは「自分が間違ってるんだ」「自分はおかしいんだ」と思っていました。誰かにこのことを相談することもなく、自分の感情を押し殺していました。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/265658/2

映像で與さんは「自分はおかしいんだ」という箇所で言葉に詰まり、涙を流してしまいます。

今でこそ社会は徐々に変容していってしますが、私も子供のころはLGBTQ+は当たり前におもしろおかしくメディアで扱われていました。メディアの力は強力で、私自身も「自分は普通と違う。人と比べて劣った人間なんだ」と社会人数年目まで刷り込まれていました。たとえ独り言でも「私はゲイだ」と口にすると、自分自身の価値を下げうる、どこかまだ認めたくないセクシャリティを認めうると感じ、決して口にはできませんでした。

10代から芸能界で活躍されていた與さんは、そういう不愉快な場面に出くわすことも多かったでしょうし、大勢の人にイメージを崩さないように努める必要もあるため、相談できる人も数少なかったのではないのでしょうか。セクシュアリティがバレる(バラされる)かもしれないという不安もあったと思います。若くして言いようのない孤独を抱えた時期も長かったのだろうなと勝手に想像すると、胸が本当に痛くなりました。

スピーチの後半では、LGBTQ+当事者へのメッセージが並びます。

 もしこの会場の中にも自分のセクシュアリティーで悩んでいる方がいたら、僕のホームページをぜひご覧ください。あなたは絶対に一人じゃない。僕もあなたのことを全力で応援します。同じ悩みを抱えていた一人の人間として、LGBTQ+の方々には胸を張って、堂々と生きていってほしい。

 ただ、カミングアウトをするかしないかは個人の選択の自由です。もしも、カミングアウトをしたいと思っているならば、僕もそうしましたが、周りにサポートしてくれる方を見つけてからの方が心強いと思います。

 今は誰もいないと思っていても、支えてくれる方は必ずいます。僕も、今となっては周りに応援してくれる人がたくさんいますが、それも長い時間をかけて築き上げてきたものです。僕もそれを踏まえた上で、今日、ここでカミングアウトをしています。

 どんなセクシュアリティーだとしても、ゆっくり時間をかけて、まずは自分を大切にしてあげてください。自分を愛することが一番です。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/265658/3


ここの部分も非常に個人的に納得感のあるメッセージでした。私も30半ばまでの道のりで徐々にできてきた旧知の同級生、パートナー、ゲイの友達、心許せる同僚のつながりや支えによって穏やかに生きることができています。こうした人との出会いは、宝物と言っても過言ではありません。ただ、與さんのおっしゃる通り、本当に長い時間をかけて関係を築き上げ、それとともに私のなかの不安は消失していきました。

・・・・私はカミングアウトはしていません。これぐらいの年齢になると、周りも察してくれてとやかく言われない優しい世界に生きているせいか、言ったところで私の心は軽くなるのか分からないからです。また私がゲイであることは、(大事な個性ではあるのですが)あくまでも私の一要素でしかないからです。

さて、話を戻すと、與さんが今回カミングアウトにあたって当事者へのエールのメッセージを明確に発したこと、新曲の売上の一部を当事者団体に寄付すると決めたことは、誇らしく純粋にカッコいいと思いました。The New York Times の記事にも書かれていますが、

Mr. Atae’s decision, he said, was not political. All he wanted, he said, was to “normalize” being gay.

https://www.nytimes.com/2023/07/26/world/asia/japan-gay-j-pop-shinjiro-atae.html?smtyp=cur&smid=tw-nytimes


與さんのメッセージには政治的な意図はなく、同性愛者であることを社会に溶け込ませる意図と伺えます。自身の隠していた脆い部分について話すことはとても勇気のある行動です。今回與さんのカミングアウトにおいて、自身が過去に抱えていた不安や葛藤を含め丁寧に話したことは、今現在悩んでいる当事者の心に響くものあると信じています。影響力のある與さんの熱量と行動が、社会やそこに存在する人々を少しでも良い方向に導いていくことを願っています。

・・・・そう考えてみると、私なんて半径5mくらいの人にしか優しくするよう務められておらず、自分がゲイで生まれたことにある使命、今後私が社会に対してできることなどを見つめ直す機会を頂いたカミングアウトでした。

與さんは今回を機に一段上のステージに上がり、今まで見えなかったものも見えることになると思います。さらに高みにあがった與さんが力強いメッセージを発する将来が私には明確に見える平日の夜でした。これから応援しています。

お読みいただきありがとうございました。


皆様からのスキがもらえるととても嬉しいです。