自分の抑圧している欲求に気づき、統合させることで器の大きい人間になれる

前々回、前回とシャドーについてお伝えしています。

「シャドー」とは何か

シャドーとはユング心理学の概念です。

ユングという心理学者の名前は聞いたことがある方もいると思います。

スイスの精神科医・心理学者のカール・グスタフ・ユング博士は、今でも私たちが聴いたことのある、様々な心理学の知見を見出した人です。

例えば

• 自分自身でも意識できない部分が大半を占めているという「無意識」の概念

• 「外向的な人間」「内向的な人間」に分類するタイプ論

• 劣等感を通り越して、さらなる複雑ないろんな感情が入り混じることで生じる感情であるコンプレックス

などが代表例です。

そして、今回ご紹介している「シャドー」もユングが提唱した概念です。

シャドーとは、無意識下に押し込まれた自分にとって好ましくないと思える感情や欲求のことです。

もともと自分が持っている要素なのですが、あることをきっかけに「こんな感情や欲求は持ってはいけない」と判断し、自分から切り離した要素です。

他人から見てその要素が悪い要素に見えなかったとしても、あなたを取り巻く環境下において、その要素を持っていることで、嫌な経験をしたり、生きにくかったりした経験があれば、あなたはその要素をひどく嫌い、自分にその要素を持つことをよしとはせずに、強い禁止や抑圧をして自分にはないものとして自分から切り離して扱っていきます。

シャドーは自分が嫌っている部分ですから、自分の中にあるなんて感じたく
もありませんし、認めたくもありません。

そうすると、なおさら自分の中だけでは認識されることができないのです。

シャドーはどのように認識されるのか

シャドーは、そもそも自分の中にはないものとして扱われていますから、抑
圧したものとして自覚するのは難しいかもしれません。

シャドウは強い抑圧や禁止をして、意識の奥底（無意識）の領域に封印され
ているので、自分という個人の領域では認識することができません。

では、どのように認識されるかというと、嫌いな人や苦手な人、不快を感じる人やなんかイラっとする人として、あなたの世界にシャドーが登場して、あなたに認識されることになります。

無意識下に封印されたものであっても、あなたの心の領域の反映としてあなたの目に見える世界に映し出されていきます。

僕の妻の例

妻は幼い頃は天真爛漫な性格でしたが、不仲の両親の中で、家族が崩壊しないようにするために、自分がちゃんとしなければという思いを強くしていきました。

勝手気ままにすることなく、親の理不尽だと思うような要求に対しても従ってきました。

そんな妻は、僕の長男の特定の言動や振る舞いにとてもイラつく場面があります。

例えば以下のような言動です

• 夜更かしして翌日昼間で寝る

• 学校の課題をギリギリまで提出しない

• 親のお願い事であっても、平気で断る

妻は、子どもの意向を尊重するとは口では言っているものの、上記のような言動は相当ストレスらしく、どうにもこうにもガマンがならず、イライラや怒りを抑えるのが相当大変そうです。

妻は、「自由奔放に過ごす」という欲求を、シャドーとして抑圧してきました。

その抑圧されたシャドーを、息子の言動に見出すことによって、妻は過剰に反応するのです。

もし、家族などに対して、なぜだか無性にいらだつ、ということがあった際には、自分の中に知らず知らずのうちに抑圧している欲求や感情があるかもしれないと認識できるのです。

シャドーの統合

では、どうしたら、シャドーに煩わされる現状から解放されるのでしょうか。

まずは、自分のシャドーとなっている要素が「ある」ということを認めることが必要です。

これは言葉にして書くのは簡単ですが、実行するとなれば、なかなか難しい
です。

なぜなら、自分から切り離してしまわないといけなかったくらい嫌ったもの
ですから。

それが自分の中にあると思おうとしただけで、初めは抵抗や嫌悪を強く感じ
ることがあります。

自分の中にその存在の「ある」を認めることが出来た分だけ、シャドウの存
在が気にならなくなります。

その上で、押さえてきた欲求や感情をできるところから、上手に満たすということを行っていくといいです。

例えば、僕の妻であれば、「自由奔放に過ごす」という欲求を満たすために、多少のいい加減さや無計画さを日常の中に取り入れていくといいのです。

そうすると、状況によって、しっかりやるところと、いい加減でもいいところを使い分けられたり、相手にのいい加減さや無計画さを許容できたりすることで、器の大きい人間と成熟していけるようになるのです。

ユング博士が、「シャドーの中に黄金がある」と言っていますが、人間が深みのある人間になる上で、必要なものがシャドーの中にあることを示唆しているのです。

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