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【雑感】雨の日は優しさを振り返り

いらっしゃいませ。
数ある記事の中からこちらをお読みいただきありがとうございます。

今、雨が降っておりまして、けっこう風も強く、家の中なのにザアザアと音も鳴っております。
大雨の日に思い出すことがあります。

それは、ずっと昔、私が初めて長男を保育士さんに預けた日のこと。

当時利用したのは一日保育みたいに園に預けるタイプではなく、訪問保育、または出張保育みたいに一時間いくらで預けるというもの。他の子供と一緒にみるのではなく自分の子だけを預けてみてもらう。場所も指定できて、自宅でも相手の家でもどこかショッピングセンターでも選べました。
一時間で良かった。
親も知り合いもいない土地で四六時中 乳児と過ごすことが、その頃の自分にはもう無理だと思ってしまいました。犬の介護と重なったこともあって、離乳食が一段落したら今度は犬の介護食が待っていて。現実逃避で頭の中でお話を創作していましたが、ついにある日限界が来たのです。

相手とはインターネットの保育サイトを通じて知り合っただけで、当然お顔もお人柄も知りません。経歴とやりとりの温かさで決めました。

予約日当日。台風直撃でした。
約束したのだからと無我夢中で待ち合わせ場所に当時一歳半の息子を連れて、それでやっと私は気が付きました。
『来てしまったけれど、こんな台風の日に相手だってここまで来るのは大変なはず。別日に変更しておけば良かったかもしれない…』
自分だけで手一杯で相手のことまで気が回らなかった。私は自分の無配慮を呪いました。

けれど保育士さんは来ました。
台風で大荒れの中、完全防備で息子さんの手を引いて。
ポンチョなどの可愛さとは無縁のレインスーツ。雪国のスノーウエアに近いものがあります。それと丈のあるホームセンターに売ってそうな長靴。
満面の笑みで、開口一番に『すごい雨ですね!大丈夫でしたか⁉』と言われました。

一時間の予定を二時間にしていただき、私は出産後初めて一時間の自分時間を手に入れました。とはいえ、ただ何もせず珈琲を飲んでぼーっとしていただけですが。
ぼーっとできる時間が幸せでした。
ショッピングセンターに併設されていたドトールで泣きました。

その方とは二度だけ保育をお願いしましたが、私の引越しでその後は音信不通となりました。でも、私は覚えています。その日たった数時間を私にプレゼントしてくれたその方がかけていただいた言葉の数々。

それから紆余曲折あって私はカフェをしております。
あの方にしていただいたたくさんの嬉しかったことを、今度は私が誰かのためにする番だと思っております。
お店には疲れたお母さん、お父さんがたくさんやって来ます。目を見て、態度を見て、かつての私と重なります。もちろん勝手な想像に過ぎないので口には出しませんが…。

お店のディスプレイには触ってはいけない、というならば、触っていいおもちゃを用意します。
待ち時間が待てなくてウロウロソワソワしてしまう子供には、絵本を提案してみます。絵本が興味ない子には図鑑も。男の子はわりと図鑑に食いつきます。恐竜か乗り物が人気です。
赤ちゃんが泣いていたらまず声をかけます。すっごく泣いてますね!元気ですね!事実を述べているだけですが、親御さんは何故かホッとされます。

ああしたらこうしたらと、あの保育士さんは一言も言わなかった。それが私には本当に嬉しかった。逃げ出したくてお願いしたあの時、もし何かを言われたら、あの頃の私は『そのことすらできない自分』を責めてしまいそうになっていたから。

優しいことをされたら他の人に優しくしたい。
そのために日々いろんな方と出会って話をして、たくさんの優しいことに気付きたい。
お店で出すようなお料理は作れないしホテルの執事のような接客も難しいけれど、できることを今この瞬間にまずやってみる。


大雨のたびに思い出します。
あの保育士さんも現役育児中で大変だったからこそ、私を救ってくれたのだと思うのです。

連載小説「心の雛」公開中に雑感の記事は挟みたくはなかったのですが、大雨で思い出したもので。
小説内の先生と雛の関係は、優しくされて優しさを返していく、そういう関係を目指しています。書いた時は雨ではなく雪が降っていたので思い出しませんでしたが、私の心の根っこにある言葉たちは、昔のあの保育士さんの影響を多分に受けていると思うのです。


最後までお読みいただき感謝申し上げます。


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