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私立大学はいいよ(待遇・環境)

学会での噂話やネット上の情報では盛んに具体的な数字を出して言われているものの、「実際、私立大学の待遇ってどうなの?」という疑問を解決したい。

まず資料として、少々古いが以下のものを参照されたい。

職員と教員の年収が別表になっているので注意。
(職員も決して安くないが・・・)

肌感覚として、この資料に大幅なズレはない。すなわち、GMARCH、日東駒専などの首都圏大規模私立大の場合、55歳教授で年収は1300万〜1400万である。これは家族手当や住宅手当を含んでいるが、役職手当を含んでいないので、なんらかの役職につけばその分プラスになる。さらに大学にもよるが、超過講義手当(基準となる担当講義数を超えて講義を担当すると手当がつく。近年私立大も教員削減の影響で教員数が少なくなっており、普通に割り当てられる講義数だけで基準を超えることが多い)や、研究手当(外部資金の間接経費を財源としたインセンティブ)がもらえるところも多い。そうなると上記金額から100万円〜200万円プラスになる。
一方で、大学の規模が小さくなると年収が下がり、55歳教授で1000万〜1100万くらいになる。しかし、これで国立大とほぼ同水準である。さらに国立大の場合は55歳で昇給が止まる。さらに63歳でボーナスがなくなる大学も多い(年俸制移行の影響)。現在のところ、私のいる私立大では昇給停止はない。

国立大からの職位ステップアップなら給与は下がらない

私立大学は大学間による待遇の格差が大きいと言われている。確かにその通りで、都内の大規模有名私大と地方の小規模単科私大では格差が大きい。とはいうものの、自身の経験として国立大助教から地方小規模私大准教授へのステップアップであれば給与はちゃんと増える。過去に地方小規模私大に内定をいただいた時に給与の条件も提示されたが、問題なく増えていた(結局それ以外の条件が合わずに内定は辞退した)。准教授から教授へのステップアップでも同様であろう。
一方で民間企業からの転職だとどんな職位でも確実に給与は下がる。企業から来た先生が奥様と給与について大揉めするという話はどこにでもある。

研究費は卒研配属人数に依存するが、かなり恵まれている

一方で研究費の方も、私立大が恵まれている。国立大の場合、大学から支給される研究費が10万円程度の例も多く、科研費を取らないと卒業研究も満足に実施できない状況に陥っている。一方で私立の場合は学生が授業料とは別に実験実習費を支払っている、特に4年生や大学院生の場合、この実験実習費はほぼ全額研究室にくる。これは国立大学と比べて破格に恵まれているであろう。ただし、研究費は学生人数に依る。充足率が100%近い大学であれば十分な研究費が配分されるが、定員割れしているとその分配分額も少なくなる。

ぶっちゃけいくらくらい?

さすがに金額をそのまま出すのは下品だと思うので、調べる気のある人が調べればわかるような書き方をしておく。
まず給与であるが、国立大退職前は厚生年金の標準報酬月額で24等級であった。これが現職に異動後、30等級となった。私立大では年金の標準報酬月額の上限突破も決して夢ではない(国立大では厳しいだろう・・・)。
研究費は科研費基盤Cを一人で獲得したとして、獲得額を3年間で均等割したものよりも多い。少なくとも毎年基盤Cが当たっている状態と考えれば、国立大よりもかなり恵まれた待遇ではないだろうか。

とは言っても私立大は雑務が多いんじゃない?

研究・教育以外の雑務が多いことは否定しない。高校訪問やオープンキャンパス、入試対応、成績不振者の対応など様々な業務がある。国立大では高校訪問なんかしないし、入試も総合選抜、共通テスト、個別試験くらい。確かに私立大の方が大変なように見える。
ところが、国立大学特有の業務として、文科省をはじめとする国の政策への対応がある。これに対応しないと予算がこないのだから、必死である。しかもその政策はCOEや男女共同参画など学生の教育や研究推進効果に疑問符がつくものがほとんである。言葉は悪いが、単純な運営交付金として大学にお金を出しづらくなっているため(財務省の方針)、いろいろなことをやって改革した風に見せ、それによって予算を獲得しなければならない。
「学生の獲得」という目標が明確に定まっている私立大学の雑務、および目標と内容がバラバラな国の政策への対応を目的とする国立大の雑務、いったいどちらが楽であろうか。
(国立大の雑務も言ってしまえばお金を取るためなので、私立大と変わらないのだろうが・・・)
以上のところは個人の感覚になるだろうが、結論として決して国立大にいれば研究ができるという訳でもなく、私立大では研究ができないという訳でもない。

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