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コロナ感染・定点数化の意味(1)

 今日は、コロナ感染の定点数化とそれによって算定される平均患者数、定点患者数について述べたいと思います。パンデミック終了を感じる頃になって、何を今更と言われるのを覚悟で、定点数化についてまとめておかねばと思うからです。

 定点が何故必要になったかと言えば、人手と金のかかるオープンデータが終わり、より手軽な方法で感染状況を知る必要に迫られた為と思われます。具体的には、東京都にコロナ患者を診る419の定点医療機関を設定し、それに順じて各都道府県に定点医療機関を設け、得られた全患者数から感染現況を見届けるということになります。
 当シリーズもその趣旨に基本的に同意するものです。

 問題は、定点419の意味する処を、何を基準にして各都道府県に応用するかになります。当シリーズとしては、当然のことながら、オープンデータ時から分かっていた「感染者数が人口数比化する」に基づき、定点数の順位付け(人口数順)を望むことになります。現実は、即ち厚労省の定める定点数は、違います。

 先ずは、当シリーズが主張する「感染者数が人口数比化する」について述べ、それに基づく患者数を定点数化することの意味について述べたいと思います。
          図1:感染者数の人口数比化

注1、*1はオミクロン株波前期の大都市圏の、*2は東北北海道感染の北海道の感染者数を表し、注2:ピークは、各定点、定点平均患者数、定点患者数算定に反映されるものと推測します。

 図1は、オミクロン株以降の感染者数波型が、人口数波型に沿うように近似化する感染状況を示しています。感染者数の人口数比が極まるにつれ、図1左は、図1により近似化するものと推測されます。*1印の低い山状ピークは第7波、*2の小高い山は第8波のピークの名残を示しています。図1右は、人口数比を定点で割った人工的な定点数波型になりますが、あたかも*1、*2のピーク波形が消去されたかに見えます。これから得ようとする平均患者数波型、定点患者数波形にも artifact を含めた幾つかのピークが現れる可能性があり、比較検討には、ピークのない図右の波形が、その比較を容易にしてくれると思われました。
 今後も、右図波形は多用する可能性があり、「定点数グラフ」と命名しておきます。
 
 定点数グラフは、これから求めようとする平均患者数、定点患者数のベースになります。グラフの基になるデータ数値は、表1のA定点項目となります。
A定点を式化しますと =上位人口の定点数(医療機関数)× 同行の人口数差となります、東京都から鳥取県まで続きます。行列は、エクセルの定義に従います

      表1:A、B定点数に基づく平均患者数と定点患者数

*’患者数’は、2024/2/25の各都道府県ホームページから求めたものです。
*厚労省の報告は平均患者数のみで、B定点数は都道府県データベースによります
。 *右端のB定点患者数は、厚労省報告の平均患者数に定点数/5000を掛けたものです。
*A,B共に、定点数×平均患者数= ’患者数’ に一致することを確認しました。
*都道府県名、人口、人口数差、患者数順は、人口数の降順によるものです。
*人口数は年毎に変わりますが、基調は令和2年国勢調査(総務省)です。

 表1は、当シリーズよるものをA=青で、厚労省報告に基づくものをB=赤で色分けしました。
 表1の患者数、A平均患者数、A定点患者数について説明します。
 先ず、2024/2/19~2024/2/25の黒字の '患者数' から説明します。A平均によって算定されたA平均患者数、A定点患者数が適切であるか否かは、具体的な患者数をもって確かめることが必要なので、幾つかの週の ’患者数’ からデータが揃った週を選んだ結果です。厚労省の患者数報告から求めたものでなく、多くは全国の都道府県ホームページから求めたものです。
 
 平均患者数について説明します。
 A平均患者数は、式化しますと='患者数'/A定点数となります。同様に
 B平均患者数は、式化しますと='患者数'/B定点数となります。
 共に '患者数' を定点数で割ったもので、B定点患者数は、厚労省が患者数報告で用いる「一医療機関の平均患者数」と同義です。
 
 定点患者数について説明します。
 A定点患者数は、式化しますと='患者数'×(A定点数/5000)となり、A定点に基づいて換算された都道府県患者数を意味します。いわば、定点化作業の最終目標となります。5000は、定点医療機関数の総和です。
 B定点患者数は、式化しますと='患者数'×(B定点数/5000)となりB定点に基づいて換算された都道府県患者数を意味します。定点数化作業の最終目標であるのはA、B共に同じです。定点患者数については後に述べることになります。

 念のためお断りしておきますが、厚労省は定点患者数なるものは報告しておりません。何故なのか理由はわかりません。表1右端の定点患者数は、当シリーズが上記の式を用いて得た結果を載せたものです。
 平均定点の文字が入り交じり、名称も似ていますが、意味は全く異なりますのでご注意下さい。

 患者数不詳の都道府県があるのは、各週患者数は平均患者数をもって報告する義務がありますから、raw data としての患者数なるものは省略するのが一般的なのが背景にあると思われます。定点数が記載されておれば患者数は分かりますが、定点数も患者数も記載されず平均患者数だけが報告される場合が多いのが実状です。全て揃った患者数報告週は少なく、せめて定点数でもと利用したこの週間でも、3~4件の患者数不明の都道府県があり、やむを得ずデータベースから平均値を割り出す等で補正しました。
    正直なところ、患者数がデータとして全て管理されているのかを危惧します。
        図2:都道府県人口数とA定点数とB定点数

*A定点は人口数差によるものですから、人口数に等しくなるのは当然です。
*詳細は不明ですが、B定点は何らかの基準を用いて定点数を定めたものと推測。

 図2の A,B 両定点数は、かなりの相違があることを示しています。けれども、共に人口数ラインに沿っているのは確かで、厚労省も感染者数の人口数比化を認めたのかと思いたくもなります。そんなわけはないでしょうから、B定点数が、何を基準にしたのかいずれ分かりますので、今は、当シリーズとどちらが定点数として適正であるかの判断はしません。しかし、これだけの違いがありますと、平均患者数、定点患者数に当然影響を及ぼすのは明らかと思われます。
 
 以上で表1の説明は終わりますが、定点数の不明な都道府県が稀ならずあり、また週によって定点数が異なることがある等に関しては、それなりの背景を受け入れる必要があると思われます。
 
 次回は、コロナ感染定点数化の意味(2)となります。

                 2024/3/22
                 精神科 木暮龍雄


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