見出し画像

コロナ感染・定点数化の意味(5)

 上乗せは、厚労省は認めたわけではありませんので推測の段階でしかありません。けれども、Bに上乗せがあったものとしてコロナ感染を振り返りますと、今まで不透明だった課題の幾つかが氷解する気がします。
 引用することが多いので、表1を再掲します。

     表1:A,B,Cの各定点数、平均患者数、定点患者数 

*赤線の定点数のプラスの上乗せ分は大阪府、兵庫県、福岡県で顕著です。       
*赤線の定点数のマイナスの上乗せ分は、愛知県、北海道、宮城県で顕著です。
   *プラスマイナスの上乗せは、表1の定点数から判断された可能性を推測します。
    *‘患者数’は、2024/2/17~20242/25。赤のB平均患者数は厚労省報告によります。  

感染者数が人口数比化することの意味

 表1は、厚労省による報告は、2024/2/18~2024/2/25 のB=平均患者数のみであることをお断りしておきます。
 東京都の医療機関419を、都道府県に応分するには、都道府県の人口数比もしくは患者数比を利用する以外に適当な方法が見当たりませんから、表1のAは人口数比のみを、Cは人口数比と患者数比をダブル補正し、Bは上乗せが推測される定点数で補正されたもので、東京都の医療機関417を応分して定点数を求めるにことになります。

 得られたA,B,C の各定点数は、表1の各定点数となり、一画面でグラフ化しますと図1となります。三者ともに、一つのレール上を沿うように並行します。上乗せが推測される黄色のB定点数波形でさえ、このレールから外れることはありません。当シリーズとしては、このレールが、感染者数の人口数比化を表すものと推測しています。

        図1:都道府県の人口とA,B,C 各定点数

*図は、表1の期間内のA,B.C 各定点数を表します。

 図2に、定点観測下のコロナ感染経過(左)と‘平均患者数’(右)を載せます。平均患者数は、前回シリーズで推測した上乗せを含んだ平均患者数を意味します。
 左図は、定点観測以来の平均患者数推移ですが、まるで変異株エリス波とピロラ波の経過を意味しているように見えます。この図からは、オミクロン波なるものは、総体として変異株に象徴される時代だったことを実感させます。ピロラ波は、エリス波と比較すると明らかな弱体化が覗え、それ故に内心ほっとする波形推移ですが、波形変化は衰退を窺うかなり劇的なもので、ウイルス自体の避けられない寿命を想像させます。

        図2:コロナ感染経過と平均患者数

*左図の変異株ピロラ感染力は、同エリスに比べ著しく低下している可能性を示しています。     *右図の都道府県平均患者数は、上乗せ(定数)を含みながらも一定していることを表します。

 右図は、都道府県の平均患者数比が一定していることを示し、この波形はほぼ定点観測が始まって以来、変異株種の違いも受け入れることなく、同波型を維持しているものです。もし定点観測下の患者数データベースをお持ちであれば、定点観測後の波形が落ち着いた9週目以後の任意の日の平均患者数をグラフ化し、図1右と比較して確かめられることをお勧めします。両者が全く同じ波形であることに納得されれば、患者数の人口数比化に頷くに違いないと思います。

 コロナ感染の現状を当シリーズで要約しますと、ウイルスは感染力を弱めつつ、患者数を減らしながらも人口数比化を維持していることになります。
 
 当シリーズとしては、もしかして厚労省は、平均患者数比が常に等しいのをご存じながら、敢えて触れないでいると憶測しています。何故なら、平均患者数比が維持される状況の理解は、患者数が人口数比化することを認めることになり、かつ定点の上乗せを明らかにすることになるからです。
 
 図3は、エリス波とピロラ波が変異株の洗礼を経て、一定の筈の感染内容に変化が生じたか否かを見たものです。

    図3:都市規模別平均患者数と東西日本の患者数

 左図は、定点観測開始から波形安定が得られた9週目の患者数辺りから常時見られる‘上から小中大順の都市規模別平均患者数’です。この順は、ピロラ波にもほぼ等しく続きます。
 変異株如何に関わらずにこの順位は認められ、且つオープンデータ時代とは真逆であることは、定点配分に問題があると何度も指摘する根拠となったグラフです。表1の平均患者数が、定点数と反比例することに関係した波形と推測されます。期間が限られた表1のB欄を見る限り反比例は明らかでありませんが、Bが定点数の加算平均を重ねれば、C、Aに限りなく近づくことで明らかになると判断しています。それは図1のA,B,C 各波が軌道から離れずに並行する波形をみても明らかと思われます。

 右図は東西日本の患者数ですが、この患者数も平均患者数による比較となります。患者数の評価(例えば大中小都市規模)を求めていませんので、そのまま使用することが可能ですが、オープンデータ時との患者数差の補正をしますと、赤の東日本の患者数は更に増大することになります。それでも、図は、エリス波の地勢的理由による双峰性を明らかにし、エリス波以降の波形は、人口数差故で勝る東日本優位を示しています。

 平均患者数が定点数と反比例していることが、表計算上問題を生じないかが懸念されます。

感染者数が人口数比化する意味の更なる検討を

 感染者数の人口数比化は、各都道府県人口を構成する全ての人が、コロナに罹患することを意味するものではありません。コロナウイルスが、全国くまなく浸潤し、個々人が感染する率は全ての人で等しくなり、結果として都道府県の人口数比化に至ったことを意味します。従って、集団免疫なる可能性を示唆することでもありません。このことは、患者数がゼロにならない限り、厚労省が毎週報告する患者数地図は、少ない患者数ながら連綿と続くことを意味します。 
 
 何故ウイルスの感染力が弱まったのか、何故感染者数が減ったのかは一元論的に説明できるものではありません。当シリーズとしては、生き物であるからにはウイルスにも寿命があり、それによる衰え、弱体化が最大要因と推測しています。
 感染者数減少に、ワクチンや抗ウイルス剤、感染防止対策等の効果を否定するものでは勿論ありません。mRNAワクチンが、感染の重篤化に抗することで世界中の何千万もの人命を救い、ノーベル賞に値する発見であったことは当然と思います。けれども、少ないながら頑として消退しない感染者数は、弱体化に抗するウイルスの生命力そのものと、当シリーズは推測しています。 
 
 ウイルスには、状況変化に抗して生きるに必要な様々な学習能力を持っていると当シリーズは推測しています。二価ワクチンがもたらした変異株の多さに驚きつつ、同時に二価ワクチンに対するウイルスの凄まじい反応に驚いたものでした。変異株に関する知識豊富なアメリカは、二価ワクチンの危険性を知り素早い対応で、一価ワクチン使用に切り換えています。ワクチン効果を重要視する感染症専門家は、ウイルスのそんな学習能力を免疫回避能力という表現を使って説明することになります。けれどもウイルスは、個々のワクチン対する免疫回避能力を生来持っていたわけではなく、新たなワクチンに出逢う度に学習して獲得する能力を持っていたと、当シリーズは推測しています。 
 
 免疫回避能力は、今のところウイルスからみれば延命効果を託す唯一の手段と思われます。人類にしてみれば危機的事態の持続を意味しますが、それでもウイルスは自らの寿命を受け入れねばならない時を迎えつつあると推測されます。
 オミクロン波が、デルタ波の運命に乗じて登場した経緯が、再び繰り返されるは御免被りたいものです。 
 
  以上で、コロナ感染・定点数化の意味(1)~(5)を終わります。
 
                      2024/4/16
                      精神科 木暮龍雄
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?