見出し画像

夢のような1日 ②

千住博美術館を満喫後、軽井沢タリアセンに向かう。徒歩15分ぐらいの道のりだ。

軽井沢は今まさに春らんまん。八重桜がまだ見ごろで、スズラン、藤の花、オダマキ、ライラック、サクラソウなどが順を追わずにいっぺんに咲いているようだった。そして、暑くもなく寒くもなく、青空に聳える浅間山を横に見ながらまぶしい新緑の中を歩いていく。

タリアセンに到着すると、旧・軽井沢郵便局だったミントグリーン色の洋館で入場料を支払い、それから睡鳩荘すいきゅうそうへ向かった。

塩沢湖畔に佇む睡鳩荘はヴォリーズの設計により建てられた趣のある建物だ。ここで今回の旅の目的でもある展覧会「モンゴメリ生誕150周年『赤毛のアンと軽井沢』〜春の軽井沢でアンの世界に浸る〜」が開催されているのである。

2階に上がると4つの部屋に分かれていた。グリーンゲイブルズのジオラマが展示されている部屋や再現されたアンの部屋などがあったが、特に村岡花子さんにまつわる展示が一番見応えがあったように思う。個人的には、花子さんと交流のあった片山廣子さんや石井桃子さんの直筆の手紙を興味深く拝見。その展示室で、村岡花子さんの孫の村岡美枝さん、恵理さん姉妹にお会いし言葉を交わせたのも嬉しかった。

展示を堪能したら、先ほどの旧郵便局の建物へ移動する。こちらで先ほどお会いした村岡花子さんのお孫さんでNHKの朝ドラ「花子とアン」の原作『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』の著者でもある村岡恵理さんのトークショーが行われるのだ。

トークショーは、雑誌「軽井沢ヴィネット」の編集長・広川美愛さんとの対談形式で進められ、軽井沢と村岡花子さんの関係性、睡鳩荘の展示の解説、モードと村岡花子さんの共通点と相違点などが語られた。
私は恵理さんがおっしゃったこの言葉に心からのシンパシーを覚えた。

「モードの本質はやはり『Anne of Green Gables』にあると思う。アンのエネルギーは5月の緑の瑞々しさや柔らかい春の光のようなもの。世の中が不安に包まれたときには、人々はモードが生み出した物語の中にその優しい眼差しをみとめ、希望を感じるのではないだろうか。」

つい先ほど新緑のきらめきの中を歩いてきたばかりで、この多幸感がまさに「赤毛のアン」を読んだ時にもたらされる感覚に似ていると心と体を通して実感できたのである。

③につづく