Take-3: 映画『君たちはどう生きるか(2023)』【ネタバレなし】は面白かったのか?──予備知識がないということの素晴らしさ──
最後まで“ネタバレ”は1ミリもありません。内容にも触れておりません。お約束します。
皆様よき映画ライフをお過ごしいただけでしょうか。N市の野良猫ペイザンヌと申します。
本来、既に書いてる未公開のストック記事から出していくつもりでしたが、今回は急遽リアルタイムで挟み込んでみようかなと。
さて、7/14(金)初日、朝から初回で観てきました。宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』。
「ベールを脱ぐ」という言葉がこれほどまで相応しい映画がこれまであっただろうかと?
古くは『E.T.』の予告でE.T.の顔を見せない──『エレファント・マン』の顔は見せない──そういった一部肝心なものを公開までひた隠しにするということはこれまでもありました。
近年公開された『スラムダンク』などにおいてもバスケットボールなんだ。舞台は現代なんだ。「あの漫画」のアニメ化なんだ、それくらいはわかります。イメージする余地はあります。
──が、今回は全くの闇。影すら見せません。
主人公は男なのか女なのか?
若いのかそうでないのか?
そもそも現代劇なのかファンタジーなのか?
『君たちはどう生きるか』とあるが本当にタイトルなのか?──あれはキャッチコピーで実は『ナウシカ2』なのではないか?
様々な妄想・憶測が飛び交いました。
私はというと昨日まで「ホントに明日自分はジブリの新作を観るのか?」というのがいまいちピンチと来ず、今日劇場に行き、シートに座って、初めて実感が沸いてきた──そんな感じだったんですよね。
普段であれば「あ〜また同じ予告、早く終わんね〜かな」など思ってることも多々なのですが「東宝のマークが出たら始まっちゃうんだな」とやけに緊張してきましてですねw
「しかも始まるったって、「何が」始まんだよ?」と。
「え、ちょ、心の準備まだできてないからもう少し予告やっててほしいぞ」と先延ばしを望んでる自分もどこかにいたりして😅
ただ不安は一切ないんですよね。ともあれあの「宮崎駿キャラ」が出てきて動くことだけは間違いないんだから──と。
図書館で無造作に選んだタイトル聞いたこともないような児童文学。それを開く感じに近い。
まあ、これまでもいろいろ映画を観てると「このストーリーっていったいどこに連れて行かれて、どう結末をつけんだろな?」と、そんな映画にぶつかることもよくあります。
私はこれを「注文の多い料理店」系の映画館と呼んでおりますが、今回、最初のカットからまさにそれなんですよ。
まず「作品の舞台」。
始まってまず「それ」を初めて目にするわけですね。当然のことながら。
ようやくですよ。これってもう1カット目からドンデン返しのようなものですよw
だって、まず始まってすぐ「あっ!」──が来るわけですからw
そうか、ボクが今から観る映画の設定はこんな時代のこんな場所だったのかと、ようやくそこでわかるのです。
長い映画人生でこんな経験したことありませんよ、ホント。
なので終わったら、まず真っ先に前情報は入れない方が絶対良い──とTwitterで飛ばしたのはそれが理由です。
しかもすでに、お昼ごろまでに早くもチラホラと小さな情報がトレンドで上がったりしてましたからね。
いや、もったいないでしょ──と。
せっかくここまで隠してくれたのに、と。
だってこれって今まで何十年も映画を観てきた人ですらほとんど経験できないことを、もう少しだけ辛抱すれば今回、誰でもできちゃうんすよ。
後々、何十年先にも話のタネにもなります──そこを映画のネタバレ・内容うんぬん以前にまず体感してほしい〜! 面白がってほしい〜!──とw
オーバーでなく「この体感」ってボクにとってはフレンチのフルコース5万……ん〜、いや5万は高いな🤣w 3万くらいの価値があったぞ……と帰り道つらつら考えてましたから。
また、そうやって「ひた隠しにすること自体」に監督の「昨今の映画の商業主義に対する怒り」のようなものもヒシヒシ伝わってくるわけですやね🙄
客を呼ぶためにオーバーな、面白そうな部分だけを繋げた予告を出して拡散させる。何かのテレビ番組で俳優が番宣する。大規模な試写会で口コミを狙う。それでもまだ面白ければいいけれど──みたいな。
あるいは今、ここに書いてるようなブログ的感想、YouTuberの動画配信などでも、今度はこの監督がこんなあらすじの映画を撮ります──「面白そうですね、つまらなさそうですね、きっとこうなんでしょうね〜、実はこれは……実はこの元ネタ的は……」といったような根拠のない憶測まで全くできない状態にシャットアウト。
「おまえら少し黙っとけ」状態にしました。
多大な儲けに関わるはずのグッズ関連まで──まさかのパンフレットすら後日販売させるという徹底ぶり。
これにボクはまず感動しましたね。
ここでハンカチ1枚使っちゃったよ、くらいな。
きちんと、静かに、物語を堪能させる。自分と向き合わせることのみを目的にしているとしか思えないんですよね。
というより、そもそもが映画や書物の本来の目的というのはそのあたりにあるんだよと──半ば強制的に見つめ直させられる部分が凄く多かった。
言ってみればジブリがこれまで映画の中で警鐘してきたものを、フィクションでなく、口先だけでなく、実践としてやろうという意気込みすらそこに感じたというか。
試合の前から勝負は始まってるなんてことも言いますが、映画の前からすでに映画は始まっていた──と今回改めて感じさせていただきました。
最後に(ネタバレではありません)ボクはこの映画で三回泣きました。これが不思議なことに「なぜココで泣く?」という場面でした。「よくわからないけど、あ、いま涙出てんな」って考えてましたからね。
ストーリーというよりもいわゆる「感情に訴えかけられた」ってやつですね。
さらに終わって「あれ、わしゃどこで泣いたんだっけ?」と思い返そうとしても微妙に思い出せないんすよね🙄
こと映画のそういう面においてはそれほど記憶力は悪くないと思うのですが……(他はすぐ忘れる😅)なので少し驚いたんすよね。
完全に観てる間、空想──というより夢の中に連れていかれたような──現実に引き戻されて、夢から覚めて思い出そうとするんだけどうっすら薄れていくような……
哀しいような、それでいて心地がいいような、そんな感覚でありました😊
ではまた次回に!
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