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連載 『boa viagem』 by 新多正典

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ライフワークとして通ったブラジルに魅了され、力強くも複雑なルーツを持つ伝統文化やそこに暮らす人たちを切り取り続けてきた京都在住の写真家・新多正典。COVID-19という未曾有の事… もっと読む
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記事一覧

boa viagem / ex. 03『ブラジル特報に寄稿しました』by 写真家・新多正典

『ブラジル特報』という隔月発行の機関誌の5月号に寄稿しました。 内容の骨子はこのnoteで書いたことをベースに、結論を新たに書き加える形で締めくくりました。 日本人有志の愛好家が大使館や外交ルートを巻き込んでひとつの国の現在進行の情報を更新していく、このような媒体が存在するのはブラジルくらいかなと思います(アメリカ特報とか韓国特報ってないですよね…?)。 それくらい色んな意味で対極にある日本にとって、この国に魅了されるパワーが一体何なのか、答えを探し続けているんだと思い

boa viagem / ex. 02『この連載をZINE にまとめました』by 写真家・新多正典

この連載をZINE にまとめました。 リソグラフ印刷の単色刷り、中綴じホチキス留めの簡易なZINEです。 本当に手作りのザ・ ZINE という感じ。 今はリソグラフ印刷でZINE をつくることがライフワークになっていますが、いつもは写真の精度にこだわっているので、こんなにラフに印刷したのは初めて(掲載している写真はすべてiPhoneで撮った写メなので粗い印刷でOK)。 出力が一色ずつという印刷機の特性を活かしテキストを何色で刷ろうかと考えるのも楽しく、「つくる」という行為

boa viagem / ex. 01 『本当に街は誰のもの?』 by 写真家・新多正典

※ ブラジル帰国後の関連事項を不定期で書いていきます。 ブラジルの、主にグラフィティを記録したドキュメンタリー映画『街は誰のもの?』(監督:阿部航太)の上映会∔トークショーに参加した。 実はこの映画は完成まもない頃に blackbird books という大阪の書店で上映会があり観賞済みだった。 それがもう5年前。 その後、スケートなどのストリートカルチャーを更に加える形でボリュームアップされた増強版がミニシアターを中心に全国的に上映されだした。 今回僕が観たのは増

boa viagem #019 最終回 『帰国』by 写真家・新多正典

まもなくJALに乗り込もうとするとき、 「オイ、これから一緒にオリンダ行こう!」とメールが来て声を出して笑った。 物理的には丸2日の距離だけど、全然遠くにいる気がしない。 昨年は、「会場にワクチンを常備してるから」なんてメールを受けたりしたけど、コロナのことなんて日本以上に吹っ飛んでいた。 日本人もすぐ忘れるけど、この人たちも凄い。 4年のブランクで受け入れてもらえるだろうか、なんて心配したけど、4年空いた気がしなかった。 途中パークの加藤さんにインタビューされる形

boa viagem #018 『海外に行くこと』by 写真家・新多正典

アメリカ・LA 着。 サンパウロ発がスコールのため1時間半遅延。 こっちではスコールが天災なんだなと気づかされる2週間になった。 入国審査待ちの長い行列から日本語がたくさん聞こえてくる。 ブラジルでは日本人にひとりも出会わなかったのに。 行きのニューヨークの物価高がトラウマで空港の外に出ようという気にはならなかった。 レシーフェの市中で買う同量の水が10倍以上の価格だ。 物価の安いスラムに好んで住んていたのも含めて、とにかく安上がりを求めていると誤解されるかもしれない

boa viagem #017 『振り返り』by 写真家・新多正典

帰国の移動中。 レシーフェからサンパウロへ。 レシーフェもサンパウロも空港が随分ときれいに明るくなっていた。 これまでサンパウロでは必ず荷物のピッキングと国際線のチケット手続きをしていたのにそれがなくてめちゃくちゃスムーズ。 この国でもちゃんと合理化が進んでいる。 移動中これといった出来事もないので、今回の旅の一番の珍事を振り返る。 ——- コンペがまさに始まる直前、ポルトヒコ全員がスタートゲートに隊列を組んで並び出したとき、ジェシーにグッと腕を掴まれ、脇道に連れて行

boa viagem #016 『最後の日』by 写真家・新多正典

飛行機に乗る前日。 活動の最終日。 晴れた日が多いから(肌感覚としては9割晴れ)、モノクロで風景をたくさん撮ろうと意気込んで来たものの、結果全く撮れなかった。 カメラに装填した36枚撮り1本だけでも使い切りたくて、その視点だけで昼間出掛けた。 天気が良くてガチガチのコントラストを生む街なのに、モノクロではないんだなあと感じた。 ——- この日は、先日オリンダでやった教会までの行進のレシーフェ版。 出番は2回あって、昼間に未成年部隊。 深夜に大人たち。 ボスにバスの

