なぜ、僕の「タイタニック号」は沈んだのか
さっきまでの荒っぽい風はおさまり、海面の波は無に近い状態でどこまでも静かに沖までつづいていく。
ふるさとの実家は海に面した丘の上にあり、朝起きてカーテンを開けると、目の前に広がる濃い青がいつも優しくオハヨウの挨拶をくれた。
学校で辛いことがあった日の帰り道、ふと左の頬に温かい光が触れる。視線を上げると「今日も楽しかった?一緒に帰ろう。」と、大らかで広く深いオレンジ色が話を聞いてくれた。
僕にとってのもうひとりの母親が、人間の母のほかに居るとしたら、それはふるさとの凪いだ