『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もうひとつの世界』by ヤニス・バルファキス

原題は『ANOTHER NOW Dispatches from an Alternative Present』
邦題は、随分意訳したものだと思うが、まぁ雰囲気は出ている。

ヤニス・バルファキスのこの著書については、年末頃にダーリンが今読んでいるが面白いというので図書館に予約した。ただ、注目されているのか予約が集中しているようで、先に『黒い匣』を読んだらヤニス・バルファキスにすっかりハマってしまった。


その彼が書いたのは、今度は近未来の小説。
「私」の視点から始まる物語は、一人の女性アイリスの葬儀のシーンから始まる。登場人物は、他にコスタ、イヴァ、イヴァの息子トーマス、そしてパラレルワールドのもう一人の彼ら、いわば分身たち。

Amazonでの紹介文はこんな感じ。

斎藤幸平氏、絶賛!
「株式市場をぶっ壊せ。21世紀の革命は、いま始まったばかりだ」
「公平で正しい民主主義」が実現した2025年にいるもう一人の自分と遭遇した。分岐点は2008年、そうリーマンショックがあった年だ。2011年に「ウォール街を占拠せよ」と叫んだ、強欲な資本家と政治家に対する民衆の抗議活動はほどなく終わったが、「もう一つの世界」では別の発展をたどることになった。資本主義消滅後のパラレルワールドは、はたして新たなユートピアなのか、それとも?
『父が娘に語る、美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話』著者による衝撃のストーリー!

資本主義が滅びた「もう一つの世界」では……。
→銀行がなくなる
残るのは中央銀行1行だけ
→株式市場がなくなる
社員は1人1株、議決権1票
→独占巨大資本がなくなる
GAFA消滅
→格差がなくなる
中央銀行が国民全員に定額を給付
→上司がいなくなる
好きな相手とチームをつくり基本給は全員同額

この紹介文で、内容をうまく表しているとは思わないが、それは仕方ない。どんな物語なのか紹介するのがちょっと難しいのだ。
ギリシャの春をくぐり抜けたヤニス・バルファキスだからこその視点であり、SF的な小説でもある。
最初に読み始めたときは??と思っていたことも、パラレルワールドへ渡るかどうかの彼らの選択や、思いもかけないラストはとても面白かった。
経済的な小説というよりは、それぞれの人生観を問うもので、難しいものではなく、純粋に物語を楽しめた。

財務大臣を辞任後も国会議員を続けているバルファキス。
もうひとつの世界は、ある意味で彼の理想郷なんだろうなぁ。
おそらく、今も彼はその実現に向けて邁進し続けている。

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