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暴走の可能性あり・ピロラ感染

 変異株覇権レース(1~5)は終わりましたが、前回例に倣って、2014/1/28識別データベースを表1としました。変異株エリスとその後の患者数経過を、患者数急増の行政ブロック関東地方の患者数経緯に変更し、国内変異株数上位順の推移の3図表をまとめて載せます。

       表1:定点観測下の一医療機関の平均患者数 

*赤数字は前週患者数より増えたか等しかったことを表します。
*20週目は2023/10/1~2023/10/8の定点観測下による平均患者数です。
*グラフ左端列は都道府県名、右端列は都道府県平均患者数。最下段行は週平均患者数、
*都道府県名は人口降順。赤は大都市圏、青は中都市圏、黒は小都市圏を表します。

    図1:関東地方の定点観測下の一医療機関の平均患者数

*左図は定点観測によるもの、右図はその補正後です。スケールが異なります。
*人口数辛い言えば当然かもしれませんが、東京都の感染者数増が顕著です。

         表2:国内変異株数の順位

*前週との違いは、33週~のBA.2.86.1とHK.3.2が入れ替わったことだけす。
*ピロラ感染JN.1型が国内変異株1位にならない限り、覇権に至らずと判断します。
*HK.3型変異株の、国内変異株順位トップの長期間維持に注目しています。

 変異株エリスの支配下に長かった東京都コロナ感染でしたが、2023年末、エリスに代わった変異株HN.3型が一時的ながら変異株数1位の座に就いたことがありました。都健安研センターによれば、HN.3型変異株は国内変異株数の中で長期間1位にあったので、東京都もいよいよその傘下に入ったのか思いましたが、NH.3型変異株は、2024年1月に東京都に侵入し変異株JN.1型ピロラにその1位の座を簡単に奪われました。そして同年1月28日の定点観測下の平均感染者数報告では、東京都感染者数の急激な上昇を見るに至ります(図1)。東京都の感染者急増は、変異株覇権レースがほぼ決着し、ピロラによる新たなコロナ感染が東京都から始まったことを告げるものでした。

 図1右の東京都の患者数は、エリス波ピークも越えんばかりの急峻な立ち上がりで、聊か暴走気味でもあるのが表題とした背景にあります。大都市圏の患者数変動には控えめな定点観測下(左図)でさえ、同じような波形をみせ、東京都をとりまく4県も同じような上昇傾向を示しますので、この補正図が一時的なものや誇張ではないことを十分推測させました。
 変異株ピロラが、全国の先端を切って東京都で始まったと判断しました。

 一方、厚労省による定点観測下の2024/1/28付の患者数報告は、西日本の小都市圏に患者数減の県が少なからず認めたことを示しています(表1、36週目の黒字県)。関東地方と正反対のこの現象は注目すべきと思われました。生憎と、図1左右グラフの右端に限局した変化ですから拡大の必要があり、表1同様に20週目から36週目の計17週経過で、これらの患者数変化をみることし、図2としました。ここで示された感染状況は今後も持続する可能性があり、暫くは図2で患者数経過を見ることになります。

 図2は、補正した東西の患者数をグラフ上段にし、更にその患者数を東西の行政ブロックごとに分けて下段左右に示しました。全て、定点観測以来の20週目から直近の2024/1/28に至る計17週の患者数推移を波形としてまとめたものです。

         図2:東西と行政ブロック別の患者数推移


*3グラフとも定点観測下の患者数を人口数差で補正したものです。
*波形を見易くするために、スケールはそれぞれで異なりますのでご注意ください。
*下段左右グラフの4ブロック平均波形が、上段の東日本、西日本の線グラフになります。
*色区分はグラフごとです。全てのグラフに共通したものではありません。

    補注:3グラフとも定点観測の患者数を人口数比で補正したもので 
      す。オリジナル波形を併記すべきですが、図1左の関東地方の補正前              の波形のように複雑な波形ですので、今回は省略させて頂きます。

 2024/1/11~2024/1/28で、東京都と西日本の患者数推移が逆転したことは、上段グラフの右端で東日本と西日本の感染者数がクロスすることで示されます。クロスした背景は、下段の各ブロックの患者数推移に明らかです。
何故、患者数が逆転したのでしょうか。

 同じ頃、国内変異株は、中国系NH.3型変異株と欧米系のJN.1型変異株の指導権争いが熾烈でした。2024/1/28、東京都を中心に患者数は急増しましたが、この急増は東京都の変異株筆頭の座に就いたばかりのJN.1型ピロラ波故と思われます。当然東京都のHN.3型変異株は後退を余儀なくされることになりますが、全国変異株順もHN.3型変異株はJN.1型変異株よって押し出されるように後退した可能性があり、この後退が西日本の感染者数減として表れた可能性が考えられます。関東地方でJN.1型ピロラ波が隆盛し、西日本でNH.3型変異株が後退することが、患者数増減のクロス現象を説明していると思われます。関東地方の患者数増と西日本の患者数減は、ピロラ全国制覇までの暫くの間、それぞれ互いに相反する独自の変化を示す可能性があります。
 
 広域の各行政ブロックが、一変異株で染まるとは考えられないものの、その地域の中心を担う変異株が、その地域の感染を彩るのは当然と思われます。関東地方と西日本の相反する変化にノータッチな東北北海道の感染状況が気になります。暫く経過をみて検討したいと思っています。

                  2024/2/5
                  精神科 木暮龍雄


 

 


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