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光害関連ニュースまとめ 2024年4月

2023年4月の光害関連ニュースです。沖縄県国頭村と群馬県高山村での星空保護区を目指す動き、カナダの星空保護区(=ダークスカイ保護区)での星空以外の価値の話題、衛星コンステレーションと天文学の関係についてのインタビュー2件、そして月面天文台。インタビューはいずれも私にも取材いただいたものです。最近はこのnoteを読んでから取材にお越しいただけることも増えてきました。このnote、目的の半分は自分用の情報まとめ、もう半分は光害と天文観測環境保護に関する情報ポータルとなることを目指して始めましたので、当初のねらいを達成しつつあるかなと思います。光害をめぐる状況は思っていたよりダイナミックに変わっていくので、今後も情報をタイムリーにまとめていきたいと思っています。引き続き、よろしくお願いします。


地上の光害に関するニュース

暗い夜空を守る 沖縄・国頭で星空条例を施行 村内4カ所の公園を「星空公園」指定

2024年4月2日、沖縄タイムスに掲載された記事。沖縄本島北端の国頭村で星空条例が施行されたというニュースです。指定自体は3月に行われていますので、先月のニュースまとめでも取り上げました。指定された公園では「光害の防止に努めなければならない」とされています。アストロツーリズムの拠点とすることを目指しているとのことですので、住民の皆さんとも意識を合わせつつ進んでほしいですね。

「星空保護区」認定目指す 群馬・高山村が条例見直しへ 防犯灯800基を基準に沿って変更、観光客増に期待

2024年4月4日に上毛新聞に掲載された記事。群馬県立ぐんま天文台のある高山村も星空保護区を目指すということです。ぐんま天文台のオープンに合わせて高山村には既に光環境条例が制定されていて、これを改正して星空保護区認定に必要な条件を整えることを目指すようです。私にとってぐんま天文台は、大学の天文サークル時代に65cm望遠鏡のライセンスを取って何度も行った場所でもあります。観光客を呼ぶには宿泊施設の整備なども併せて必要ですが、村を挙げて進めていける雰囲気が必要になるでしょうね。

星空を台無しにする原因は? カナディアンロッキーのダークスカイ・ツーリズム体験

Frau the Earthに2024年4月22日に掲載された記事。作家・山口由美さんのカナダでダークスカイ・ツーリズムの体験が前後編でまとめられています。星空保護区に指定されているジャスパー国立公園でのツアーで、ライトを消して自然の中をハイキングしたことで気づかされた暗闇の意味について書かれています。

日本では一般的に星空保護区と呼ばれるが、夜の暗闇を守る目的は、星空の観察に限らない。多くの植物や野生動物、昆虫類は暗闇の中で捕食や繁殖、移動を行うため、暗い夜空を守ることは、生態系全体を守ることにもつながるのだ。ダークスカイ保護区と称する理由である。

星空を台無しにする原因は? カナディアンロッキーのダークスカイ・ツーリズム体験

これは重要なポイントですね。「星空保護区」という言葉はキャッチーですが、暗闇を守ることは星空を守ることにとどまらないたくさんの意義を持っています。日本で星空保護区に指定された地域でも、今後それを目指す地域でも、星空と観光だけではない意義がしっかり認識されるべきでしょう。

光害を減らして、渡り鳥を守ろう。北米「街の消灯」が、マルチスピーシーズの実践に

ideas for goodというウェブサイトに2024年4月24日に掲載された記事。先月も取り上げた、ニューヨーク・9.11テロの追悼イベントで空に放たれる光と渡り鳥の関係に関する内容です。星空ではなく野生動物に対する人工光の影響については科学的な研究と論文も多く出ていますので、天文関係者だけでなく幅広いチームを作って社会に働きかけていくことも重要ですね。

天文学と衛星コンステレーションに関するニュース

人工衛星の「光害」は、社会に何をもたらすか

2024年4月22日、NEC系シンクタンクの国際社会経済研究所のnoteに掲載された記事。手前味噌ながら私のインタビュー記事です。NECさんと言えば小惑星探査機「はやぶさ」をはじめ多くの宇宙機を手掛ける、日本を代表する衛星メーカーのひとつ。そんな企業だからこそ、衛星がもたらす未来について考えていただけることにはより大きな意義があると思います。
記事にもある通り、「少しでも多くの人に、宇宙開発並びに光害が自分の生活に関わってくることを意識してもらうには、どういうことが社会に必要だと思いますか」という質問を受けました。私自身は、全員が意識する必要があるとは思っていないのです。世の中、対応すべき問題はいろいろありますので。とはいえ、一般的な環境問題と同じくなかなか後戻りが難しい問題でもあるので、関係者は今こそこの問題を考える必要があります。現時点で日本では何百、何千機もの大規模衛星コンステレーションの計画はないですが、国ごとの対応では問題は解決できません。国際社会の中でこの問題に対して日本はどういう立場をとるのか。国際電気通信連合の世界無線通信会議で衛星コンステレーションと天文学の関係が議題になっていますので、これを考えることは私にとっての宿題でもあります。

星空切り裂く光の筋、人工衛星急増で天文学に支障 共存に向けて議論

2024年4月26日に朝日新聞に掲載された記事。こちらも手前味噌ながら私のインタビューが含まれています。「夜空に浮かぶものが星ではなく、人工衛星というイメージが当たり前になりかねない」とコメントさせていただきました。現在でも、暗い場所で夜空を見上げると結構な数の人工衛星が動いていることに気づきます。これが10倍100倍になると、やっぱり夜空から受ける印象は変わると思うのです。もちろん、夜空の明るい都会ではあまり気にならないでしょうが。国際社会経済研究所のnoteのインタビューでもお答えしましたが、「夜空のイメージ」が変わりかねないという危機感は表明しておく必要があると思ったのです。

電波天文学の観測環境に関するニュース

「月面ケータイ」なるか、Nokiaが24年内に世界初4G/LTE実証へ

2024年4月12日に日経クロステックに掲載された記事。月の南極への着陸を目指す米国の民間月着陸船IM-2にノキアが移動通信ネットワーク実証のための機器を載せるとのこと。この計画は以前から報じられてきましたが、1号機IM-1の着陸を経て、2号機の記事が改めて出てきたというところでしょうか。1.7 GHz/1.8 GHzを使う4G/LTEシステムということで、要は地上の携帯電話システムを月面でテストするわけですね。着陸機とローバーを4G/LTEシステムでつなぐそうです。
月の南極は、漫画「宇宙兄弟」でも描かれた通り月面電波天文台の建設の有力候補地です。私のnote記事「「地球上で天文観測できないなら宇宙に行けばいいじゃない」:月面天文台の話」でもご紹介しましたが、月面電波天文台の大敵は人工電波です。国際天文学連合(IAU)も、1994年総会の決議B15
において、『月の裏側(Shielded Zone of the Moon)での無線通信は2000-3000 MHzに限る』ことを決議しています。これに法的な拘束力はないですが、今回のノキアの実験は1.7/1.8 GHzですので、この決議に反しています。実験は2週間のみということで、実質的には電波天文を邪魔することは無いのでしょうが、長く続くミッションが今後計画される際には電波天文側との調整をぜひ事前にやってほしいものです。

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