boa viagem #015 『コンペ当日』by 写真家・新多正典

ヒーヤンの家で夜遅くまで彼らの大好きな日本アニメについて爆笑しながら語らった。 だけど噛み合わないのは、僕の好きなAKIRAや劇場版エヴァンゲリヲンを彼らは見たことないし、もちろん宮崎駿の最新作も知らない。 そもそも配信などで輸入されるにはポルトガル語へ翻訳されていないといけなくて、彼らが知ってるのはどうもニッチなアニメで、日本で大ヒットしたものがブラジルにスムーズに進出しているわけではないようだ。 布団を用意してもらって寝ようにも眠れない…。 恐らくホテルビュッフェの食べ

boa viagem #014 『再びポルト・ジ・ガリーニャス』by 写真家・新多正典

再びポルト・ジ・ガリーニャス。 スラムの喧騒を1日だけでも抜けたくてヒーヤンにお願いして再訪させてもらった。 ちょうどレシーフェのカーニバルもクライマックスを迎え、ガロ(巨大な鶏)を見に行くために皆浮かれた格好で出かけて行った。 衣装作りに明け暮れるスタッフもこの日は一旦手を止めて中心地へ消えた。 僕は喧騒にちょうど背中を向けてUber でガリーニャスに向かった。 この国も高速道路という仕組みはあるらしく、運転手から料金をせがまれた。 前回は払っていないから、あのときは

boa viagem #013 『子は大人を見て育つ』by 写真家・新多正典

旅も終盤。 帰りの飛行機のアナウンスが来た。 まだまだやり切ってない感覚。 もっと時間がほしい。 先日無駄な1日を過ごしたと、憤りの気持ちを抱いたのも焦燥感からきたのかもしれない。 でもたくさんの無駄を経ないことには見たいものに辿り着けないのがこの国の真理だと思う。 コスパだのタイパなどに支配されている日本人にとってはジレンマだ。 ——- 昨日は、イレギュラーな予定からスタート。 ポルトヒコでは、バッキミリンという10代以下の子どものみで編成した部隊がある。 彼らの巡

boa viagem #012 『カーニバル期間へ』by 写真家・新多正典

昨日がトゥマラッカ本番。 ここからカーニバル期間に突入。 より一層深夜までの活動の日々が増え、就寝が2時や3時になるのが当たり前になっていく。 日本に居れば体力が持つだろうかと不安になるものの、集中しているのか全然心配がない。 本当に身も心もブラジル式にカスタマイズされだした。 行く前はきっと早く帰りたいと思うだろうと予想してたけど、信じられないくらい今は帰りたいと思わない。 心が麻痺してるのか、別人の別の人生を生きてる意識なのか。 ——- トゥマラッカは、複数のマ

boa viagem #011 『無駄な1日。これもブラジル』by 写真家・新多正典

正確なカーニバル期間にはまだ突入していないけど、この国は明確なスタートもゴールも示されていないのが特徴だと強く感じる。 フェイドインし、フェイドアウトしていく。 昨日は、「トゥマラッカ」という大きなイベント前日のリハーサルが設定され、大所帯で現場に向かった。 一体何時にスタートするのか示されないまま15時にバス出発の招集がかかるも、バス自体が動き出したのは16時半。 バスの運転手に正確な降車場所が共有されておらず、同じところをグルグル回り、もちろんカーニバル会場のど真ん

boa viagem #010 『生き方を伝える教育現場』by 写真家・新多正典

昨日向かったのはポルト・ジ・ガリーニャス。 オリンダへは渋滞込みで1時間ほどの距離だけど、ここへはまっすぐなハイウェイのような車道を飛ばしても1時間半はかかるので距離が全然違う。 僕が住むピナも海が近いけど、ガリーニャスはビーチの質が全然違う。 外国人観光客や富裕層がこぞって訪れるような本当に整った観光地。 六年前に一度訪れ、その景観の美しさは頭に残っていた。 この美しい観光地にもマラカトゥのグループがあり、リーダーのヒーヤンを訪ねた。 ここはポルトヒコやレオンコロア

boa viagem #009 『再びオリンダ』by 写真家・新多正典

再びオリンダ。 ピナが海の街である一方、ここは丘陵地帯。 そういう変化だけでも新鮮に映る。 ポルトヒコの予定のない日。 アティーラからレオンコロアードがオリンダで演奏するから来てよと誘われ向かった。 16時に本部に到着。 以前見た通り穏やかな雰囲気で準備が進んだ。 会場に向かうバスが到着し、楽器や衣装とともに水や弁当も運ばれる。 大人がみんなで遠足に向かうような感じ。 マラカトゥのチームにはこういった演奏以外の飲食に対するフォローが行き届いている。 本部にはちゃんとキッ